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第1章1部【始まりの街〜ラペル〜】
第9話【怖い人たち〜そして新たな出会い〜】
しおりを挟む「ん?なんだ?」
俺は足を止め、後ろを振り向きながらそう言う。
はぁ、これからなんだかんだ初めての異世界酒場に行こうって時なのに、なんだってんだよ。
「お前ら、見ない顔だな。初心者パーティーか?」
「?それがどうした?」
俺たちに話しかけてきたのは、3人組の冒険者だった。
3人ともそれぞれ身にまとっている防具は傷だらけで、なんとも上級者という感じだ。
こりゃあ、あんまり生意気な口は効かない方が良いな。
ネットの中では散々いきがってきたが、現実で調子に乗るとボコられる(実体験)ということを知っている俺は、先程までの口調からすぐに変え、
「って!すいません!上級者さんッスよね!」
笑顔で頭をペコペコ下げる。
しかし、どうやら俺の言い方が悪かったのか、それで相手は機嫌を悪くした。
「そんなことどうでも良いんだよ、とりあえず今から俺がする質問に答えろ。」
「え?あ、はい。」
「お前ら、今受け付けと話してた時、オーガに見つかったのに逃げ切ったんだよな?」
「はい、そうですけど。」
コイツ、一体何を聞きたいんだ?
だって俺たちがオーガから逃げ切ったとか逃げ切れなかったとか、他人からしたらどうでも良いことだろ?
しかし、次のセリフで俺は何故コイツらがこんなことを聞いてきているのかが分かった。
「お前ら、どうやって逃げ切った?オーガは普通、中級下位でも怪我無しで逃げ切るのは困難なモンスターなんだぞ?」
「どうやって逃げ切ったって……ッ!」
コイツら、俺たちを疑ってるんだ。
昨日冒険者ギルドに初めて入った時、ひとりの冒険者が言っていた。
「こいつらも初心者のフリをしたヤツらなんじゃなか」って。
これ……一体どう言えば良いんだ……?
まず、きっと「走って逃げ切った」なんて言っても絶対に信じては貰えないだろう。
だからと言って、ユニークスキルのことを正直に言うとのちのちややこしい事になりそうだから、本当の事も言えないしな。
「……」
完全に分からなくなった俺は、助けを求めるために横にいた3人の顔を見る。
しかし、残念ながら俺の仲間も全員馬鹿だったようで(今更感)
(ちょっと、何とかしなさいよ!)
(お前に任せる。)
(頑張れとうま~)
みんな俺に任せきっていた。
あぁ~もうッ!こうなったら――
「さぁ?俺たちが中級レベルなんじゃ無いんスか?」
俺は超絶笑顔でそう言った。
だってまだこれが一番安牌かなって思ったんだよ!
しかし、やはりそれを聞いた相手の冒険者は、全く信じている様子は無かった。
「そんな訳無いだろ。それにお前ら、昨日銅貨や銀貨の価値も分かって無かったよな?本当に冒険者なのか?ゴブリンが化けてるんじゃないのか?」
「な……!」
相手の今のゴブリン発言で、ギルド内に居た冒険者たちの視線が一気に集まる。
「違ぇよ!んな訳無いだろ!」
こんな失礼なことを言ってくるヤツらに敬語なんて使うか!
しかし、俺がキレたところで相手は呆れた様子になった。
「はぁ……こんな低脳なヤツらと話していても意味が無い、もう良い。お前ら、行くぞ。」
「おい!ちょっと待てよ!」
俺のセリフを全く聞こうとせず、ギルドから出ていく3人の冒険者たち。
ギルド内には、なんとも居心地の悪い空気が広がった。
「感じ悪いヤツらだな……」
「ほんとに、」「だな」「イライラしたよ……」
なんであんなヤツが強そうなオーラ漂わせてるんだよ。
するとその時、そんな俺たちに対して、またしても後ろから誰かが話しかけてきた。
「大丈夫だったか?」
「なんだよ……」
俺は先程のテンションのまま、後ろを振り向く。
するとそこには、先程のヤツらとは全く印象の違う、どちらかと言えば陽な3人組だった。
俺に話しかけてきた、背中に剣を背負う茶髪ショートの青年、片手に弓を持った、身軽な格好の黒髪ロングの女の子、そして――ドラゴン。
いや、別にソイツがドラゴン見たいな強面の男って訳ではなく、ツノが生えたマジのドラゴンなのだ。
多分ラペルに着いたばかりの時に見た龍人と同類のヤツなんだろうな。
「アイツら初心者には当たり強いんだよ。だから気にすんなよ。な?」
「お、おう……」
さっきあんなに性格の悪いヤツと話したのに、急に気遣いされたらなんだか拍子抜けするな。
とにかく、コイツらが良い奴なのは分かったが。
すると、そこで後ろに居た弓使いらしき女の子が笑顔で、
「さっきのやり取り見てたわよ、あなたたち昨日初めて依頼を受けたのにもうスライム倒したんだってね!凄いじゃない!」
そう言って来る。
「いやいや、あんなの楽勝だったわよ!」
「お、お前なぁ……」
コイツ、すぐ調子乗るよな。
だが、昨日ここに来たばかりの俺たちにこんなにフレンドリーに話しかけてくれるのは珍しい。
仲良くなっておいて損は無さそうだ。
「とりあえず、立ち話もなんだから座って話そうぜ。」
俺は優しく話しかけて来てくれた3人組にそう言った。
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