大好きな幼馴染みと付き合えないので、女装ソロプレイをしています。

餡玉(あんたま)

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 鏡の中にマニッシュな美少女がいる。

 紺色ブレザータイプの制服に身を包んだ黒髪ショートヘア。白シャツの襟元には緩めのリボン、膝上五センチのプリーツスカート。スカートから伸びるしなやかな脚には、少し透け感のある黒タイツ。このあたりじゃちょっと見ないような美少女だ。

 いっとくけど、これは俺の妄想じゃない。
 この美少女の正体はこの俺、紀田きだ柊生しゅうせい。高一の男だけど、俺が女装すれば、そんじょそこらの女子高生よりもずっと可愛い。

 姿見の前でスカートをつまみ、腰をひねって自分の姿をじっくり観察。これは、ネットで購入した名門女子校風の制服だ。
 ちなみに、髪の毛は地毛のまま。いっときはウィッグを試してみたこともあったけど、違和感が拭えなくて結局やめた。

 俺の黒髪は扱いにくいサラサラヘアで、短めに切ったとしても中性的なニュアンスが出る。男の格好だと扱いにくい髪の毛だけど、女装には使い勝手がいい。たとえるなら、ちょっとボーイッシュな女子高生……って感じかな。

「スカート丈、もうちょっと長いほうが雪兄ゆきにいの好みかなぁ……」

 ぽつりと口から漏れたのは、俺の幼馴染みでふたつ年上の畠山はたけやま雪哉ゆきやの名前だ。
 雪兄は、気の優しい超イケメンのモテ男。雪兄のとなりには、常に気の強そうな美人彼女がくっついている。

 本当ならそのポジションに俺が収まりたいわけだけど、あいにく俺は男で、雪兄とは付き合えない。だからこうやって女装して、雪兄と付き合ったらどんな感じなんだろうな~……なんて、虚しい妄想に明け暮れている。

 ……そう、むなしい。むなしいにもほどがある……。

 だが女になれない以上、俺は雪兄の特別になることなんてできやしない。
 告白することも、付き合うことも、手を繋ぐことも、キスをすることも、エッチをすることも……男だからなにもできない。雪兄と付き合える彼女たちが、俺は羨ましくてたまらなかった。

 だけど、いつも彼女のほうから雪兄を振るらしい。
 俺は幼馴染みだからよく知ってるけど、雪兄は自分の考えを誰にでもペラペラ話すタイプじゃないし、けっこう優柔不断なところがある。

 イケメンだし優しいからすごくモテるけど、いざ『彼女の座』におさまった女の子たちからは、「物足りない」「つまんない」「思ってたのと違う」と幻滅され、フラれてしまうんだとか。

 そうして雪兄がふられるたび、俺はちょっとホッとする。
 俺のとなりに戻ってきてくれた。やっぱり雪兄を理解できるのは俺だけだ……! って優越感に浸ったりもするけれど、そうして雪兄の不幸を喜んでいる自分はちょっときらいだ。

 さっきまで姿見の中で作り笑顔を浮かべていた女子高生が、気付けば物憂げな顔になっている。鏡の中の自分と目を合わせ、俺はぽつりと呟いた。

「……可愛いじゃん、俺」

 こんなに可愛いのに俺は男で、雪兄には選んでもらえない。誰よりもずっとずっと雪兄を大切に思っているのに、俺はどうやったって、あっち側にはいけないんだ。

「ぜったい、俺のほうが可愛いのに。……雪兄のこと、こんなに好きなのに」

 スルスル……とスカートをたくし上げてゆくと、黒タイツに包まれた太ももが露わになる。タイツの下にかすかに透けているのは、純白の小さな下着。パンツまでしっかり女物にするのが俺のこだわりだ。

「……ぁ……」

 きつい女性用下着の中に押し込められている自らの性器に淡く指を這わせ、俺は小さくため息をついた。女装をするといつも、雪兄とエッチなことをする妄想がむくむくと湧いてくる。

「うーん、もっとあざとエロい感じのほうが好きかなぁ? けど、あんま下品なのって雪兄に似合わないし……」

 そんなことを呟きながら、さらりとした太ももにゆっくり手を這わせた。

 ——後ろから抱きしめられて、あの長い指でココ、触られたら……どうなっちゃうんだろう。こんな格好をして興奮している変態な俺を、いつもの優しい笑顔で叱ってほしいなぁ……。

「ん……雪兄……」

 いつしか俺は鏡の前に座り込んで脚を大きく開き、ベッドにもたれかかって自慰に耽っていた。
 清楚なデザインのジャケットの中に手を入れて、ブラウスの上からぷくりと硬くなった乳首を指で押し転がす。そして小さな下着の中で卑猥な形を浮かび上がらせ、布地をトロリと濡らしているいるペニスを淡く擦りながら、俺は目を閉じて雪兄を想った。

 ——『柊生がこんな変態だったなんて知らなかった。がっかりだよ』

「ぁん、っ……ごめんなさい。……へんたいで、ごめんなさい……」

 ——『ほら、もっと俺を煽ってみなよ。柊生が勃たせないと、ヤれないだろ?』

「ん、っん……フェラする、おれがおっきくするから……挿れて、おれん中、ぐちゃぐちゃに突きまくって、犯してよぉ……っ」

 こんなにも恥ずかしいことをしている俺を優しい笑顔で罵りながら、無遠慮に突き上げてくる雄々しい雪兄——……そういう妄想で自慰をしまくっているせいで、俺の後孔はすっかり男を受け入れる形になっている。準備だけは万端だ。使うあては全くないけど。

「……もっとして、いっぱい、中出ししてよ……っ、ぁん、ぁ……雪にぃ……」

 本物の優しい雪兄がそんなことをするわけない——……そんなことはわかっている。
 だけど妄想の中でくらい、いいよね。
 俺のこと、めちゃくちゃに抱き潰してよ。
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