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第一幕 ー孤独を忌む鬼ー
序 戦場に舞う花
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曇天のもと、広い広い草原が広がる景色の中を、湿った風が駆け抜けていく。
遮るものは何もなく、緩やかに隆起する地面には野草が生い繁り、中には小さな白い花をつけるものもある。
それを踏み荒らすのは、鎧武者達の泥にまみれた足だ。
地を踏み鳴らし、土を抉って蹴散らしながら敵の軍勢に向かって走る何万という脚が、可憐に咲いた野草の花を散らしていく。
轟々と響く男たちの雄叫び、刃物と刃物がぶつかる金属音、肉を切り骨を断つ鈍い音……。それはまるで嵐のように、武者たちのぶつかり合う気迫と気迫を加速させる。
瞬間、巻き上がる土煙で薄暗くなった視界を切り裂き、白い影が奔る。
時折途切れる雲から覗く陽の光が、その影の主を照らす。
きら、きら、と光を返して輝くのは、風になびく長い銀色の髪。
白い狩衣を身に纏った背中は小さく、大地を踏みしめる両の脚は、猛りか恐れか、微かに震えている。
握りしめていた拳を開き力を込めると、その蒼白な指の先には、およそ人間のものとは思えぬ、鋭い鉤爪が軋む。
——迷うな、切り裂け。感じるな、本能に従え。
全身に浴びた返り血、恐怖に見開かれた眼、断末魔の叫び声、怨みのこもった呪いの言葉。
全てを呑み込み、嗤ってみせろ。
涙を流すな、嗤うんだ。
俺は鬼だ。見失うな。
この世界に存在する意味を。
遮るものは何もなく、緩やかに隆起する地面には野草が生い繁り、中には小さな白い花をつけるものもある。
それを踏み荒らすのは、鎧武者達の泥にまみれた足だ。
地を踏み鳴らし、土を抉って蹴散らしながら敵の軍勢に向かって走る何万という脚が、可憐に咲いた野草の花を散らしていく。
轟々と響く男たちの雄叫び、刃物と刃物がぶつかる金属音、肉を切り骨を断つ鈍い音……。それはまるで嵐のように、武者たちのぶつかり合う気迫と気迫を加速させる。
瞬間、巻き上がる土煙で薄暗くなった視界を切り裂き、白い影が奔る。
時折途切れる雲から覗く陽の光が、その影の主を照らす。
きら、きら、と光を返して輝くのは、風になびく長い銀色の髪。
白い狩衣を身に纏った背中は小さく、大地を踏みしめる両の脚は、猛りか恐れか、微かに震えている。
握りしめていた拳を開き力を込めると、その蒼白な指の先には、およそ人間のものとは思えぬ、鋭い鉤爪が軋む。
——迷うな、切り裂け。感じるな、本能に従え。
全身に浴びた返り血、恐怖に見開かれた眼、断末魔の叫び声、怨みのこもった呪いの言葉。
全てを呑み込み、嗤ってみせろ。
涙を流すな、嗤うんだ。
俺は鬼だ。見失うな。
この世界に存在する意味を。
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本当にありがたく思います。
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