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王女と公爵令嬢とエルフからの救援要請
休息
しおりを挟むミーシャの髪を乾かすこと数分。
悶えから脱出し、もう十分に乾いたと思いミーシャに声をかけるが反応がない。
「ミーシャ?」
「……すぅ……すぅ……」
「……寝ちゃったか」
さっきも眠そうにしてたから、限界が来たんだろう。
とりあえず、このまま寝かせても良いのかを愛花に聞かなければ。俺のせいで髪が傷んだだのなんだのと言われても困るし、俺もそんなことにはさせたくないからな。
「愛花、ミーシャが寝ちゃったんだけどもうベッドに運んでも大丈夫か?」
「あら、寝ちゃった?あぁでも、ミーシャちゃんは髪が短いからそのまま寝かせていいわよ」
「了解」
それじゃあ、ミーシャをお姫様抱っこして、と。
「軽っ!?普段からしっかり食べてるのにこんなに軽いのかよ」
つい口に出てしまうくらいには軽い。
滅茶苦茶軽い。
そりゃあもちろん出会った時よりは重くなってるけども!それでもまだ軽いよ!それとも十歳ならこれくらいが普通なのだろうか……?
残念ながら俺は十歳の子供の平均体重を覚えているわけではないので分からないが、少なくともこの頃の俺はもうちょい重かった。
「よっ、と。ここでいいかな……」
寝かせたのはベッドの中心より。愛花の話によれば俺はベッドの真ん中で寝なければいけないらしいし、ミーシャは俺の隣がいいらしいので必然的にこうなる。
ああ、俺はベッド以外で寝るという選択肢は初めから考えていませんでした。
だって相手はあの愛花に可愛い可愛い子猫二人だぞ?勝てると思うか?無理だろ?
そんなわけで、一緒のベッドで寝るということを受け入れることにしましたー!
……幼馴染み相手に性欲が爆発しないことを祈る。
言っておくがあの二人は対象じゃないからな!?
サーシャはともかくミーシャはまだ早い!!
「うぬゅ……おにぃ……ちゃん」
激しくどうでもいいことを考えていたらミーシャが寂しげに呻いた。
一人で寝ているということを体が察知したのだろうか、誰かを探すように手を動かしている。
「ちょっと待っててな。すぐ戻ってくるから」
左手で手を繋ぎ、右手で頭を撫でてやると安心した顔になった。
……普段は元気いっぱいで戦闘もそつなくこなしているが、まだまだ子供だ。これからも、もうちょっと甘えさせてやらないと。
もちろんサーシャだってそうだ。いつもしっかりしていて俺達をサポートしてくれているが時たま寂しそうな顔を見せるのを俺と愛花は知っている。やっぱり親と会えないのが辛いのだろう。
この依頼が終わったら、二人の里帰りでもするか。
俺も一応主人として挨拶しておきたいし。
だが、とりあえず今は俺も愛花に甘えたって罰は当たらないだろう。
・~・~・~・
「次は俺か?」
「ええ。丁度今サーシャちゃんが終わったところよ」
サーシャに目を向けてみると髪が綺麗に整っており、普段の髪を下ろすスタイルと同じでも何か違って見える。
これが愛花の特技というものか……。
「私だけじゃなくて、女の子ならある程度はできるわよ」
心を読むのはやめてほしい。
「でもダメージ受けているのが一人いるぞ?」
愛花が目線を向けたその先には、
「うぅ……。私、女の子なのに出来ません……」
と、落ち込むサーシャの姿が。
さあ、愛花さん!どう慰める!?
「大丈夫よ、これから覚えていけばいいんだから。私だってサーシャちゃんの年ぐらいの時はこんなに出来なかったわ。こういうのは経験だから、これから出来るようにしましょう?ね?」
「愛花様……。はい!私頑張ります!」
「うん、その意気よ。でも今はミーシャちゃんも寝てるしもう少し静かに、ね?」
「あっ……。はい、すみません……」
「ふふっ。それじゃあもうベッドにいっていいわよ。先に寝ててもいいからね?」
「分かりました」
そのままサーシャはベッドに向かっていった。
……おおぉぉ。凄い。あの落ち込み様から見事に逆転して見せたよ!俺だったら慰められずに余計悪化しそうな場面だったのに。流石と言うべきか。
「ほら、海斗で最後よ。ここ座って」
「へーい」
ようやく俺の番らしい。
もう乾いている気がしないでもないが、やってくれるというのだからやってもらおう。
「ほとんど乾いちゃったわね。でもやるといったからにはやるわよ。このくらいの温度でいい?」
「ああ、大丈夫だ」
「オッケー。じゃあじっとしててね」
「わかった」
愛花の指が俺の髪に触れる。
俺の天然パーマでちりちりになっている髪の毛がゆっくりほぐされていく。
この感覚、ホントに気持ちいいんだよなぁ。小さい頃に母さんにやってもらったことを思い出す。あの頃は俺も反抗期なんて来てなくて素直にしてたんだよな。それが結局、反抗期でろくに親孝行出来ないまま死んで異世界来ちゃったし。
家族の皆、元気にしてるかなぁ。
「どうしたの?なんだか憂い顔してるけど」
「んー?母さん達に親孝行出来ないまま死んじゃったなーって思ってさ」
「そう、ね……。たくさん迷惑かけて、何も返せないままこっちに来ちゃったわね……」
愛花も表には出さないが同じことを考えた事があるようだ。
もしかして、シューバの宿にいた頃に二人が寝たあとで考えていたのかな?
「心配してるかなぁ」
「そもそも私達って遺体になっているのかしら?」
「……言われてみればそうだな」
何せ意識も体も元の世界と同じものだ。
日本では俺達の体は残ってないんじゃないか?
「ま、その辺は今度またアークに会ったら聞きましょう」
「アークねぇ。あいつ、俺達のこと見てたりするのかな?」
「さあ?でもあの神様は茶目っ気あったから暇なときに見てたりするんじゃない?」
「ははっ。そうかもな!」
あいつなら、俺達のことを見て面白おかしく笑っているかもしれん。
……それはそれでなんか腹立つな。
今度あったら問い詰めよう。
「ええ。さ、終わったわよ。ベッドにいきましょ」
「おう。髪やってくれてありがとな」
「どういたしまして」
感謝って大事だよね。
・~・~・~・
ベッドを見ると、既に寝息を立てている美少女二人がいた。二人とも真ん中あたりで寝ているので俺達は隅のほうになりそうだ。
いくらなんでもこの二人を動かして俺に真ん中にいけとは愛花も言わないだろう。
「すっかり寝てるわね」
「仕方ないだろ。俺達が異常なだけで普通はもうとっくに寝てる時間だぜ?」
現在時刻は午後十一時過ぎ。この世界の基準でいけばかなりの夜更かしである。俺達からすればまだまだ活動時間ではあるが。
「そういえばそうだったわ。この世界は寝るのが早いんだった」
「本当に早すぎだよな」
「あなたは遅すぎだけどね。いくら夜更かしでも朝五時に寝るやつなんてそうそういないわよ」
「あれは反省してる」
正直にいってあれは俺も辛かった。次の日まで眠気がとれなかったし、休日も全部潰れた。その事件からは出来る限り二時までに寝るようにしていた。
今では一番遅くて十二時だけどな。
「ならいいけど。さて、もう寝ましょうか。私がサーシャちゃんの隣にいくから、海斗はミーシャちゃんの隣ね」
「了解」
それぞれ寝る位置まで移動したことを確認して魔道具の灯りを消す。
「ねぇ、海斗」
「何だ?」
「二人のこと、どう思ってる?」
「どうって、そりゃ、大切な家族の一員だと考えてるよ」
この世界で家族と呼べるのは今のところこの愛花とサーシャ、ミーシャの三人だけだ。もう少ししたら一人増えるかもしれないが今はこれだけだ。
「そっか」
「ああ。急にどうしたんだ?」
「この前ね、二人に聞いてみたのよ。今一番怖いことはなにかって」
「ふむ。それで?」
「二人ともね、私達に捨てられることが一番怖いんだって」
「それは、また……」
日本で普通に暮らしていれば滅多に聞かないことだ。
「でも、この世界では平気で人が捨てられる。だから捨てられるのが怖いんだって」
「……そうか」
俺達は、二人を捨てる気なんて一ミリも無いんだけどな。
「ええ。だから二人に無駄な心配をさせないように、私達はもっとしっかりしないと駄目よね」
「確かにな。だが、頑張りすぎても駄目だ」
「それは、そうだけど」
「だから、今はゆっくり休むべきなんじゃないか?頑張るのは明日からでいい」
「……分かったわ」
理解してくれたようだ。
人は頑張らないと成長しないが、頑張りすぎてもまた問題だ。その中点を保つというのは実は結構難しかったりする。
でも今は、さっきもいった通り休んだ方がいいだろう。
「……ミーシャを抱き枕にするか」
「あら、なら私はサーシャちゃんを抱き枕にするわ」
「……ははっ」
「……ふふっ」
どうでもいいこと争っていて、笑ってしまう。
だがこれもまた休みのひとつ、かな?
それでは、
「「お休み」」
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