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第1章1部【始まりの街〜ラペル〜】
第7話【初めての討伐クエスト!〜望まなかった再会〜】
しおりを挟む俺たちが現在居る町、ラペルの入り口から少し歩くと砂利道の右側にヨーセル森はある。
その森は俺たちがラペルにたどり着くまでに一度通り過ぎた事のある森だった。
そしてその森こそ、俺たちの初めてとなるモンスター討伐依頼の舞台なのだ。
まさか昨日呑気に通りすぎていた森にモンスターが潜んでいたなんてな。――今考え直すと怖くて小便チビりそうだぜ。
今俺たちはそんなヨーセル森の入り口に居て、これから入るという所だ。
「よし、じゃあみんな。早速入るわよ……」
「おう。」「うん、行こう。」「仕方ねぇな……」
みさとの声に、俺はビビりながらも返事を返す。
もう行くのかよ……心の準備くらいさせて欲しいんだが。
こうして俺たち4人は、ヨーセル森へと足を踏み入れた。
---
中に入ると、そこは意外にも明るく、さっきまであんなにビビっていたこともあって、俺はなんだが拍子抜けした気分になった。
「思ったよりも明るいな」
「なんだかピクニックしてるみたい!」
「楽しくなってきたじゃねぇか!」
おいおい……確かに木と木の隙間から差し込んでくる光はキレイだけどよ……俺たちはあくまでもスライムを倒しに来たんだぜ?
「はぁ……全く」
俺は頭に片手を当て、ため息を吐く。
しかし、すぐに苦笑いをした。
コイツらの楽しそうな顔を見てたら、なんだか俺もほっこりしてきたからな。
「とうま、アンタも楽しみなさいよ!」
「ちょ、おい!」
そこで、なんと俺はテンションの上がったみさとに腕を組まれた――ッ!?
や、やべぇ……ほっこりじゃなくてこれじゃもっこりだな。
こうして俺たちは、ルンルン気分でヨーセル森を進んで行った。
(これ、はたから見たらどう考えてもピクニックに来たヤツらだよな……)
---
そこからしばらく、俺たちは森の中を歩き続けたが、モンスターは簡単に出てこないものなのか、それともここが比較的少ないのか、スライムが一向に出てくる気配は無かった。
まさかここに居るモンスター、誰かに狩り尽くされたとかじゃ無いだろうな……?
(それじゃ俺たちは依頼を完了させられないじゃないか)
俺の頭にそんな不安がよぎる。
しかし、それはどうやら考えすぎだったようで、前の方から一体のベタベタとした固形の生き物?が飛んできた。
「おい、コイツがまさか……!」
「うへぇ、なんか思ってたよりも気持ち悪いわね……」
ベチャベチャと音を立てる青色のソイツは――もう疑う必要も無い、今回のお目当て「スライム」だった。
ベチャベチャ……ベチャベチャ……
森の奥から突如現れたスライムは、そう一定のリズムで近づいてくる。
それは、今まで感じた事の無い感覚で――――
「く、来んな!」
もちろんめちゃくちゃ怖いッ!!
いや、これならまだ顔とかあってくれた方が良かったんだが、ただの青いベタベタが近づいて来るのって意外にもものすごく恐怖を感じる。
「く、くそッ!やんのかよ!」
「ちょ、ちょっととうま!」
「おい!落ちつけ!」
そんな光景を見て、混乱してしまった俺は、背中から剣を抜くと、ブンブンとそれを振り回しながら威嚇する。
しかし、初めて握った本物の鉄の剣というのは、思った以上に重い。
俺は思った通りに剣を振ることは出来なかった。
そして更に、その間にもスライムは差を詰めてくる。
「や、やばい……!?」
ど、どうすれば良いってんだよ!?
ベチャンッ!!
俺との距離が3メートルくらいまで近づいたスライムは、そう大きく音を鳴らし、勢いよく飛び付いてくる。
「うわぁぁぁ!?」
「いい加減どきなさい!」
「って痛って!?」
しかし、なんと俺はスライムからの前方攻撃を受ける前に、何者かの横からの攻撃で吹き飛ばされた。
そして、草むらに突っ込んだ所で――
「正義の鉄槌をくらいやがれ!!」
バシュンッ!
ちなつの声と、ベタベタした物を切り裂く音が聞こえた。
痛てぇ……
俺はジンジンと痛む頭を擦りながら3人の方を見る。
すると、もう既にスライムは動かなくなっており、3人は抱き合いながら喜びを分かち合って居るようだった。
え……これどゆこと……?
まさか俺、ただただ邪魔だったパターンか?
---
それから立ち上がり、あの時俺に何が起こったのかをみさとに聞くと、みさとは一言こう言った。「蹴ったわ」と。
いや、蹴ったわ。じゃねぇよ……
俺はその後すぐに何でそんなことをしたのか問い詰めたが、みさとは悪いことをした自覚は無いらしく、むしろスライムからの攻撃を避けられたことを感謝しろなんて言ってきやがった。
くぅ……最高に惨めな気分だよ。
あー2chにこのイライラを書き込みてぇ!!
しかし、残念ながら俺があそこで邪魔だったのは事実だ。
だから俺はこれ以上このことを話すのはやめる事にした。
自分で自分の傷をえぐるなんてこと、俺はしたくないからな。
「――これでよしと。」
「ちゃんとできたかしら?」
「はいはい、出来ましたよ。」
スライムの切れ端を切り取り、それをギルドから渡された皮の小袋に入れた事を報告すると、みさとは上から目線でそう言ってくる。
コイツ……さっきからなんだか上から目線なんだよな。
ま、まさかまださっきのことで「感謝しなさいよ」オーラを出してるのか……?
とことん傷をえぐってくる野郎だな……
「よし、じゃあ討伐も完了したし、戻るとするか。」
「そうね、これ以上ここにいて他のモンスターに絡まれても嫌だし。」
「だな」「そうだね」
俺たちは今来た道の方を振り返ると、すぐに歩き出す。
ふぅ……今日は良い汗かいたぜ……まぁした事と言えば蹴られたくらいなんだが。
「それにしてもとうま、お前ダサすぎたぞ?」
「本当にやめてくれ!!」
「いや、でもマジでダサかったわよ?」
「うん、私もそう思った。」
俺たちは明るく会話をしながら歩く。
こんな日々がこれからも続くと思ったら、多少の苦難だって乗り越えられるかもな。
しかし、そんな苦難はすぐに訪れた。
「ん?なんか後ろから音しないか?」
「え?音?」
ちなつがそう言ったことが事の始まりだった。
俺たちはすぐに後ろを振り向く。
するとそこにはヤツが居たのだ。俺たちを昨日追いかけ回したヤツが。
「って……マジかよ……」
みさとが先程言っていた心配事が、現実に変わった瞬間だった。
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