【完結】転生したのは俺だけじゃないらしい。〜同時に異世界転生した全く知らない4人組でこの世界を生き抜きます(ヒキニートは俺だけ)〜

カツラノエース

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第1章1部【始まりの街〜ラペル〜】

第4話【報酬ゲット!〜1日の終わり〜】

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 メディー牧場でのモーウのう○こ回収お仕事を終えた俺たちは、冒険者ギルドに戻ると、受け付けカウンターで依頼主である牧場主のテオさんにサインを書いてもらった紙を渡した。

「お疲れ様でした、報酬の銅貨です。」
「あぁ、ありがとう。」

 受け付けのお姉さんは、テオさんのサインが書かれた依頼の紙に確認のハンコを押すと、俺の手に手渡しで報酬である銅貨5個を渡した。
 報酬額が少ないからなのだろうか、こういうのって袋に入れて渡されると思ってたんだが。

「やったわよ……!これでこの世界でも生きていけるわ……!」
「はは、それは大袈裟じゃないか?」「でもお金だよ!ギャンブルしたい!」

 まぁだが――そんな事はどうでもいい。
 銅貨を見た瞬間からガヤガヤと嬉しそうにはしゃいでいる3人を見ていると、俺はなんだか今日の仕事を押し付けられたというのに、暖かい気持ちになった。

 今まで働いた事が無かったからこんな気持ちになるなんて知らなかったぜ――もしかすると案外俺、仕事に向いているタイプなのかもしれない。
 人間働かないと生きていけないという状況になると、意外に動けるものだ。
 (まぁ結構疲れたがな。)

 するとそこで俺は、何故かそんな俺たちに受け付けのお姉さんがなんだか哀れな物を見るような、そんな視線を向けている事に気付いた。

「なんだ?何かおかしいか?」

 確かに周りの冒険者は報酬を受け取っても感情をあまり表に出てないもんな。
 俺たちみたいにバカのように喜んでるヤツらは、珍しいのかも知れない。
 しかし、そうでは無いらしく、受け付けのお姉さんは言いづらそうな表情でこう言った。

「あの……銅貨の価値――分かってます?」
「いや、詳しくは分かっていないが?――どのくらいなんだ?」
「ここに居る皆さんが、一食食べれるくらいの価値です……」
「「え?」」

 そこで俺たち全員の動きが止まる。
 い、一食って……俺あんなに頑張ったんだぜ……?う○こだらけになりながらあんなに頑張ったんだぜ……?
 そ、そんなのってねぇよ……

「じゃあ、今日泊まる宿代は……?」
「無いって事になるな……」
「マジか」「えぇ!?」

 いや、正直まさかそんなに報酬が安いとは思って無かった。
 どおりで受け付けのお姉さんがこの依頼を見せる時に乗り気じゃ無かった訳だ。

 確かにモンスター討伐みたいに命の危険は無いから安いのは仕方ないかもしんないけどよ――それでもこれは……

「じゃあもうひとつ武器を使わない依頼を探してみましょ」
「いや、俺も一瞬そう考えたが無理だ――外を見てみろ。」
「――ほんとね。」

 太陽はほぼ沈み、辺りは暗くなっている。
 日本のように街灯が設置されてる訳でも無いから、おそらく今から外に出て出歩きでもしたらここに帰って来れるかどうかも怪しい。
 今から依頼を受けるのは流石にリスクがあった。
 (もう昼時のように冒険者はほとんど居なくなってるしな。)

 だが――このままじゃ俺たちは野宿確定だ。
 今すぐにでもお金を稼ぐ必要があった。

「どうしようか――」
「あ、あの、」
「ん?」

 そこで、さっきからずっと俺たちの会話を聞いていた受け付けのお姉さんが声を掛けてきた。

「もし良かったら――」

 そこでなんと、お姉さんが、泊まるところが無いなら冒険者ギルドに泊めて上げても良い。そう提案してきたのだ。
 正直予想外だったぜ、まさかこの人が救いの手を差し出して来るとは。

「本当に良いのか!?」
「是非そうして貰いたいわ!」

 そして当然――俺たちはその提案に食らいつく。
 こんなの俺たちに取ってプラスしか無いからな。

「はい、ではもうギルドを閉めますので、その後パンでも持って行きますね。それまでゆっくりしていてください。」
「マジかよ!」
「優し過ぎるわね……」
「天使だな……」「うんうん!」

 その過剰な優しさは、何か裏があるんじゃないか、そう疑う程だった。

 ---

「はい、皆様で分けてください。」
「本当にありがとな。」
「助かるわ。」

 それから俺たちはギルド内にある椅子に座り、軽く雑談をしながら待っていると、入り口の鍵を閉め終わった受け付けのお姉さんが、4つに切り分けられたパンをお皿の上に乗せ、それを運んで来た。
 
「いえいえ、こんなものしか無くて申し訳ないです。」
 可愛い顔でぺこりとお辞儀をするお姉さん。
 マジで頼む、結婚してくれ。
 (――でも本当になんでここまで優しいんだ?)

「なぁ、別に疑ってる訳じゃないんだが、なんで俺たちにこんなに優しくしてくれるんだ?」
「あ、それはですね――さっき申し訳ないことをしてしまったからです。」
「申し訳ないこと?」

 俺はお姉さんが発した言葉をそのまま繰り返す。
 申し訳ないことをしてしまったって――お姉さん、なんか俺たちにしたか?
 そう考えるが、やはり思い当たる節は無かった。

「はい、それは事前に皆様に銅貨の価値を説明しなかったことです。」
「あ、そういうこと?」
「はい、本当に申し訳ありませんでした!」
「いやいや、頭上げてくれ!」

 この子、結構責任感じるタイプなんだな。
 別になんとも思って無いのによ。

 確かに銅貨の価値が思ったよりも低かったのは事実だが、それは別に事前に説明しなかったお姉さんの責任じゃなくて、知らなかった俺たちの責任じゃん?

 しかし、そこからお姉さんの話を聞くと、なぜこんなに謝って来たのかが分かった。

 実は以前に、同じような金銭トラブルが起きたそうなのだ。
 その時は単純に冒険者側が報酬の欄を読み間違えていたらしく、悪いのは100冒険者なのだが、冒険者も冒険者で、命を掛けている。

 だから当然「そうだったのか」では済まず、その時に怒った冒険者から暴力を受けたんだと。
 その後その冒険者は依頼を受けられなくなった(要するに出禁って訳だ)そうなんだが、それ以来お姉さんは金銭トラブルに気を付けていたらしい。

「そうだったのか……」

 そりゃ、目の前で落胆する俺たちを見たら焦るよな。
 また暴力を受けるかも知れないって。

 でも、俺はもちろん他の3人も怒るどころかお姉さんを慰めていた。

「すいません……受け付けの私がこんな弱音を冒険者様に吐いてしまって。」
「いやいや、良いって。ため続ける方が身体に悪いしな。」

 俺なんて、毎日パソコンの画面に向かって暴言吐いてたぜ?

---
 
「話を聞いて頂き、本当にありがとうございました。」
「おうよ」
「じゃあ、おやすみなさい。」

 その後、俺たちに溜めていた物を吐いたおかげで楽になったのか、表情が若干明るくなったお姉さんは、これ以上話し続けるのは俺たちに悪いと思ったのか、そう言うと早めに切り上げて行った。

「じゃあ俺たちも早めに寝るかね。」
「明日もお金を稼がなきゃだしね。」
「全くだ。」

 今日はいきなりこの世界に飛ばされたり、モンスターに追いかけられたりう○こを集めたり、大変な事ばかりだったが、とりあえずは寝て、明日の事は明日考えるとしよう。

 こうして俺たちの転生1日目が終わった。
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