Blind

Lucy

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「ごめんなさい」

私はこの言葉が大嫌いだ。
この言葉を使えば何もかも許される
そんな安直な考えが浮き出る万能の言葉。

しかし、この言葉の脆さを知っているだろうか?
使えば使うほど言葉が意味をなさなくなる。
意味ある言葉がただの記号に成り下がる。

では使わばければ良いのではないか

現実はそううまくいかない

この言葉は日常の必需品でもある
特に我が国、日本では使わざるを得ない状況が多い。

例えば、こんな風に。


ドスンッ

「おいっ!いってぇな」

「ご、ごめんなさい」

「ちっ危ねぇだろうが
って出来損ないの姉かよ」

「....ごめんなさい」

明らかに悪いのは余所見しながらぶつかってきた男子生徒なのだがこの場合謝った方が遺恨なく物事が進む。

因みに、出来損ないというのは私のことだ。

私には一つ下の妹がいる。
一つ下といっても私は4月生まれで妹は3月生まれだから同じ学年になるのだけれど。

妹は美少女で協調性、人格、愛らしさなどどこを取っても完璧なクラスの中心にいるタイプだ。
その点私は根暗で地味で教室の端にいるようなクラスのお荷物系女子だ。

だから、出来損ないの姉と言われている。

流石に学校側も配慮して(?)同じクラスではないが、同じ学年の姉妹というだけで目立ってしまう。私は目立ちたくなどないのに。

教室についた私はいつも通り端の席に座り読書をする。9月といえどもまだまだ残暑が厳しい。暑い暑いと叫ぶ蝉。冬の寝床を探し歩く毛虫。
それらを見るように誰も私に近づかない。どこかバカにしたような、蔑むような目で見てくるのだ。視線恐怖症にならなかったのは奇跡とも言えるだろう。
私は空気。私は空気。私は空気。

「おねぇちゃーん!」

ああ、来た。

「どうしたの?」

「数学の教科書忘れちゃったー」

「また?気をつけるのよ、はい」

「ありがとーお姉ちゃん」

ふー、

うちの妹かわいい…

意外にも思われるかもしれないが姉妹仲は良好で、話すこともよくあるし貸し借りもする。私は妹のことを愛している。(もちろん姉妹愛だ)
だが、あまり教室に来て欲しくはない。

「西條さん、姫那ちゃんに対する態度なってないんじゃない?」

「は、」

「いくら姉妹といえど、偉そうですわ!」

「え、」

「だいたい出来損ないなんだからさ、もっと姫那ちゃんを敬いなさいよ!」

「いや、」

姫那が来た後はいつもこんな感じでたぶんファンクラブの人達なのだろう。
姉妹関係にまで口を出されたらたまらないと思い反撃を試みるが、無念。敵は3人。口をはさむ隙すら与えられない。
言いたいことだけいいすぐ去っていく。
まぁ、すぐに授業が始まるからなのだろう。
私は頭をスリープモードに切り替える。


つまらない授業を終え、昼食の時間。いつもは弁当だが、今日は食材がなく作れなかったため食堂へ行く。大方妹もいるであろう。学校では遠くから眺めるくらいが丁度いい距離感だ。
食堂に着くと私への視線が刺さる。やはり人が多いとこは嫌だな。

食堂はいつも人が多めだが今日はさらに多い。よく見るとお弁当を持ってここにいる人もいる。
多分、妹と奴らがいるんだろう。

キャー
姫那ちゃーん!!
颯さまー!!
奏くーん!!
……


ああ、やっぱり。
妹とその仲間達だ。

会いたくもないキラキラ集団がこっちに向かっている気がする。

「お姉ちゃん!!」

かわいい

「西條、お前1人か?」

yesと言いたくない。

「そうなの!?一緒食べよう!!」

可愛らしく誘ってくる妹に絆されそうだが、我に帰る。

「遠慮します」

こいつら(妹を除く)と食べたら美味しいオムライスも不味くなりそうだ。

さっさと一人用の席に座る。
あいつらはみんな生徒会執行部とその関係者だ。下手に関わったら今日の2時間目休みのようなファンクラブ突撃どころではすまないだろう。

妹の取り巻きたちは私の対応に不満があるようでなにかごちゃごちゃ言っているが聞こえない。
唯一妹の残念そうな声だけが聞こえる。妹には申し訳ないが、断れてよかった。

そして、5・6限の授業を終えそのまま帰る。
帰ったらいつ妹が帰ってきてもいいように夜ご飯を作り、洗濯を済まし、お風呂の準備をする。両親は共働きで帰ってくることはほとんどない。帰ってきてもあまり変わらないが。

愛する妹のためならこの程度はしなくては。

妹を先に風呂に入れ先にご飯を食べさせる。

全て妹優先だ。

それからお風呂に入り、冷めたご飯を食べ、また、今日のようなことがあってはいけないと思い妹の学校の準備を確認する。
そして1時に就寝。

これが私の日常。私の全て。私の世界。妹を中心に回り、妹に尽くす。
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