【完結】転生したのは俺だけじゃないらしい。〜同時に異世界転生した全く知らない4人組でこの世界を生き抜きます(ヒキニートは俺だけ)〜

カツラノエース

文字の大きさ
13 / 88
第1章1部【始まりの街〜ラペル〜】

第13話【それから1週間〜初めての魔法〜】

しおりを挟む

 ウェーナの家に住ませて貰うことになってから1週間後、今日も俺たちは中庭で魔法の訓練をしている。

 この1週間の間、様々なこの世界の情報を知った。
 まず、今俺たちがいる大陸の名前は「ファスティ大陸」だということ。

 そして、今ウェーナの両親が魔法を教えに行っている中央大陸には、船を使わなければ行くことは出来ないということもな。

 ちなみにこの情報達は全て、みさとが町の人達の会話を盗み聞きして手に入れた物だ。
 正直なところこの驚異的な盗み聞きの力には、俺も凄く驚いだぜ。

 なんでもみさとはこの盗み聞きやカンニングだけで、偏差値60程の学校に入ったらしいからな。
 そりゃこれくらいのこと、朝飯前って訳だな。

 さて、先程言ったように今魔法の訓練をしている訳だが、1週間前の時とは違い、今はもう4人各自がそれぞれ自主練という形になっている。

 それをウェーナが見ていて、俺たちが助けて欲しい時に呼ぶという感じだ。

 (俺たちばかりにかまっていて大丈夫なのか?)と思ったこともあったが、どうやらこの時期は毎年教えてもらいたい人がいないらしく、暇だから問題無いんだと。

 それで、1週間毎日魔法の訓練を頑張っているのだが――俺は今も魔法を使えるようになっていない。

 いや、ウェーナから色々コツを聞いたりはしてみたんだが、やっぱりダメだ、コツを掴めない。
 そしてちなつも俺と同じ状況だ。

「あーダメだ、すまんウェーナ。教えて貰った感じにしてみたが全くだ。」
「またですか?全く、貴方とちなつさんは本当にセンスが無いですね。」

 俺はウェーナに声を掛けると、ウェーナは首だけ振り向いてため息をしながらそう言い、「みさとさん、くるみさん。少し待っていて下さい。」
 2人にそう声を掛けるとこっちへ歩いてくる。

 センスありありのみさととくるみはというと、今ウェーナに「サイコキネシス」を教えてもらっているっぽい。
 サイコキネシスって……それはむしろ魔法なのか?

「もうおそらく貴方が自分の力だけで魔力の玉を手に出すことは出来ないと思います。」
「じゃ、じゃあ俺は一生魔法を使うことが出来ないってのか……?」

 俺はピシャリと言い放たれた言葉に恐る恐る返すが、ウェーナは「そういう訳じゃないです。私は色んな人に魔法を教えているんですよ?これから最終手段を使います。」そう言うと、

「今から私がとうまさんの手のひらに魔力を送るので。それでまずは感覚を掴むところから始めましょう。」

 ウェーナの最終手段が始まった。

 ---

「じゃあ、始めます。」
「お、おう……」

 ウェーナはそう言うと俺の突き出した右手の手首を掴む。
 距離近いな、なんか緊張して来たぜ……

 すると、ウェーナが俺の手首を掴んですぐ、手の中に何かが入って来ているような感覚がした。

「なんか手の中に力が溜まって行ってる気がするぜ……!」
「当然です、私が魔力を入れているのですから。」

 初めて感じだ魔力の感覚に興奮する俺に冷たく返すウェーナ。
 彼女からしたら当然なのかもしれない。だが、俺からしたらこれは大きな一歩だ!

「すげぇすげぇ!力がどんどん溜まってくぞ……!」

 きっと手の中にはもう溢れそうなくらいの魔力が溜まっているのだろう。

 アニメや漫画で「力がどんどん湧いてくる」なんてセリフがあるが、それはまさにこんな感覚なんだろうな。

「よし、これくらいで十分でしょう。とうまさん、今です。」
「お、おう……!分かってる……!」

 こんなに魔力の感覚を掴んでるのはこれが初めてだ。
 ここで絶対成功させてやる!

 俺はウェーナが手首を離したところで目を瞑ると、手の中に溜まっている魔力を手のひらから出すイメージをする。

 ぐぬぬぬ……
 必死にイメージをするが――やはり上手く出来ている感覚が無い。
 ここまでしてもダメなのか……?

 しかし、そこでウェーナがいつも通りの淡々とした口調でこう言った。

「お、やっと出来ましたか。」

 ま、マジで!?
 俺は手に力を入れたまま恐る恐る目を開ける。
 すると手のひらの上には、透明な玉が浮かんでいた。

「で、出来た……!」

 俺にも出来たぞ……!28歳元ヒキニートだってやれば出来るんだ!
 だが、ここで安心しては行けない。まだ終わりでは無いのだ。

「じゃあとうまさん、そのまま頭の中にその魔力の玉がメラメラと燃えるイメージをして下さい。」
「おう」

 俺は手のひらの上に浮かぶ透明な魔力の塊を見つめながら、言われた通りにイメージをする。

 しかし、こんな時に限って余念というのは出てくる物だ。
 俺はそこでメラメラと燃える炎ではなく、先程のウェーナが自分の手首を握る場面を想像してしまった。

 すると、そんな考えはすぐに魔力に通じてしまい――

「はぁ……」

 透明な玉はドロドロのピンク色に変わり、瞬く間に消えてしまった。
 や、やっちまったよ……

「とうまさん、こんな時に限って何考えてたんですか?」
「べ、別にぃ……?」

 俺は無言の圧を掛けてくるウェーナから顔を背けて顎をポリポリと掻く。

 魔法を使えるようになるまでには、まだ時間が掛かりそうだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

インターネットで異世界無双!?

kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。  その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。  これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。

嫁に来た転生悪役令嬢「破滅します!」 俺「大丈夫だ、問題ない(ドラゴン殴りながら)」~ゲームの常識が通用しない辺境領主の無自覚成り上がり~

ちくでん
ファンタジー
「なぜあなたは、私のゲーム知識をことごとく上回ってしまうのですか!?」 魔物だらけの辺境で暮らす主人公ギリアムのもとに、公爵家令嬢ミューゼアが嫁として追放されてきた。実はこのお嫁さん、ゲーム世界に転生してきた転生悪役令嬢だったのです。 本来のゲームでは外道の悪役貴族だったはずのギリアム。ミューゼアは外道貴族に蹂躙される破滅エンドだったはずなのに、なぜかこの世界線では彼ギリアムは想定外に頑張り屋の好青年。彼はミューゼアのゲーム知識をことごとく超えて彼女を仰天させるイレギュラー、『ゲーム世界のルールブレイカー』でした。 ギリアムとミューゼアは、破滅回避のために力を合わせて領地開拓をしていきます。 スローライフ+悪役転生+領地開拓。これは、ゆったりと生活しながらもだんだんと世の中に(意図せず)影響力を発揮していってしまう二人の物語です。

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

処理中です...