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18、あっ、そんな……!〈泉水目線〉

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「……すき」 
「……ふぇっ!?」
「いずみさん、すき……すき……」


 しかも一季は、泉水にぴったり抱きついたまま、眠たげな声で、甘い言葉を囁いた。

 それはあまりに突然のことで、泉水は大いに焦りまくった。いっぽう一季は、下からぎゅうっと泉水に抱きつき、うわごとのように「すき……♡」を繰り返している。どうやら寝ぼけているようだ。

 これぞまさに、『据え膳食わぬは男の恥』。
 一季からぐいぐいと迫ってくれているのだから、ここはガバッと一季を抱きしめ、キスのひとつでもぶちかまし、情熱的な雰囲気を醸し出すべきなのだろう。

 だが、その『据え膳』の食し方が分からないのが童貞である。泉水は一季を押しつぶさないよう肘で身体を支えつつ、どうしたものかと考えた。必死の必死で考えた。

 だが、そうこうしているうちに、一季の脚が泉水のそれにするりと絡まる。
 夜中じゅうずっと勃ちっぱなしのペニスが、一季の腰のあたりにゴリっと擦れた。それはあまりに気持ちがよく、間の抜けた声が漏れてしまう。

「ぁっ……♡ ちょっ……待っ……!!」


 ——待って、待ってこれっ……!! ぐぬぅううう……俺はっ……俺は一体、どうしたらええんや……ッ……!!!!


 全身の血液という血液の全てが性器へ集中しているのではないかと錯覚するほどに、ぐんとペニスが硬くなる。だが寝ぼけた一季はそんなことはお構い無しに、全身で泉水に甘えている。その仕草はあまりにかわいすぎる。色っぽくて、かわいすぎて、今にも鼻血を噴きそうだ。

「あ、ああ、ああかん……待って! やめてっ! やめてくださいっ……! 俺っ……まだ、こっ、ここっ、心の準備がまだっ……!!!」

 勃起したペニスを押し付け、大きな図体でのしかかっておきながら『やめて』とはなにごとかとセルフツッコミしつつ、泉水はようやく腕を突っ張り、一季から身体を離した。


 すると、泉水の大声で、一季もようやく目を覚ましたらしい。
 ぽやんとした表情で、自分の上に四つ這いになっている泉水を見上げている。上から見ても実にかわいい。


「あ……あれ……」
「アッ…………こっ、これは違うんです!! お、俺っ、何も……ッ」
「……夢……?」
「へっ……?」

 どことなく夢うつつのような表情のまま、一季は安堵したように微笑んだ。そして、泉水の首に絡んだままの腕に力を込める。不意打ちでくいと引き寄せられ、泉水はそのまま一季の上に倒れ込んでしまった。

「うあっ……」
「泉水さん……ほんとに、いる……あったかい」
「し、しまさきさん……っ……あのっ、待っ……!!」
「ん……?」


 ゴリィ……っと、改めて、剛直を一季の股座に押し付ける格好になり、泉水は絶望的な気持ちになった。


 一季も完全に、泉水が盛っていることに気づいた顔だ。明らかに、腰のあたりに違和感を感じている顔だ。ぱち、ぱち……とゆっくり目を瞬いた後、ちらりと目線を下げている。


 ——あ、あああ、どないしよ……!! あそこガッチガチにしてんの、バレてしもた……!!


「あの、ご、ごめんなさい……!! 俺っ……俺、そういうつもりじゃなくて、あのっ……」
「……うわぁ……」
「あああああ、ごめんなさい!! キモいですよね、死んだほうがいいですよね!! こんなもんすぐに、」
「……すごく、おっきい……」
「え?」

 一季はとろんとした表情で、薄く開いた魅惑の唇から、熱っぽい溜息を漏らした。


 ——え…………? なんて? す、すごく、おっきぃ……?


 普段は天使のように清楚な一季が見せる淫蕩な表情に、泉水の細胞という細胞が、ボッっと熱く燃え上がる。同時に、泉水のそれがぐんと嵩を増した。すると一季は、うるりと濡れた綺麗な目で泉水を見つめ、溜息混じりにこう言った。

「……さわっても、いいですか?」
「………………えっ? な、なにを……?」
「すごく、つらそうだから。……僕の手で、イってもらえたらいいなって……」
「イっ…………?」


 ——し、し、しまさきさんが……なんや性的なことを言うてはる……? 


 突然の官能的発言に、泉水の思考は完全停止だ。泉水が真顔で硬直していると、一季はそ気恥ずかしげに目を伏せつつ、おずおずと右手を下の方へ降ろしてゆく。そして……。


 ——ま、まさか…………まさかこれっ……これって、まさかほんまに……!?


「ぅあ……っ……♡」
「ぁ……すごい……。すごくおっきぃ、んですね……。すごい……」
「ちょっ……あっ……あの、っ、あ……」

 スウェットの上から軽く撫でられただけでこのざまである。びりびりと全身を駆け巡る甘い甘い性的快感にしびれ、泉水はがくりと一季の肩口に頭を落とした。

 一季も吐息もいつになく熱い。はぁ、はぁ……とセクシー極まりない嘆息を漏らしながら、一季はおずおずとした手つきで、そっとスウェットの中に指先を滑り込ませてきて……。


 ——あ、あ、あ…………嶋崎さんが、薄汚い俺の欲望に手を……ッ……!! あ、あかん、これはあかんでぇぇええ……!!!


「うわぁっ……ァっ……、しまさきさんっ……」
「はぁ……すごく、熱い……。いずみさんの……」
「あ、あぅ……ッ……ん、待っ、そんな、っ……」

 溢れんばかりの先走りで、泉水の怒張はすでにぬるぬるに濡れている。そこへ、他ならぬ一季の手が、直に触れているのである。感動と快感と罪悪感がないまぜになり、手のひらで包み込まれるだけで絶頂しそうになってしまった。


 ——めっちゃ、めっちゃきもちええ……っ……!! あかん、あかんんん!! こんなん、一回シコられただけでイってまう!! 早すぎてドン引きされるぅううう!!! が、がまんしろ俺……っ……!! 


 ゆっくりとした動きで、一季の手が動き出す。ぬちゅ……ぬち……っと、いやらしい音がかすかに聞こえてくるたび、気持ちよさのあまり泉水は派手に喘ぎそうになってしまった。だが、必死で歯を食いしばって耐え忍ぶ。

「う、ん……ぅ……」
「わ……いっぱい濡れてる……泉水さんの……」
「だ、だって……しまさきさんが、さわってくれて……っ……はぁ、はあっ……」
「僕で……こんなに、興奮してくれてるんですか?」
「そりゃっ……そっすよ……。めちゃ、嬉しくて……きもちよくて、うっ……ンっ……」
「……泉水さん……」

 必死で泉水がそう訴えると、一季の目がうるりと揺れた。すでに紅潮していた頬がさらに赤く染まり、なぜだか泣き出しそうな表情になっている。


 そしてその次の瞬間、一季の麗しの唇が、泉水の唇に重なっていた。


 ぎゅっとシャツを引き寄せられ、口と口でしっかりと触れ合うやわらかな弾力に、泉水はくわっと目を見開く。


 ——き、き、き、キス…………!! キス…………ッ……!!?


 たっぷり十秒はくっついていただろうか。泉水がカキーンと硬直していると、一季はそっと唇を離し、とろけるような表情で泉水を見つめた。そのかわいさに、泉水のペニスはさらに猛った。

「すきです……泉水さん……大好き」
「ふぁっ……あ、あの、っ……ァっ……」
「気持ちよくなってください。いっぱい、出していいですから。……ね?」
「……はぁっ……おれ……、もお、無理……むりです……っ!! イキそ……っ……!! あぁ、あっ……ハァっ……!」
「イっていいですよ……? ほら……すごい、ビクビクして……こんなに硬くて、おっきくて……泉水さんの、スゴい……」
「あ、あっ……うぅっ、ン、んんっ……!!」


 どびゅ、びゅるる……!! と、泉水は一季の手の中に、思い切り射精した。
 一人でするのとは比べ物にならないほどの甘い痺れが、泉水の全身を電流のように駆け巡る。


 頭が真っ白になるとはまさにこのこと。目の奥がチカチカするほどの、凄まじい絶頂感。泉水はくったりと一季の肩に顔を埋めて、射精後の余韻に打ち震えていた。


「ぁ……ん、いっぱい出てる……」

 しかも一季が悩ましげな声でそんなことを言うものだから、泉水はさらにガツンと頭を殴られたような気分になった。一季の台詞がいちいちいやらしいものに聞こえてしまい、あまりの色気に目が回る。

「………す、すみません……。すぐ、拭きますからっ……」
「でも、まだ……かたいですよ?」
「うっ…………だ、大丈夫!! 大丈夫です!」

 泉水は身体を起こし、白濁でべっとりと濡れた一季の手のひらをティッシュで拭った。
 後始末をしつつ目がいくのは、一季のコットンパンツの股座である。どう見ても、一季のそれもふっくらと膨らんでいるような気がして、気になって気になって仕方がない。


 ——お、俺も……イかせて差し上げたい……。嶋崎さんのエロい顔とかイくとことか、むっちゃ見たい……!!


 俄然鼻息が荒くなる。泉水は今も、一季の上に跨ったままという格好だ。

 もう一度、ゆっくりと一季の上に四つ這いになり、恐る恐る、泉水はそこに触れてみた。すると一季はぴくんっと腰を揺らし、まつ毛を震わせながら泉水を見上げた。

「あ、あの。嶋崎さんも……」
「いっ……いや、僕は」
「俺ばっかり、気持ちよくしてもらうのは悪いですし。俺も嶋崎さんに、さ、さ、触りたい……っていうか」
「で、でも……」

 一季のコットンパンツに触れる指先が、緊張のあまり少し震える。だがそれ以上に、一季を気持ちよくしてあげたいという気持ちが勝っている。

 ためらいがちに一季の膨らみに手を触れてみると、一季は扇情的な表情を浮かべ、可憐な唇から「ぁっ……」とセクシーな声を漏らした。


 その反応に煽られて、泉水の中のケダモノが、グワッと目を覚ましたような気がした。


 せかせかと一季のスラックスのボタンを外し、ジッパーを下げる。すると、一季の下着が目に飛び込んできた。
 淡いブルーのボクサーパンツと、しっかりとした芯を持って硬くなっている一季のペニスを目の当たりにした瞬間、泉水の理性に、マリアナ海溝よりも深い亀裂が入った。


 ——ああもう…………我慢できひん。これが、これが勢いってやつなんやな……!! 俺のほうから、今度は……嶋崎さんを気持ちよく……っ!!


 突如として燃え上がった欲望に身を任せ、キスをしながら一季のペニスを愛撫しようと身を乗り出した瞬間、一季がさっと身体をよじった。そして、自分で自分の身体を抱きしめるような格好をして、気まずげな表情を浮かべている。

「まっ……待ってください……!」
「へっ……」
「ご、ごめんなさい……。あのっ……僕、まだ自信が……」


 荒ぶりかけていた泉水の中のケダモノが、しおしおとチワワに戻った。


「あっ……あ、す、す、すみません!! 調子乗って、俺っ……!! すみません!!」
「い、いえあの、僕の方こそ、ごめんなさい……勝手にあんなことしておいて、やっぱ無理とか……本当に、すみません……!」
「あ、そんな、謝らんといてください。俺の方こそ、焦って……」

 正直、かなりへこんだ。
 だが泉水は、一季の事情を理解している。理解している……が、愛撫の手を拒絶されるということは、思っていた以上にショックだった。

「本当にごめんなさい……! 僕が煽ったくせに、こんな……」
「い、いえいえいえ、そんな! 俺は……う、嬉しかったですし。嶋崎さんに、触ってもらえて……」
「……泉水さん……」

 だが、泉水のその言葉で、一季は強張っていた顔をかすかに緩めて、泉水を見上げてた。そして一季は唇を引き結び、ぐっと涙を堪えたような表情で、ゆっくりと起き上がる。

「……もうちょっと慣れれば……、大丈夫だと思うんです。ごめんなさい、だから、もうちょっと待ってください……」
「い、いやいやいや、ほんまに謝らんといてください。俺、分かってますから。嶋崎さんの気持ち」
「……ありがとうございます。……ごめんなさい」
「あの……じゃ、じゃあ……ぎゅってしてもいいですか? それやったら……大丈夫ですか?」
「あ、はい……!」

 一季から漂っていた緊張感が、ようやくふわりと解けていく。そっと身を寄せてくる一季を抱き寄せながら、泉水は様々な感情の入り混じった深呼吸をした。


 ——こうしてるだけで、気持ちええし、幸せ。あったかくて、かわいくて……。でも……。


 ちょっと同衾したくらいでこのざまだ。
 今も一季を抱きしめているだけで、むきむきとペニスが元気になっているという有様だ。


 ——だ、大丈夫なんか俺……。今みたいに我慢がきけばええけど、いつまでも踏みとどまれる自信がない……。


 この先一季と交際していくにあたり、自分はこれで大丈夫なのだろうかと、泉水は内心、頭を抱えてしまった。
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