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(幕間) 不死の王 〇五
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「終わりました」
わたくしの足元には見事に気絶した四人の冒険者が倒れている……もちろん殺しはしていない、当たり前だけど冒険者を殺してもわたくしのメリットが無さすぎるからだ。
彼らのペンダントは銀級か……この世界の冒険者組合が認定している階級では上から二番目だったかな? 年齢はまだ若い……二〇代後半から三〇代前半といったところか。
わたくしが彼らの武器や、顔を確認していると僧侶風の女性がこちらに気がついたのか苦しげな表情のまま口をひらく。
「……こ、こんな小さな子を……操るなんて……非道な」
「……人の住処に入ってきておいてそれはないのではないか?」
わたくしが話しかけるよりも先に、ずい……とオズボーン王がその女僧侶へと顔を近づけるが、あまりの迫力なのか彼自身が纏う死の気配に恐怖心が煽られるのか、女僧侶はひいっ! と悲鳴をあげる。
わたくしには効果がないのかそもそも効果が低いのかもだけど、ユルや他の人の反応を見るにどうやらオズボーン王は存在しているだけでも生命を持つ者に対して強烈な恐怖心を掻き立てる何かがあるのだろう。
その声で意識が戻ったのか戦士風の男性が目を開けると、震える手を必死に伸ばしてわたくしとオズボーン王へと憎しみに満ちた目を向けてくる。
「やめろ……ミルアに手を出すな……!」
「リオン……ッ! 逃げて……!」
「ああ……君をおいて逃げられるか……ッ!」
「そんな貴方だけでも……!」
そんな二人の関係性をはっきりと映し出す会話を聞きながら、オズボーン王もわたくしもどうすっかなーという感じでそっぽを向いている。
どうやら他の二人は仕事仲間という感じだけど、この戦士風と僧侶風の二人は恋人同士なんだろうな……でもまだ関係は浅いのか距離感はあるっぽいけど。
正直めんどくせえな、こいつら……この状況下で頬を染めて二人の世界に入っているんじゃねえよ、とは思うけど……さてどうするんだろう? とわたくしは隣に立っているオズボーン王の顔を見上げるが、彼は白骨化した骸骨の顔なので表情が正直よくわからない。
「……うーん……二人で盛り上がるのはまあ良いのだが……お前らは何のためにここへきた?」
「……ここがお前の宝物庫だということを聞いている……何か太古の宝などがあれば……」
「宝ねえ……おい、逃げ出そうとするな」
こそこそと動いていた斥候風の男をめざとく見つけたオズボーン王は音もなく移動して背中をどかっと踏みつける。
グエッ、とカエルが潰れたような声をあげて逃げ出そうとした斥候風の男の動きが止まるのを見て、戦士風の先ほどまで僧侶風の女性といい雰囲気だった彼が立ち上がる。
おうおう、めんどくさい雰囲気を醸し出していたのはお前だろうが、と思いつつわたくしはオズボーン王を守るような位置へと移動する。
あれ? いつの間にわたくし彼の護衛みたいなポジションになっているんだ? と思いつつも武器を構え直す戦士風のリオンとか呼ばれてた男に対峙する。
「……くそっ……お前みたいな子供すら操るなんて……なんてひどいやつなんだ」
「……墓荒らしよりはマシな気が……」
「朕もそう思うぞ……墓荒らしなんて碌なもんじゃない、でまあもうすでにこいつに負けているお前らが勝てる保証などないのだ、まずはお前らの境遇を話せ」
「……何?」
「朕を納得させるだけの境遇を話してみよ、それによっては慈悲を示しても良い」
オズボーン王はカタカタと揺れながら彼らへと治癒魔法をかけてやる……さすが不死の王だけあってあらゆる魔法を自在に操る能力を持っているのだろう。
神聖ではないが強力な魔力が彼らを包み込むと、手加減はしたけどある程度容赦なく打ち据えたわたくしの付けた打撲跡が瞬時に修復されていく。
皇帝とか王とか名乗っているが、本質的には高位司祭とかそういう存在に近いな……いやあ、こんな上玉早く殴りてえ。
「……ど、どうして……回復を」
「お前らの目は盗賊のそれではない、なら目的や理由があると考えた、それだけだ」
確かにな……盗賊とか悪人はもっとすえた目をしているものだ、どうしようもないクズとか殺人者はこんなまっすぐな目はしていないだろう。
冒険者稼業をするものが全てそうではないとは思うけども、少なくとも銀級まで昇格したパーティがつまらない墓荒らしなどを喜んでするわけでもないだろう。
わたくし達が黙って彼らを見ていると、敵意がないと判断したのか彼らは一度オズボーン王へと頭を下げると、姿勢を正してから話し始める。
「……実は……」
彼らはなぜこの宝物庫へと侵入したのかをポツポツと語り出す……彼らがベテラン冒険者パーティ「青の隻狼」であること、活動期間が長くそろそろ引退を考えていること。
引退前のひと稼ぎということで依頼を受けたが貴族に騙されて任務を破棄する羽目になったこと、そのために返しきれない借金を背負ってしまったこと、それらは全て女僧侶であるミルアを守るためだということなど。
ミルアと呼ばれている女性はスタイルもいいし、クズ貴族に狙われやすそうな綺麗な顔をしているもんな……そこでわたくしは彼女の顔からずーっと下へと視線を動かして……うん、すげーなと思った。
「……だから宝が欲しくて……」
「……全く……御伽話を信じてここへきたということか、迷惑だな」
「……だがあんたがいた、オズボーン王……不死の王がいるということはやはりここは伝説の……」
「ないない、ここは書庫に近い……出鱈目な伝説のおかげで朕も迷惑しているのだ」
「そ、そんな……」
「青の隻狼」はその事実にガックリと肩を落とす……そりゃそうだ、宝物庫って話が流布しているんだしな。
しかし……問題はそこではない、わたくしはそのクズ貴族の容姿に関する話を聞いていて一人だけ該当するものがいることに気がついた。
ディマジオ・ダーケイン男爵……商会上がりのあまり評判良くない貴族で、金で地位を買ったと言われている男だ。
裏社会の連中との繋がりも噂されているんだよな。
イングウェイ王国の歴史も一〇〇〇年、清廉潔白な人物もいるけどどうやってもクズにしか思えない人間が権力をカサに人を虐げることもあるが……さてどうするか。
残念ながらダーケイン男爵はインテリペリ辺境伯の寄子ではないんだよな……こちらも権力を使って、というのはなかなかに難しい立場だ。
わたくしの様子を見ていたオズボーン王が急にカタカタと笑うような様子を見せると、そっと肩に手を乗せた。
「お主に似た人物を遠い過去に見たことがある、見た目は似ていない……だが魂は同じのようにも思えるな、心のままに動くといい……今のお主はオズボーン王の尖兵にしか見えぬでな」
「ひいいっ! ば、化け物……!」
ディマジオ・ダーケイン男爵は目の前に立つ小さな少女にしか見えない仮面を被った怪物と、ドス黒毛皮と彼を睨みつける赤い瞳の魔獣を見て腰をぬかす……。
「青の隻狼」という冒険者に偽の依頼と濡れ衣を着せて貶め、あのミルア・シンデレラを手にいれる寸前だったのに。
仮面少女の手には計画を実行するための契約書……冒険者組合の幹部と交わした書状が握られている。
仮面の少女はグルルと唸る魔獣の頭をそっと撫でると、男爵の目を射抜くような鋭い瞳で見つめるとこの世のものとは思えないほど恐怖を掻き立てられるまるで地獄の底から響くような声で話し始める。
「お前のおかげで迷惑をしている……オズボーン王はそう仰っている」
「う、嘘だオズボーン王など伝説の中の……!」
「ならあの冒険者どもが嘘でもついていると? バカにするなよ……これはお前のしでかした顛末だ」
少女が何かをゴソゴソと取り出すと、男爵の前へとゴトゴトッ! と重い音を立てて人の首が転がされる……それは「青の隻狼」のメンバー……あの四人は愚かにもオズボーン王の宝物庫へと立ち入ったということなのだろうか?
男爵は口をパクパクさせながら、一人の女性の首に気がつく……ミルア・シンデレラ、男爵が手籠にしたいと思い描いていた美しい女性の命なき瞳が彼を見ている。
だが、その口がゆっくりと開くと……彼に向かって話しかけ始めた。
「ダーケイン男爵……私たちに罪をなすりつけて……許さない……許さない!」
「ヒイイッ! わ、わしは悪くない! お前がわしのものにならないから悪いのだ……!」
「お分かりいただけたか? この書状はオズボーン王の名の下にもらっていく……首を洗って待っているのだな、裁きを……そしてお前の罪を白日の元に晒す日を」
少女はゆっくりと魔獣と共に暗闇の中へと姿を消していく……男爵は転がっていた首を抱えながら、悲鳴とも慟哭ともつかない低い呻き声を上げながら、涙と鼻水を垂らしながら震えている。
あの少女が持っていった書状はそれまで彼が如何にして爵位を得るに至ったのか、そこまでに培った裏社会との取引なども多く含まれていた。
全てが終わる……全部終わってしまう、それもこれも全てあの女を手に入れようとした時から、黙って体を許せば済む話だったのに、冒険者達が反抗したから。
男爵は止まらない涙を拭うこともせずに、首を抱えて泣き喚く……彼は気がついていなかった。
彼が抱えている首は誰のものかわからないほど古く、しわくちゃに乾燥したミルア・シンデレラとは似ても似つかない女性の首だということに。
「わしは悪くない……悪いのはあいつらだ……わしは悪くないぞ……」
——ディマジオ・ダーケイン男爵の悪行が世に晒されたのはそれから数日後……王都を中心として発行される新聞にその所業が暴露されたことで明るみとなった。
ダーケイン男爵を庇う貴族などはほとんど存在せず、彼と懇意であったとされる裏社会の組織についても摘発が行われ壊滅状態となった。
ダーケイン男爵家は取り潰され関係者全員が処罰を受け、ディマジオ・ダーケインは断頭台へと上がることになった……処刑の時にまで、彼が大事そうに抱えていた謎の首は処刑後に彼の墓へと一緒に入れられ、それ以上の追求はなかったとされる。
銀級冒険者パーティ「青の隻狼」は事件の半年後引退し、それぞれが故郷へと戻っていったとされているが……リオン・ラッシュとミルア・ラッシュ夫人はインテリペリ辺境伯領へと移り住み、幸せな家庭を築いている……らしい。
わたくしの足元には見事に気絶した四人の冒険者が倒れている……もちろん殺しはしていない、当たり前だけど冒険者を殺してもわたくしのメリットが無さすぎるからだ。
彼らのペンダントは銀級か……この世界の冒険者組合が認定している階級では上から二番目だったかな? 年齢はまだ若い……二〇代後半から三〇代前半といったところか。
わたくしが彼らの武器や、顔を確認していると僧侶風の女性がこちらに気がついたのか苦しげな表情のまま口をひらく。
「……こ、こんな小さな子を……操るなんて……非道な」
「……人の住処に入ってきておいてそれはないのではないか?」
わたくしが話しかけるよりも先に、ずい……とオズボーン王がその女僧侶へと顔を近づけるが、あまりの迫力なのか彼自身が纏う死の気配に恐怖心が煽られるのか、女僧侶はひいっ! と悲鳴をあげる。
わたくしには効果がないのかそもそも効果が低いのかもだけど、ユルや他の人の反応を見るにどうやらオズボーン王は存在しているだけでも生命を持つ者に対して強烈な恐怖心を掻き立てる何かがあるのだろう。
その声で意識が戻ったのか戦士風の男性が目を開けると、震える手を必死に伸ばしてわたくしとオズボーン王へと憎しみに満ちた目を向けてくる。
「やめろ……ミルアに手を出すな……!」
「リオン……ッ! 逃げて……!」
「ああ……君をおいて逃げられるか……ッ!」
「そんな貴方だけでも……!」
そんな二人の関係性をはっきりと映し出す会話を聞きながら、オズボーン王もわたくしもどうすっかなーという感じでそっぽを向いている。
どうやら他の二人は仕事仲間という感じだけど、この戦士風と僧侶風の二人は恋人同士なんだろうな……でもまだ関係は浅いのか距離感はあるっぽいけど。
正直めんどくせえな、こいつら……この状況下で頬を染めて二人の世界に入っているんじゃねえよ、とは思うけど……さてどうするんだろう? とわたくしは隣に立っているオズボーン王の顔を見上げるが、彼は白骨化した骸骨の顔なので表情が正直よくわからない。
「……うーん……二人で盛り上がるのはまあ良いのだが……お前らは何のためにここへきた?」
「……ここがお前の宝物庫だということを聞いている……何か太古の宝などがあれば……」
「宝ねえ……おい、逃げ出そうとするな」
こそこそと動いていた斥候風の男をめざとく見つけたオズボーン王は音もなく移動して背中をどかっと踏みつける。
グエッ、とカエルが潰れたような声をあげて逃げ出そうとした斥候風の男の動きが止まるのを見て、戦士風の先ほどまで僧侶風の女性といい雰囲気だった彼が立ち上がる。
おうおう、めんどくさい雰囲気を醸し出していたのはお前だろうが、と思いつつわたくしはオズボーン王を守るような位置へと移動する。
あれ? いつの間にわたくし彼の護衛みたいなポジションになっているんだ? と思いつつも武器を構え直す戦士風のリオンとか呼ばれてた男に対峙する。
「……くそっ……お前みたいな子供すら操るなんて……なんてひどいやつなんだ」
「……墓荒らしよりはマシな気が……」
「朕もそう思うぞ……墓荒らしなんて碌なもんじゃない、でまあもうすでにこいつに負けているお前らが勝てる保証などないのだ、まずはお前らの境遇を話せ」
「……何?」
「朕を納得させるだけの境遇を話してみよ、それによっては慈悲を示しても良い」
オズボーン王はカタカタと揺れながら彼らへと治癒魔法をかけてやる……さすが不死の王だけあってあらゆる魔法を自在に操る能力を持っているのだろう。
神聖ではないが強力な魔力が彼らを包み込むと、手加減はしたけどある程度容赦なく打ち据えたわたくしの付けた打撲跡が瞬時に修復されていく。
皇帝とか王とか名乗っているが、本質的には高位司祭とかそういう存在に近いな……いやあ、こんな上玉早く殴りてえ。
「……ど、どうして……回復を」
「お前らの目は盗賊のそれではない、なら目的や理由があると考えた、それだけだ」
確かにな……盗賊とか悪人はもっとすえた目をしているものだ、どうしようもないクズとか殺人者はこんなまっすぐな目はしていないだろう。
冒険者稼業をするものが全てそうではないとは思うけども、少なくとも銀級まで昇格したパーティがつまらない墓荒らしなどを喜んでするわけでもないだろう。
わたくし達が黙って彼らを見ていると、敵意がないと判断したのか彼らは一度オズボーン王へと頭を下げると、姿勢を正してから話し始める。
「……実は……」
彼らはなぜこの宝物庫へと侵入したのかをポツポツと語り出す……彼らがベテラン冒険者パーティ「青の隻狼」であること、活動期間が長くそろそろ引退を考えていること。
引退前のひと稼ぎということで依頼を受けたが貴族に騙されて任務を破棄する羽目になったこと、そのために返しきれない借金を背負ってしまったこと、それらは全て女僧侶であるミルアを守るためだということなど。
ミルアと呼ばれている女性はスタイルもいいし、クズ貴族に狙われやすそうな綺麗な顔をしているもんな……そこでわたくしは彼女の顔からずーっと下へと視線を動かして……うん、すげーなと思った。
「……だから宝が欲しくて……」
「……全く……御伽話を信じてここへきたということか、迷惑だな」
「……だがあんたがいた、オズボーン王……不死の王がいるということはやはりここは伝説の……」
「ないない、ここは書庫に近い……出鱈目な伝説のおかげで朕も迷惑しているのだ」
「そ、そんな……」
「青の隻狼」はその事実にガックリと肩を落とす……そりゃそうだ、宝物庫って話が流布しているんだしな。
しかし……問題はそこではない、わたくしはそのクズ貴族の容姿に関する話を聞いていて一人だけ該当するものがいることに気がついた。
ディマジオ・ダーケイン男爵……商会上がりのあまり評判良くない貴族で、金で地位を買ったと言われている男だ。
裏社会の連中との繋がりも噂されているんだよな。
イングウェイ王国の歴史も一〇〇〇年、清廉潔白な人物もいるけどどうやってもクズにしか思えない人間が権力をカサに人を虐げることもあるが……さてどうするか。
残念ながらダーケイン男爵はインテリペリ辺境伯の寄子ではないんだよな……こちらも権力を使って、というのはなかなかに難しい立場だ。
わたくしの様子を見ていたオズボーン王が急にカタカタと笑うような様子を見せると、そっと肩に手を乗せた。
「お主に似た人物を遠い過去に見たことがある、見た目は似ていない……だが魂は同じのようにも思えるな、心のままに動くといい……今のお主はオズボーン王の尖兵にしか見えぬでな」
「ひいいっ! ば、化け物……!」
ディマジオ・ダーケイン男爵は目の前に立つ小さな少女にしか見えない仮面を被った怪物と、ドス黒毛皮と彼を睨みつける赤い瞳の魔獣を見て腰をぬかす……。
「青の隻狼」という冒険者に偽の依頼と濡れ衣を着せて貶め、あのミルア・シンデレラを手にいれる寸前だったのに。
仮面少女の手には計画を実行するための契約書……冒険者組合の幹部と交わした書状が握られている。
仮面の少女はグルルと唸る魔獣の頭をそっと撫でると、男爵の目を射抜くような鋭い瞳で見つめるとこの世のものとは思えないほど恐怖を掻き立てられるまるで地獄の底から響くような声で話し始める。
「お前のおかげで迷惑をしている……オズボーン王はそう仰っている」
「う、嘘だオズボーン王など伝説の中の……!」
「ならあの冒険者どもが嘘でもついていると? バカにするなよ……これはお前のしでかした顛末だ」
少女が何かをゴソゴソと取り出すと、男爵の前へとゴトゴトッ! と重い音を立てて人の首が転がされる……それは「青の隻狼」のメンバー……あの四人は愚かにもオズボーン王の宝物庫へと立ち入ったということなのだろうか?
男爵は口をパクパクさせながら、一人の女性の首に気がつく……ミルア・シンデレラ、男爵が手籠にしたいと思い描いていた美しい女性の命なき瞳が彼を見ている。
だが、その口がゆっくりと開くと……彼に向かって話しかけ始めた。
「ダーケイン男爵……私たちに罪をなすりつけて……許さない……許さない!」
「ヒイイッ! わ、わしは悪くない! お前がわしのものにならないから悪いのだ……!」
「お分かりいただけたか? この書状はオズボーン王の名の下にもらっていく……首を洗って待っているのだな、裁きを……そしてお前の罪を白日の元に晒す日を」
少女はゆっくりと魔獣と共に暗闇の中へと姿を消していく……男爵は転がっていた首を抱えながら、悲鳴とも慟哭ともつかない低い呻き声を上げながら、涙と鼻水を垂らしながら震えている。
あの少女が持っていった書状はそれまで彼が如何にして爵位を得るに至ったのか、そこまでに培った裏社会との取引なども多く含まれていた。
全てが終わる……全部終わってしまう、それもこれも全てあの女を手に入れようとした時から、黙って体を許せば済む話だったのに、冒険者達が反抗したから。
男爵は止まらない涙を拭うこともせずに、首を抱えて泣き喚く……彼は気がついていなかった。
彼が抱えている首は誰のものかわからないほど古く、しわくちゃに乾燥したミルア・シンデレラとは似ても似つかない女性の首だということに。
「わしは悪くない……悪いのはあいつらだ……わしは悪くないぞ……」
——ディマジオ・ダーケイン男爵の悪行が世に晒されたのはそれから数日後……王都を中心として発行される新聞にその所業が暴露されたことで明るみとなった。
ダーケイン男爵を庇う貴族などはほとんど存在せず、彼と懇意であったとされる裏社会の組織についても摘発が行われ壊滅状態となった。
ダーケイン男爵家は取り潰され関係者全員が処罰を受け、ディマジオ・ダーケインは断頭台へと上がることになった……処刑の時にまで、彼が大事そうに抱えていた謎の首は処刑後に彼の墓へと一緒に入れられ、それ以上の追求はなかったとされる。
銀級冒険者パーティ「青の隻狼」は事件の半年後引退し、それぞれが故郷へと戻っていったとされているが……リオン・ラッシュとミルア・ラッシュ夫人はインテリペリ辺境伯領へと移り住み、幸せな家庭を築いている……らしい。
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