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しおりを挟むレンリが積極的にキスをし始めるとランジがわずかに身を引いた。
離れたくないレンリはそれを追いかける。
彼の首に腕を回して逃げ場を奪う。
「っ、待て」
「嫌?」
「そうじゃなくて」
ランジの声にわずかな焦りが滲んでいる。
「無理してないか?」
背をさする彼の手が優しい。
ランジの言葉でさっきまで緊張で固まっていた自身を思い出す。
「全然」
腕に力を込め彼の顔を引き寄せる。
「もっとしたい、キス」
レンリの言葉にランジはふわりと微笑んだ。
「ああ、たくさんしよう」
唇が触れ合う柔らかな弾力や、キスをしながら髪や肩、背中を撫でられるのも心地いい。
彼にも気持ちよくなって欲しくて手を動かす。
両腕を彼の首に巻きつけているので動かせる範囲は少ない。
お返しの意味で指先で髪や耳を撫でた。
「ッ……」
耳朶を指が掠める時に彼が息を詰めた。
優しく触れているつもりだったが痛がらせただろうか。
嫌がっていないか心配で、薄く瞳を開け確認する。
苦しげに眉を寄せているが、その表情はどこか扇情的だ。
再度耳の輪郭に添って指先で撫でると、わずかに体が跳ね彼の瞳がゆっくりと開いた。
「……なに見てるんだ」
どこか気まずそうに言う彼の声はぶっきらぼう。
怒っているというよりは照れ隠しに聞こえた。
言葉を返す前にもう一度彼の耳を撫でる。
「っ、おい」
ランジはびくりと肩を震わせ、慌てたようにレンリの手を掴んで制止する。
「ごめん、嫌だった?」
「……そういうわけでは」
またも煮え切らない返事が返ってくる。
ランジはそのまま沈黙してしまった。
彼に掴まっていない方の手で耳から首元を撫でると、彼は艶かしい吐息を洩らした。
「ッレンリ!」
ランジがほんのりと頬を染めている。
「耳、弱いんだね」
自身の指に素直に反応する彼が愛おしくて再び手を伸ばすが、触れる前に彼の手に阻まれた。
「……さっきまでの緊張はどうしたんだよ」
呆れたようでありながらも、口元には笑みをたたえているランジ。
「緊張はしてる、ほら」
掴まっている手を彼の手ごと引き寄せ胸へと誘い、自身の強く高鳴る鼓動に押し付けた。
「っ……レンリ、何度言えばわかるんだ」
なんのことかわからず視線で問い返す。
「知らないからな」
両手は再び拘束され、そのままシーツへ縫い留められた。
「煽ったのはレンリだ」
まっすぐ射抜く黄金の瞳があやしく揺れている。
「ラン……」
レンリが名を呼び終える前にランジに唇を奪われた。
噛みつくような荒々しいキス。
自身の呼吸ごと飲み込まれていくようだ。
無意識に逃げ場を求めた唇が薄く開いた瞬間、彼の舌が押し入ってくる。
自身のものより熱い濡れたざらつきが口内をまさぐっていく。
どうしたらいいかわからず奥に縮こまっていたレンリの舌は瞬く間に絡め取られた。
表面を合わせ擦られ、熱く湿った感触にぞくぞくと背筋が甘く疼く。
舌根から裏側を舐め上げられるたびにいやらしく水音が鳴って羞恥を煽られる。
彼の舌に侵入され閉じられなくなった口からは、甘さを帯びた吐息が零れていく。
口内を隅々まで愛され、次第に体の力が抜けてくる。
満足したかのように彼の肉厚が去り、ちゅっと軽い音を立てて唇が解放された。
「かわいいな」
鼻先が触れ合いそうな距離でランジが呟く。
「とろけた顔になってる」
脱力して情けない表情になっていることにようやく気が付く。
見られるのが恥ずかしくて顔を背けようとするが、先読みされ両手で頬を包まれた。
「隠すなよ」
「……恥ずかしい」
「かわいい」
若干会話が成り立っていないが、目の前のランジは心底嬉しそうに笑っている。
再び触れるだけのキスが降る。
「もっとさせたい、その顔」
穏やかな表情とは裏腹に、黄金の瞳は鋭くレンリを捕らえている。
逃がさないという強い意志を感じた。
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