スパダリホストと溺愛子育て始めます 愛されリーマンの明るい家族計画

餡玉(あんたま)

文字の大きさ
51 / 58
電子配信お知らせSS

ちょっとした変化〈彩人目線〉

しおりを挟む
こんばんは、餡玉です。
書店販売特典のためにSSを書かせていただいたのですが、二つ書いて使用しなかったほうのSSを、こちらにアップさせていただきます。
短いですが、よろしければご覧くださいませ♡

そして4/1より本作のKindle配信がスタートします。ご予約も開始しておりますので、電子派の皆様、どうぞ宜しくお願い致します!
すでにご予約開始となっている電子書店様もございますので、ぜひぜひチェックしてみてくださいませ。 

コミカライズ企画も進行中です。今後とも、どうぞよろしくお願いします!



 ◇    ◇    ◇



『ちょっとした変化 〈彩人目線〉』

 
 三人での暮らしが始まり壱成が空を迎えに行くようになってからというもの、ほかの保護者から挨拶されることが増えた気がする。

 朝は七時半頃までに保育園へ送っていくのが日課だったが、睡眠時間がまともに取れず、朝はだいたい眠気と疲れとの戦いだ。
「おはようございます」と挨拶をしてくれる他の保護者に愛想をふりまくこともできず、空を送ってそそくさと帰宅していた。

 彩人を空の父親だと勘違いしている保護者も多いと聞くし、職業がホストという水商売ということもあってか、偏見の滲む眼差しを向けられることもしばしばあった。
 24時間保育という特殊性もあり、ふつうの園より理解はあるのだろうが、それでもホストという職業に抱かれるイメージは好意的なものばかりではない。

 だが、壱成が空を迎えに行くようになってからというもの、彩人に向かう他の保護者たちの視線が柔らかくなった気がしている。

 だがそれは、壱成がいてくれることで育児へのプレッシャーが軽減し、そう感じるだけなのかもしれない、と思っていたのだが……。

「霜山さん、出会う保護者の皆さんにすごく爽やかな笑顔でご挨拶しておられますし、そのおかげもあるんじゃないですか?」

 とある日、空を送ったあと少し時間があったため、彩人はあいこ先生との雑談ついでに、最近感じていた変化について尋ねてみた。
 すると、この返事である。

「爽やかな笑顔……っすか」
「ええ。霜山さん、とても話しかけやすい雰囲気でいらっしゃいますし。空くんのお友達のお母様方と、ときどき和やかに雑談されたりしてますよ」
「はぁ……なるほど」

 遠回しに、「あなたはバリバリ話しかけにくい雰囲気ですけどね」と言われた気がしなくもないが気にしない。
 彩人は感心しつつ、「さすが壱成だな……」と呟いた。

 あいこ先生いわく、他のお母さんから『空くんのご親戚?』と声をかけられれば、壱成はあの優しく整った顔をにっこりと綻ばせ、爽やかに挨拶をするという。
 そして、自分は彩人の学生時代からの友人であることを説明し、諸事情あって彩人とともに空を育てているのだ——という旨をさらさらと説明しているらしい。

 しかも、「彩人はああ見えてすごく真面目なので、ほうっておけなくて」とはにかんだような笑みを浮かべ、彩人の苦労までをも語るというのだ。

 さらには「働きながら子育てするって、本当に大変ですね。いろんな苦労があるって初めて知りました」と苦笑を見せる壱成に、仕事と育児で疲れた保育園ママたちからは「ほぅ……」共感のため息が漏れ、すぐに皆と打ち解けているというのである。

 しかもそこへ、壱成に天使の笑顔で飛びついてくる空の愛らしさが加わるときた。
 その尊い姿は、今やほしぞら保育園の癒しとなっているらしい——

「……なるほど。それで俺に対する冷ややかな視線も減ったってことですか」
「ですね。朝の早瀬さん、すごく疲れたお顔ですし」
「はぁ……ですよね、すみません」
「あぁ、失礼しました。お疲れなので無理もないと思います」
「いや、ほんとその通りとだと思うんで」
「いえいえ、イケメンでいらっしゃるから、無表情だとちょっと怖く見えるんですよね。早瀬さん背も高いし」
と、あいこ先生は頷きながらそう言った。

 この反応もちょっと意外だ。自分と負けず劣らず、あいこ先生はいつも彩人に対して無愛想であるため、てっきり敬遠されているものと思っていた。

 だが、なるほど。そういうふうに見えていたのか……と、あいこ先生に対するちょっとした苦手意識まで和らいでゆく。

——壱成にめちゃくちゃお礼言わないとだな……

 なんだか、早く壱成に会いたくてたまらない気分だ。

 園庭で累と走り回っている空をほっこりと眺めながら、彩人は改めて、壱成の存在の大きさを実感するのだった。
 



おしまい♡

しおりを挟む
感想 77

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?

krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」 突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。 なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!? 全力すれ違いラブコメファンタジーBL! 支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。