徳を積みたい鬼が俺を溺愛してくる

餡玉(あんたま)

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13、好いところ

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 触れた頬はあたたかい。人のそれとまるで変わらない質感を持っている。俺はしばらく黒羽の頬を指先で撫でながら、ふと、唇に目を落とす。

 そこもまた親指でふに、と触れてみると、黒羽は「ん」と小さく呻いた。見上げてみると、まだ何もしていないと言うのに、褐色の頬がほんのりと色づいている。こんな見た目をしているくせにひどくウブな反応だ。

「どした?」
「……俺は、こんなふうに誰かに触れられたことがない」
「ああ……うん」
「だから、どうしていいかわからへん」

 そうだろうな、と俺は思った。
 人間として生きていた幼い頃は、日常的な暴力と飢えによって苦しんでいた黒波だ。鬼となったあとも、ずっと妖としての本能に支配されていた様子だし、こうして人から触れられる経験など生まれて初めてなのだろう。

 あれだけの力を持っていながら、俺に触れられるだけで頬を染めて恥じらう黒波がいじらしくてたまらなかった。自然と、俺の唇には笑みが浮かぶ。

「どうもしなくていいよ」
「そ、それに……じじいに手を出すなと……」
「手を出してるのは俺なんだから、問題ないよ」

 そう囁きながら、俺はそっと伸び上がり、柔らかく黒波の下唇を啄んだ。唇から伝わる弾力、小さくこぼれた黒波の吐息が無性に可愛い。俺は腕を伸ばして黒波を引き寄せ、ともにベッドに横たわった。

「……昼間、俺とキスしておっきくなっただろ。ちょっと吐息を吸っただけで」
「ん、ぁあ……」
「今……こうやってると、黒波はどんな感じがすんの? 栄養補給って感じ?」
「……それもある……けど、」

 向かい合って横たわっている俺の腰を、黒波がぐいと抱き寄せた。下半身が密着する格好になり、俺はごくりと息を飲んだ。だって、俺の性器はとっくに硬く芯を持っているのだ。黒波の腰に擦れるだけで、すでに快感を拾いはじめている。

 それに気づかれるのが恥ずかしくて、俺はたまらず黒波の唇をキスで塞いだ。

「っ……ふ」

 吸っては離し、角度を変えてまた啄み、微かなリップ音を立てながら黒波の唇を味わってゆく。俺がみじろぎするたびに黒波の身体は微かに震え、腰に回った手に力がこもり始めた。

 緊張気味なのだろう、黒波の唇には強張りがある。だが、その慣れない様子が可愛くて、俺はキスをしながら無意識に微笑んでいた。

 ふと顔を離した拍子に、陶然と細められた金眼と視線が合う。すると黒波は、少し掠れた声でこう言った。

「……また、その顔や」
「へ……?」
「昼間言うてた。気持ちええときの顔」
「ん……だって黒波とこうしてるの、気持ちいいから」
「そう、なんか……?」
「気持ちいいよ、すごく……」

 たまらず、俺は黒波の口内へと舌を忍び込ませた。
 初めての感覚に驚いたのか、「っ」と息を呑む黒波に身体をくっつけながら、俺はそっと、黒波の中へ舌を這わせた。

 縮こまっている舌をあやすように舌を擦り寄せ、手のひらで両頬を包み込む。少し尖った耳朶を撫で、濡れた黒波の唇を甘く吸う。すると、俺の動きに応えるように、黒波の舌がやわらかく俺のそれに絡まりはじめた。

「ん、……ん、は……っ」

 とろりと濡れた粘膜が擦れあう感覚は淫らで、気持ちがいい。黒波の身体からは強張りが解けはじめ、唇もキスも柔らかく、素直になってゆく。
 俺はいつしか黒波とのキスに夢中になり、ボクサーパンツの中で屹立している硬いそれを黒波の腰に摺り寄せていた。

 すると、俺がゆらゆらと腰を揺らして自慰をしていることに黒波が気付いたらしい。ぐっと強く下半身を引き寄せられ、俺は思わず「ぁ、んっ!」と声を上げてしまった。

「淫らやな……陽太郎。俺の身体でこんなことをして」
「あっ……ご、ごめん……! 夢中で……っ、あっ……」

 屹立にぐぐ……と腰を擦り付けられて、堪えきれず甘ったるい声を漏らした。そして俺も気付いてしまった。黒波のペニスも、俺と同じく硬さを持っていることに……。


 ——黒波も勃つんだ……。俺みたいなのと、こんなことしてるだけでも……。


 黒波も同じように快楽を得てくれているのかと思うとすごく嬉しくて、余計に興奮が高まった。黒波のここに触れたら、どんな反応をしてくれるのだろう。悦んでくれるだろうか。

 横たわったまま顔をあげて黒波の顎先にキスをしながら、スルスルと下半身へと手を伸ばし、そっと尋ねてみた。

「……黒波のこれ……触ってもいい?」
「えっ? お、俺のを……? なぜ」
「なぜって……今はお前にお礼をしてるわけだし……気持ち良くなってくれたら嬉しいなって」

 手探りで触れた先は、黒波の腰骨の辺りだった。ぴく、と腰を震わせ、少し苦しげな困り顔で俺を見つめていた黒波だが……観念したようにため息をつき、「ああ……ええよ」と呟く。

「だが、嫌やとは思わへんのか? こんなことをして……」
「んー……思わない、かな」
「なぜや。男の魔羅まらを触らされるのは嫌やろう」
「なぜって、黒波のだし……嫌じゃないよ」
「……」

 上目遣いにそう言うと、黒波はうっと詰まったような顔をして、薄暗がりの中でもわかるくらい頬を紅潮させてゆく。もぞもぞと布団の中で不器用に黒波の帯を緩め、着物をはだけさせてゆくと……。

「うぁ……おっきぃ……」

 下履きなどは履いていないらしく、開かれた着物の裾の間から、猛々しい剛直がそそり立つ。手探りのまま、隆々と勃ち上がった竿に手を添えてみると、黒波は「は、あっ……」とたまりかねたようなため息を漏らした。

 先端にはすでにとろりと濡れた感触があり、それが俺をさらに昂らせた。とろみを先端に塗り広げるようにしながら包み込み、親指で鈴口を柔らかく辿ると、黒波は腰をびくん! と震えさせた。

「……っ……陽太郎……」
「すごい、大きい……すごいね」
「うっ……ぁ……」

 尖った切っ先をやわやわと撫でながら、くびれた部分を手のひらで包み込む。さらにとぷんと溢れた体液を馴染ませながらゆっくり扱くと、黒波は「あっ……はぁ……っ」と色香溢れる声を漏らし、縋るように俺を抱きしめた。

「……黒波、きもちいい? すごい、もっと硬くなった」
「っ……い、すごく……はぁっ……」
「そっか、よかった。……こっちも、好き?」
「っ……ぅっ……」

 ずっしりとした陰嚢のほうへもう片方の手を伸ばし、柔らかく揉みしだく。すると、黒波は素直に頷いた。

 初々しく震えながら快楽を享受する黒波が可愛くて可愛くて、たまらない気持ちになってくる。再びディープキスを交わしながら、夢中で黒波を愛撫した。

「陽太郎っ……も、出てまいそうやから……っ……」
「出して。そういうときは、イクって言うんだ」
「いく……?」
「そう。……キスしよ? どこを触られるのがいい?」
「ぁ、あっ……ァっ……」

 ひとつひとつ問いかけながら、俺は黒波の良いところを探っていく。俺の問いかけに素直に答え、俺の愛撫によって絶頂へと追い詰められてゆく黒波が愛おしくて、俺の手つきもだんだん遠慮がなくなってゆく。

「ァっ……い、いくっ……いっ……く……!」
「わっ……」

 やがてとうとう限界に達してしまったらしい。手のひらに包み込んでいた黒波の先端から、びゅるるっ……! と白濁が迸った。

 熱い体液と、青くいやらしい匂いに、ぞくぞくと興奮させられる。きゅぅうんと腹の奥が切なく疼き、この逞しいペニスで中を思い切り乱してほしいと身体が騒ぐ。……だが、黒波は鬼だ。鬼を相手にセックスをしてしまっていいものだろうか……と、迷いが浮かぶ。

「はぁっ……は……はぁ……」

 吐精して放心状態の黒波の隣で身体を起こし、ねっとりと濡れた手のひらをテッシュで拭う。そんな俺を見上げる黒波の金眼には力がなく、とても無防備だった。

「気持ちよかったか?」
「……ん……うん……」
「へへ、よかった。……じゃあ、今日はもう寝、」
「待て」

 手を洗おうかと思い、ベッドから立ち上がりかけた俺の手首を、黒波が掴む。そしてそのまま強い力で引っ張られ、ベッドに逆戻りさせられてしまった。

 目を見張る俺の上に、黒波がのしりと跨ってきた。まだどこか気だるげな表情だが、それがやけに艶っぽく妖艶だ。乱れた黒髪をかき上げて、黒波は俺の顔の横に手をついた。

「え、黒波……?」
「やり方はようわかった」
「へっ、なんの?」
「おかげで、どうやれば陽太郎が気持ちようなれるんか、わかった」

 にぃ……と唇の片端を吊り上げ、気怠げな色香を漂わせた黒波が笑う。
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