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クズな婚約者に婚約破棄され事実無根の噂を流された私ですが、大貴族の公爵様だけは私を信じてくれました
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「オリアナ。お前との婚約を破棄させてもらう」
「えっ?」
唐突に告げられたそれに、私は動揺を隠すことができず口に出してしまった。
嘘であってほしい、そう願ったが、彼――フィンの表情は真剣そのものだった。
「俺はお前の妹と再び婚約を結びたいのだ」
「どう、して……」
開いた口が広がらない。確かに妹のアリスは私よりも可愛らしくいい子だ。
でも、あの優しいアリスが姉である私の婚約者と婚約を結ぶとは到底思えない。
もし、仮にアリスがフィンと婚約するのだとしたら、フィンが何かやったに違いないだろう。
「どうしてって、わかるだろう? お前と違い、アリスは扱いやすい。人を疑うことを知らないからな」
「……フィン! あなた、まさかっ!」
「なんだ? 俺はそんな怖い顔をされる謂れはないぞ。騙されるやつが悪いのだ」
「最低っ!」
「罵りたいなら罵ればいいさ。リディア王国にもはやお前の居場所はない」
……フィンは本気だ。さっきの言葉は、脅しでもなんでもない。
本当に、この国に居場所はないのだろう。そうなるようにフィンが何かしたのだ。
きっと、アリスと婚約するのはそのついでか何かに違いない。
……何にせよ、早急にこの屋敷から――いいえ、この国から出て行かなければ。
「じゃあな、オリアナ。もうお前と会うことはない」
「……こっちのセリフよ」
こうして、私は最悪の形で婚約を破棄された。
数時間後。私は荷物をまとめるため、実家を訪ねていた。が、私の荷物はすでに処分されていた。
どうやら、両親は私がいた痕跡を消そうと躍起になっているらしい。
屋敷の使用人たちは私の姿を見つけても、近づいては来なかった。
しかし、
「最低です。私はあなたみたいなどうしようもないクズを姉と慕っていたなんて……。あなたの顔なんて、二度と見たくなかった。早く、この家から出て行って」
と、アリスだけは面と向かって毒を吐いてきた。
はは……、こうも嫌われているとは。本当、アリスは人を疑うことを知らない箱入り娘だ。
私、何も悪いことしてないのになぁ。
でも、国民が私に向ける視線はすべて負のもの。
ここに来るまでに、心ない言葉を何度言われたことか。とてもじゃないけど、耐えられない。
まだ手を出してこないだけマシかもしれないけど……。
……行こう。長居は無用だ。早くこの国から出て行きたい。出て行かなければ……。
そう思いながら、王都の門前までやってきた。
そこには、何やら馬車が止まっていた。商人が使うようなものではない。貴族のものだ。
きっと、私目当てに違いない。遠回りになるけど、別の門から外に出よう。
そう思ったのだが……。
「オリアナ! 僕だ、エリオットだ!」
「エリオット、様……?」
私を見つけたのか、彼は私の元へと駆けてくる。が、私は駆け足で逃げた。
合わせる顔がないのだ。私は彼の求婚を断って、フィンと婚約した。
だから、こんなところ……。
「待ってくれ! 僕は君の味方だ! 前に言ったじゃないか! 何があっても、君を守ると」
それは、ただのプロポーズだ。彼の求婚を断った私には適応されるわけがない。
「僕は君が好きだ! 今でも! 君の悪い噂は、僕が嘘だと公言する。だから、逃げないでくれ!」
「…………」
「大丈夫。僕は、あいつみたいに君を裏切る真似は絶対しないから!」
――それからは、何とか逃げようとする私と必死に止めようとするエリオットによる茶番だった。
先に根負けしたのは私。逃げたらバチが当たりそうなぐらい好意を向けられたのだ。
そのあとは彼の屋敷に連れて行かれて、しばらくの間、お世話になることになった。
彼の両親は私のことを歓迎してくれて、やっぱりエリオット様の両親だな、と思った。
もちろん、それだけじゃない。私の噂を払拭するためにエリオット様は尽力してくれた。
そのおかげで、思ったよりも早く収束して――次はフィンが悪者扱いされるようになった。
それからしばらくして、フィンがエリオット様の屋敷を訪ねてきたのだが……。
「帰ってくれ。オリアナは僕のものだ」
と、いとも簡単に追い返してしまった。
それはとても嬉しいことだけど、また違う意味で私は頭を悩ませることになるのだった。
「私、しばらくは結婚とかしたくなかったんだけどなぁ」
【終わり】
「えっ?」
唐突に告げられたそれに、私は動揺を隠すことができず口に出してしまった。
嘘であってほしい、そう願ったが、彼――フィンの表情は真剣そのものだった。
「俺はお前の妹と再び婚約を結びたいのだ」
「どう、して……」
開いた口が広がらない。確かに妹のアリスは私よりも可愛らしくいい子だ。
でも、あの優しいアリスが姉である私の婚約者と婚約を結ぶとは到底思えない。
もし、仮にアリスがフィンと婚約するのだとしたら、フィンが何かやったに違いないだろう。
「どうしてって、わかるだろう? お前と違い、アリスは扱いやすい。人を疑うことを知らないからな」
「……フィン! あなた、まさかっ!」
「なんだ? 俺はそんな怖い顔をされる謂れはないぞ。騙されるやつが悪いのだ」
「最低っ!」
「罵りたいなら罵ればいいさ。リディア王国にもはやお前の居場所はない」
……フィンは本気だ。さっきの言葉は、脅しでもなんでもない。
本当に、この国に居場所はないのだろう。そうなるようにフィンが何かしたのだ。
きっと、アリスと婚約するのはそのついでか何かに違いない。
……何にせよ、早急にこの屋敷から――いいえ、この国から出て行かなければ。
「じゃあな、オリアナ。もうお前と会うことはない」
「……こっちのセリフよ」
こうして、私は最悪の形で婚約を破棄された。
数時間後。私は荷物をまとめるため、実家を訪ねていた。が、私の荷物はすでに処分されていた。
どうやら、両親は私がいた痕跡を消そうと躍起になっているらしい。
屋敷の使用人たちは私の姿を見つけても、近づいては来なかった。
しかし、
「最低です。私はあなたみたいなどうしようもないクズを姉と慕っていたなんて……。あなたの顔なんて、二度と見たくなかった。早く、この家から出て行って」
と、アリスだけは面と向かって毒を吐いてきた。
はは……、こうも嫌われているとは。本当、アリスは人を疑うことを知らない箱入り娘だ。
私、何も悪いことしてないのになぁ。
でも、国民が私に向ける視線はすべて負のもの。
ここに来るまでに、心ない言葉を何度言われたことか。とてもじゃないけど、耐えられない。
まだ手を出してこないだけマシかもしれないけど……。
……行こう。長居は無用だ。早くこの国から出て行きたい。出て行かなければ……。
そう思いながら、王都の門前までやってきた。
そこには、何やら馬車が止まっていた。商人が使うようなものではない。貴族のものだ。
きっと、私目当てに違いない。遠回りになるけど、別の門から外に出よう。
そう思ったのだが……。
「オリアナ! 僕だ、エリオットだ!」
「エリオット、様……?」
私を見つけたのか、彼は私の元へと駆けてくる。が、私は駆け足で逃げた。
合わせる顔がないのだ。私は彼の求婚を断って、フィンと婚約した。
だから、こんなところ……。
「待ってくれ! 僕は君の味方だ! 前に言ったじゃないか! 何があっても、君を守ると」
それは、ただのプロポーズだ。彼の求婚を断った私には適応されるわけがない。
「僕は君が好きだ! 今でも! 君の悪い噂は、僕が嘘だと公言する。だから、逃げないでくれ!」
「…………」
「大丈夫。僕は、あいつみたいに君を裏切る真似は絶対しないから!」
――それからは、何とか逃げようとする私と必死に止めようとするエリオットによる茶番だった。
先に根負けしたのは私。逃げたらバチが当たりそうなぐらい好意を向けられたのだ。
そのあとは彼の屋敷に連れて行かれて、しばらくの間、お世話になることになった。
彼の両親は私のことを歓迎してくれて、やっぱりエリオット様の両親だな、と思った。
もちろん、それだけじゃない。私の噂を払拭するためにエリオット様は尽力してくれた。
そのおかげで、思ったよりも早く収束して――次はフィンが悪者扱いされるようになった。
それからしばらくして、フィンがエリオット様の屋敷を訪ねてきたのだが……。
「帰ってくれ。オリアナは僕のものだ」
と、いとも簡単に追い返してしまった。
それはとても嬉しいことだけど、また違う意味で私は頭を悩ませることになるのだった。
「私、しばらくは結婚とかしたくなかったんだけどなぁ」
【終わり】
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