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第一章[ミリゴ編]
再開
しおりを挟む少年Bは、おれが大蛇に襲われた時と同じ様に、神々しい景色に見とれていた。
やっと見つけたぜ。
俺は先程からずっと走りっぱなしだった足を止める、同時に口から安堵の息が漏れた。
セリヤはというと少年Bの姿を見るやいなや更にスピードを上げ、その勢いのまま後ろから抱きつき、
「君!大丈夫!?」
そう叫んでいた。
はぁ、お前が大丈夫かよ。
こんな事前にも言った気がするぜ。ほら、少年Bがさっきからお前の無い胸の中で暴れてるじゃねぇか、羨ましい野郎だな。
俺は頭の中でそう呟いた。
「とりあえずこれで一件落着だな。」
本当に無事で良かった、今日何故か森にスライムがいなかったのも、きっと神様が俺達を助けてくれたんだろう。
俺はセリヤと少年Bの元へ歩いていった。
こんな所にずっと居るのも嫌だしな、何より早く少年に無事だった事を報告したかった。
しかし、やはり人生というのはそう思い通りに行かないものだ。
俺はこの時忘れてしまっていた。ヤツの存在を。
異変に気付いたのは二人に声を掛けようとした寸前だった。
急に周りの茂みから視線を感じ出したのだ。
俺は直ぐにその事をセリヤに言おうとした。
しかし、背中に深い切り傷を負ったヤツは俺がセリヤに言う前に、茂みから飛び出してきた。
「……ッ!」
セリヤは大蛇を見るやいなや、
「君は後ろに下がってて!」
少年Bを庇うように立ち、背中にさしてあった剣を抜いた。
俺も直ぐにそのセリヤと同じ様に立ち、手に持っていた杖を大蛇の方に向けた。
「テツヤ、私がアイツと近距離でやり合うから、合図した時に、魔法を放って!」
セリヤは俺にそう言い残すと、返事も聞かずに今にも飛びかかって来そうな大蛇に向かって剣を構え、
「はぁぁ!」
自分に気合いを入れる様にそう叫ぶと、大蛇に向かって走って行った。
おいおいちょっと待ってくれよ!
こっちはただでさえ目の前の相手にトラウマ抱えてるって言うのに!
「はぁ……」
俺は額から流れて来る汗を拭いながらそう呟く。
仕方ない、今は緊急事態だしな。
今回は、セリヤの作戦に乗ってやる事にした。
少年Bを守らなくちゃだしな。
俺は少年Bを守りながら、セリヤの指示を待つ事にした。
大蛇に向かって行ったセリヤはというと、さっきからずっと防戦一方だった。
相手からの攻撃は全て避けたり防いだりはしているが、これを長く続けるには相当な体力が必要になる。
その体力を恐らくセリヤは持っていない。
クソったれ……!俺は杖を構えて魔法を打とうとする。
このままだとセリヤが危ないと思った。
しかし、呪文を唱えようとした時、セリヤは汗だらけの顔をこっちに向け、「絶対繋ぐから!」そう言った。
俺はセリヤのこのセリフで、不意にアイツが冒険者になった理由を思い出した。
「ったくよ……」
コイツと会ってまだ日が浅いが、お前は大した奴だよ。
そうだよな、こんな所で負けてるようじゃ、ゴブリンキングには勝てないよな。
「俺はお前を信じるぞ」
俺は未だに防戦一方なセリヤを見ながらそう言い、杖を下ろした。
多分俺はさっきまでセリヤの事を信じ切れていなかったんだろう。
でも、さっきのセリフを聞いて俺はアイツを信じる事が出来た。セリヤなら絶対繋いでくれるってな。
そしてセリヤも俺の想いに応えるように、大蛇の大振りな攻撃を避けると、この瞬間を待っていたかのように不敵に笑い、
「はぁぁぁ!」
大振りな攻撃を空振り、前につんのめる大蛇の腹に、渾身の一撃を叩き込んだ。
「しゃぁぁ!?」
その攻撃を受けた大蛇は身体から鮮血を吹かせ、悲鳴を上げた。
そしてその瞬間、セリヤは俺にこう叫んだ。
「今よテツヤ!」
やっとかよ……!
俺は杖を大蛇の方に向け、手に力を集中させる。
「草木を燃やせ――」
そして、手に集まった全ての力を杖に送り、こう叫んだ。
「ファイアボールッッッ!!!!」
その瞬間、杖の中に溜まりに溜まったエネルギーが火の玉に変わり、勢い良く大蛇の方に飛んでいく。
そしてその火の玉は見事に大蛇に命中し、
「しゃァァァァァァ!?」
技名からは想像もつかない様な爆発を起こした。
やったか……?
俺は爆発の煙で立ち込めた正面を息を呑みながら凝視する。
やがて煙が風によって流され、視界が晴れた。
大蛇の姿は無くなっていた。俺はあの大蛇を一撃で吹き飛ばしたのだ!
よっしゃ!見たかセリヤ!
俺は大蛇を倒した事を確認すると、セリヤに向かって渾身のドヤ顔をした。
そんな、超絶かっこいい絶対的主人公の俺に対してセリヤは、
「完璧だったわテツヤ!」
背中に剣を納めると、両手を広げて俺の方に走って来た。
お?なんだなんだハグか?しっかたないなぁ!俺も杖を持っていない方の手を(仕方なぁ~く)広げてやった。
しかし、セリヤは片手を広げた俺を通り過ぎ、俺の後ろで隠れていた少年Bを抱きしめ、
「大丈夫だった?怪我は無い?」
笑顔でそう言った、目尻に涙を浮かべてだ。
コイツは少年Bの保護者かよ。はぁ……ハグ、期待したのに。
俺は抱き締められている少年Bに羨ましい視線を送っていた。すると――
[レベルアップ!貴方はレベル8になりました。]
目の前にレベルアップを知らせる文章が表示された。
お、レベルが上がった。
とりあえずこれで本当に一件落着ってこった。
空に浮かんでいる太陽は、俺たちの勝利を祝福する様に、燦々と光を放っていた。
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