【完結】転生したのは俺だけじゃないらしい。〜同時に異世界転生した全く知らない4人組でこの世界を生き抜きます(ヒキニートは俺だけ)〜

カツラノエース

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第1章1部【始まりの街〜ラペル〜】

第11話【家庭教師にお願い〜挨拶は土下座から〜】

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 エスタリ一行と別れた後、俺たちは受け付けが暇になったことを確認すると、中二階から降り、お姉さんの元へ行った。

「あ、皆さん!どうしたんですか?」
「少し聞きたいことがあってな。」
「聞きたいこと?」

 俺たちに気づいてすぐに笑顔になったお姉さんは、俺の言葉に首を傾げる。

「あぁ、それは魔法を教えてくれる人の事なんだが――」

 そこで俺はこの中で誰ひとり魔法を使えないこと、だから俺たち見たいなヤツらに魔法を教えてくれる人を探していることを打ち明けた。

「――なるほど……だいたい話は分かりました。それで私に相談しに来たって訳ですね。」
「あぁ、これからも冒険者を続けて行くのなら、魔法は使えた方が良いと思ってな。」

(というか、使えないとまずいだろうし。)

 すると、俺たちの要件を聞いたお姉さんは、腕を組むと無言で悩み出した。
 やっぱり、こんな大人に1から魔法を教えている人は居ないのだろうか。

 まぁ普通に考えて、居る方がおかしいのかも知れない。
 だって魔法を使えない大人なんて、さっきエスタリが言っていたみたいにほぼ居ないのに対して、魔法の教育を受けていない子供は全員使えない。

 なのに大人に教えるなんて、そいつはどんだけ金が有り余ってるんだよって話だ。

「いや、別に分からないなら無理に答えなくても良い。こっちこそ変な質問してごめんな。」

 ある程度時間が経っても何も言わないお姉さんに対して申し訳なくなってきた俺は、苦笑いをしながら謝る。

 とりあえず、流石にお腹がすいた。
 だからこのことはその後考える事にしよう。

 とりあえず明日考えれば良い。
 それでも無理そうだったらまた明日。
 これが俺のモットーなのだ。

 すると、ギルドの扉の方へ身体を回そうとした俺に、

「あ、あの!」

 お姉さんが少し躊躇いながら声を掛けてきた。
 ん?まさか当てがあったりするのだろうか?

「なんだ?」
「一応、心当たりがあります。その方はずっと魔法学校で教育を受けてもなかなか上手くならない子の補助をしているような人なので、もしかしたら断られるかも知れませんが……」
「お!その人良いじゃねぇか!」
「大丈夫ですか……?」
「おう!」

 その後俺たちは、お姉さんにその人の家の住所を教えて貰い、全員で感謝を伝えた後、冒険者ギルドを後にした。
 この町には嫌なやつも居るが、それ以上に優しい人たちも多いな。

 ---

「ここで……あってるんだよな……?」
「た、多分……」「私、怖くなって来たんだが」「住所違うんじゃないかな……?」

 その後、教えて貰った住所通りの場所に着くと、そこで俺たちは、早くも引き返そうか検討しだした。
 何故なら――

「流石にデカすぎるだろこれ!!」

 そこは超豪邸だったからだ。
 いや、確かに世界の大富豪が住んでいるような家には劣るだろう。
 だが、だからと言って明らかに普通の人間が住んで居る大きさでは無いのだ。

 なんて行ったら良いんだろうなぁ……
 見た目は中世ヨーロッパの建物そのものなんだが、その割には高さが無く、一階建てでとにかく面積が広いって感じだ。

「なんか……私は住みたくは無いな。」
「えぇ、私もそう思うわ。」
「うんうん」

 おい、コイツら人の家の前で失礼だな。
 もしこれが家のやつに聞かれてたら――

 ガチャ
 
「なんですか?うるさいですよ。」

 って、タイミングぅぅ!!
 おいおい、聞かれてたんじゃねぇのか?
  
「い、いや、俺たちはこの家の人に用事があってな。」
「用事?私にですか?」

 しかし、幸い家の悪口は聞かれていなかったようで、扉から出てきた黄緑色ロングヘアーの女の子は、自分に用事があると言われた事に対して首を傾げた。

 その後、俺たちが受け付けのお姉さんに紹介されて来た事と、俺たち全員魔法を使えなくて、教えて欲しいという事を言った。

「――なるほど、要するにあなた達は私に魔法を教えて欲しいってことですよね。」
「あぁ、そういうことだ。」
「あの、申し訳ないですがうちは子供に教える専門なので」

 やっぱりか……いや、でもここまで来たら簡単には引き下がれない。
 俺は頭を下げると、

「頼む、俺たち魔法が使えないと強いモンスターに負けちまうんだよ!」

 確実に年下であろう女の子に頭を下げて懇願する。
 ん?ダサいと思うか?俺としてはなにごとにも本気になっていてかっこいいと評価して欲しいぜ。

 しかし、俺のプライドを捨てたお願いも虚しく、女の子は一言、「いや、すいません」そうピシャリと吐き捨てた。

 くそ……これはもっとプライドを捨てる必要があるみたいだな。

「おい、みさと、ちなつ、くるみ、ちょっとこい――」
「な、なによ」「なんだ?」「なに?」

 俺は3人に声を掛けると女の子に聞こえないよう、少し離れて作戦を告げる。

「いい案ねそれ。」「まぁ、しょうがないよな」「やるしかないよ!」

 俺の作戦を聞いた3人は、意外にも全員賛成だった。
 ちなつは絶対反対すると思ってたんだがな。

 だが、こういうのは手っ取り早い方が良い。
 俺たちはすぐに扉の前で唖然としている女の子の前に移動すると、横一列に並び――

「頼むぅッ!!」「お願い!」「お願いだ!」「お願いだよ!」

 勢いよく土下座をした。

 どうだ?この世界に土下座という概念があるのかは知らないが、俺が知る以上これに勝る懇願のしかたなんて無いからな。

 すると、女の子も俺たちがこんな事までするとは思っていなかった様で――

「ちょ、ちょっと!頭を地面に擦り付けるのはやめてください!分かりました!分かりましたから!」
「「ほんと!!」」

 俺たちの土下座に根負けした。
 どうだ!これがヒキニート時代に毎日親に向かってしていた土下座の力だぜ!

「とりあえず、入って下さい、話はそれからです。」

 こうして俺たちは、まず第1関門を突破したのだった。
 (ちなみに土下座してた時、なんか気持ちよかった。俺ってまさかMなのか?)
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