もふっとにゃ!

蜜りんご

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第1章 森の子ネコーお船へ行く

第13話 悲しみの子ネコーは現金だった

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 机の上には、ご馳走が並んでいた。
 ネコーも人間も、同じメニューだ。魔法生物であるネコーは、人間と同じものを食べることが出来る。それどころか、おとなのネコーは魔法の力で毒素を分解できるため、人間には食べられないものを食べることも出来るのだ。
 さて、では今日のメニューを説明しよう。
 本日のメインは、パリパリチキンステーキだ。それから、トマトサラダにキャベツと玉子のスープ。焼きたてのパンと、デザートの果物もある。皮をむいてくし切りにされ、ガラスの器の上で涼しそうに鎮座しているデザートは、初めて見る果物に見えたが、名前を聞いたらにゃんごろーもよく知っている木の実だった。丸くて赤くて甘酸っぱいルーミの実は、森中いたるところに生えているので、ネコーの住処でもよく食べていたけれど、こうして供されると、まるで別の食べ物のようだった。見知っているはずの食べ物の変身ぶりに、にゃんごろーは心をときめかせた。
 一人一人に用意されたトレーの上に、誘うように盛り付けられた料理たちは、青猫号の定番メニューだったけれど、にゃんごろーにとっては初めて目にする大ご馳走だ。
 卵なんて、森の住処では病気になった時ぐらいしか食べさせてもらえなかった。それなのに、卵だけでなく鶏肉まで食べられるなんて、まるでお祭りのようだ。
 料理の説明を聞いているだけでも楽しかった。


 同じメニューが、炊き出しスペースにいるネコーの仲間たちにも振舞われるのだと聞いていた。
 お風呂の後に、まだ夕ごはんまで時間があると言われたので、にゃんごろーたちはお船の外の炊き出しスペースへと様子を見に行ってみたのだ。お風呂で仲良くなったセンリとニコル、それから女湯に行ったミルゥたちとも合流して、みんなで一緒に向かった。
 炊き出しスペースには、森へ散り散りに逃げ込んだネコーたちが、何にんか集まってきているようだった。一つしかなかったテントは二つに増やされていて、みんな魔法ランプを灯したテントの中でくつろいでいる。
 集まったネコーたちは、テントでご飯を食べて、テントで眠ると言っていた。
 にゃんごろーと長老と、ルシアの三にんだけが、青猫号の中でごはんを食べて、青猫号の部屋に泊まるのだと聞かされた。
 それを聞いて、もしやテントのみんなは、にゃんごろーたちとは違うごはんを食べるのでは、と心配になったけれど、メニューは一緒だと教えられて安心した。もしもメニューが違うのならば、後でテントまで遊びに行くから一口味見をさせてくれと頼んでおかねばならなかったが、その必要はないようだった。
 テントのみんなのところには、サラダとチキンをパンの間に挟んでサンドイッチにしたものと、スープと果物が運ばれる予定だという。
 みんなに挨拶を済ませてから、にゃんごろーたちは、お食事をするための部屋へと向かった。
 お船には大きな食堂があるということだが、にゃんごろーが連れて行かれたのは、調理場の近くにある和室だった。消火班のメンバーも一緒だ。
 畳という、柔らかい感触がする不思議な床が敷き詰められたその部屋では、三人のお年寄りが待ち構えていた。
 トマじーじと、マグじーじと、ナナばーば。
 この三人が、長老の一番のお友達なのだと紹介された。
 ナナばーばとミルゥの采配で、一同は部屋の真ん中の大きなテーブルに着席する。
 にゃんごろーと長老は向かい合わせで、テーブルの真ん中に座るように言われた。長老の側には、三人のじーじとばーば、それから消火班の女魔法使いタニアが座った。残りの、ミルゥ、ルシア、センリ、ニコルがにゃんごろー側だ。にゃんごろーの両脇には、ミルゥとセンリが座った。
 背の低いにゃんごろーのために、ナナばーばは座布団を三枚重ねてくれた。おかげで、ちょうどいい高さになった。ルシアを除く女性陣は、三枚重ねの座布団の端にちょこんと腰掛けたにゃんごろーを見て色めき立った。
 そうこうしている内に、料理が運ばれてきた。
 ノックの音がしてドアが開くと、廊下には料理を盛り付けたトレーが並ぶワゴンが見えた。
 ネコーのみんなはお客さんだから座っていてね、と言われて胸を高鳴らせながら見守っていると、我先にとワゴンに向かったミルゥが、にゃんごろーと自分の分のトレーを両手に戻ってきた。ネコーの三にんと、お年寄り三人組は座ったままで、他のみんなは配膳のために働いているが、ミルゥは持ってきたふたり分のトレーをテーブルに置くと、そのまま座り込んで、にゃんごろーにメニューの説明を始めた。
 にゃんごろーは、お目目をキラキラと輝かせ、「ほうほう」と頷きながらミルゥの説明に聞き入った。尻尾を、ユーラユーラと踊るように揺らしながら、目に余るご馳走に感激していたけれど、みんなのトレーがテーブルに揃った時に、ふと気が付いてしまった。

「ネコーのぶんは、ちいさくちぇ、しゅくないよ?」
「体の大きさを考えんかい」

 人間よりも体が小さいネコーの分は、子供用の小さな食器が使われていたのだ。当然、盛り付けられている料理の量も、人間たちのものよりも少ない。
 その事実に気づいてしまった、にゃんごろーは、衝撃のお顔で長老に訴えた。すると、すかさず長老から窘める声が飛んできた。

「れもぉー…………」

 にゃんごろーは納得できない様子で、お目目を、うるりとさせる。長老は、お胸に生えているふっさりした毛を撫でながら言葉を続けた。

「みんなそれぞれ、自分にちょうどいい量っていうもんがあるんじゃ。欲張って食べ過ぎると夜中にお腹が痛くなって、明日の朝、朝ごはんが食べられなくなるかもしれんぞ? せっかくお船にお泊りして、お船の朝ごはんが食べれるのになー。にゃんごろーだけ、お腹が痛くて、朝ごはんが食べられなくなってしまうかものー?」
「しょ、しょりぇは、こみゃる。わ、わかっちゃ。にゃんごろー、らみゃんすりゅ」

 人間たちは、もしや一波乱起こるのではと焦ったが、杞憂に終わった。
 子ネコーのことなんてお見通しである長老の、ツボを押さえた説得が功を奏し、にゃんごろーは、コロッと陥落した。
 にゃんごろーは、食い意地のためなら、食い意地を我慢できる子ネコーなのだ。

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