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しおりを挟むランジは体を倒し、レンリを抱き締めたままベッドに横たわった。
彼の腕枕で並んで眠る体制になる。
背に回された腕は力強く、ぴたりと体が密着する。
一緒に寝ようと誘ったのはレンリ自身だが、ここまでの近さは想定していなかった。
ランジの鼓動が速い。
彼の胸に触れた掌に鼓動が伝わってくる。
無性に愛おしくなって頬を寄せた。
「っ……レンリ」
焦ったようなランジの声が降る。
「嫌?」
「……。本当にそういうところだからな」
問いに明確な返答は返ってこず、ランジの手が頭に触れ少々乱暴に撫で回された。
「もう、なに」
「早く寝ろ」
レンリの髪を梳いたランジの手が離れていくと同時に彼の体も遠ざかる。
腕枕はそのままだが、向かい合うのではなく彼は仰向けになった。
急に肌寒くなった気がする。
寂しさが滲み、さっきの温もりが恋しくて彼の胴体に腕を回す。
「くっつくなって」
「いいじゃない、恋人同士なんだから」
「だから問題なんだろう」
「なんでよ」
押し問答の間も、ランジは離れようとするがレンリはそれに食らいつく。
「だから」
ランジの言葉と共に視界が反転する。
「くっついて寝るだけで終わるわけがないだろう」
目の前には覆い被さるランジの顔と天井だけ。
獲物を見据えるような、黄金の瞳の奥に確かな雄を感じた。
彼の男の顔にどきりとする。
人間関係に疎いレンリでも、これがなにを意味するのか理解した。
意識した途端、頬に熱が集まる。
わずかな月明かりでもわかるほど紅潮している自覚がある。
期待と不安が半々といったところ。
「……わかったらさっさと寝ろ」
レンリの緊張を察したのか、ランジが視線をそらして頭を撫でてきた。
すぐに離れていく手。
ランジの体も熱も遠ざかっていく。
「待って」
彼の服の裾を掴むことで精いっぱいだった。
「何度言えば……」
「いいよ、終わらなくて」
レンリの言葉にランジが振り返る。
驚きで目を見開いている。
それ以上どう言葉を続けていいかわからず、彼の瞳を見つめ続けた。
観念したようにランジがふっと息を吐く。
「嫌な時はすぐに言えよ」
ゆっくりとランジが覆い被さってくる。
顔が近付きそのまま唇が触れ合った。
心臓がばくばくと暴れている。
緊張や恥ずかしさ、いろんな感情が怒涛のように脳裏を駆け巡る。
「怖いか?」
レンリの様子を察したランジが囁く。
大きな手が頭を撫で、あやされているような気分になる。
「緊張、してるだけ」
喉が詰まって情けない声が出た。
「くっつくのは? 緊張するか?」
彼の指が頬を優しく撫でた。
「平気」
「そうか」
声と共に彼がレンリの隣に横たわる。
「ほら、おいで」
腕を広げたランジ。
開けられた胸へ素直に体を寄せる。
熱い手が背を包み、ランジの唇が額に触れた。
「キスは?」
彼はレンリに問う間も優しく頬や髪を撫でていく。
「好き」
ランジと唇を合わせるのは心地いい。
素直に気持ちを伝える。
「じゃあ、たくさんしよう」
節張って熱い彼の掌にゆったりと頬が包まれた。
近付く彼の唇を受け入れる。
ついばむように触れていくキスが気持ち良くてふわふわする。
口付けの合間にほんの少し離れてしまうのがもどかしくて彼の唇を追いかける。
「ッ、レンリ……」
少し掠れた甘い声で名を呼ばれる。
ただそれだけで嬉しくてどきどきした。
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