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第1章3部【中央大陸招待編〜アンテズ村を救え〜】
第27話【尋問〜恐怖でチビりそう〜】
しおりを挟む夜のアンテズ村に現れた一匹のゴブリンをみさとは漫画などでよく見る手法で気絶させると、それを肩に担いで、すぐ側に生えていた一本の木のそばに下ろした。
そして、「とうま、ちょっとロープ持ってきて」
こっちを向かずに手を俺の方に伸ばし、指示をして来る。
これから本当に何をするのかが分からなかった俺は、とりあえず指示に従って、小麦畑の右側にある倉庫の壁に掛かったロープを取り、それを言われるがままにみさとに渡した。
「ありがと。――お、このくらいの長さがあれば行けそうね」
「?」
こいつ、本当に何するってんだよ。
ロープを手にして再び先程の様な不気味過ぎる笑みを浮かべたみさとに、察しの悪すぎる俺は首を傾げる。
しかし、次の瞬間――そんな俺でも何をしているのか分かった。
「み、みさと――まさかとは思うがそれってまさか……」
「そう、ゴブリンを木に縛り付けるのよ」
ニコッと笑顔でそう言うみさと。
いやいやいやいや!可愛く笑ってるけど目の奥か濁ってるぞ!
「そ、そんなことしてど、どうするんだよ……?」
「そんなの拷問して巣穴の位置を聞き出すに決まってるじゃない」
「決まってるじゃないじゃねぇよ!」
いや、第一相手が喋れる人間ならばともかく、(それも非人道的過ぎて嫌だが)相手はゴブリンだぞ?どうやって聞き出すってんだよ。
しかし、どうやらそんなみさとには考えがあるらしく、
「ま、見てなさいって」
ニヤッと笑ってそう言った。
---
「これで良しっと!」
「手際良いな……」
「学校で習ったのよ」
「どんな学校だ!」
みさとは木にゴブリンをロープでグルグル巻きにし、それを固結びすると、腰に手を当ててドヤ顔をする。
――で、ここから一体どうするんだ?
ロープを巻いている時にどうやって巣穴を聞き出すのか聞いても、みさとは「まだ秘密」と言って答えてくれなかったのだ。
これからゴブリンの身に降りかかるであろう災難に若干同情しながらも、少し後ろで腕を組みながら見ていると――早速、みさとは行動を開始した。
「まずは――おらッ!」
「――ギャギャ!?」
まずは手始めに、ゴブリンの顔を殴って起こす。って……もう既になかなか酷いのだが……
しかし、当然こんな事で終わるわけが無い。
みさとはゴブリンが起きたのを確認すると、声を荒らげ始めた。
「おい!お前の巣穴はどこだ?吐け!」
「ギャギャギャ!?」
「早く吐け!」
「ギャギャ!!」
「こんのッ!」
「ギャギャァ!?」
当然だが人間の言葉を話せる訳が無いゴブリンは、要求に対してギャギャギャと叫んでいたが、それにみさとは腹が立ったのか顔を思いっきり蹴った。
「いい加減吐け!」
「ギャギャ……ギャギャ!」
「もう!!ねぇとうま!コイツギャギャギャギャしか言わない!」
「当たり前だろバカ女!」
こ、こいつは本気でこう言ってやがるのか……?
そろそろマジで怖くなって来たぞ……
「なぁみさと……こんな事を続けてたら巣穴の位置を聞く前にゴブリンが死ぬぞ?」
「はぁはぁ……まぁ、確かにそうね。」
「考え、あるんじゃないのか?」
もしその考えとやらが今の尋問だとしたらマジでキレるが。
しかし、それは流石に無かった様で、俺にそう言われたみさとは八重歯を出しながら笑った。
「ま、あるわ。秘策がね。」
「じゃあ早くそれをしてくれ。」
「しょうがないわね、分かったわ。」
たく……なんでこういう時に最初から秘策を出さないんだろうな?
俺もいつも漫画とかを読んででずっと思ってるんだよ。
「じゃあ、始めるわ。」
俺から視線をゴブリンに移すと、腰に手を当てたまま顔を前に突き出すみさと。
「……ッ!まさか……!」
そこで俺もこいつがこれから何をしようとしているのかが分かった。
そう、こいつはゴブリンに対して思っている事を読むことの出来るユニークスキル、[ココロ・ビジョン]を使おうとしているのだ。
普通、モンスターは人間の言葉を理解する事は出来ないが、知能の高いゴブリンなら、人語を話すことは出来なくとも理解する事は出来る。
要するに、ゴブリンの知能の高さを逆手に取ったって訳だった。
こ、こいつ……バカなのか賢いのかよく分からん野郎だぜ。
「最後にもう一度聞くわ……お前の巣穴はどこなの。――――なるほど。分かったわ。」
「マジか!?」
「えぇ、西側に見える森の中よ。」
「ギャギャ!?ギャギャ!!」
みさとが場所を言った瞬間、急に激しく暴れ出すゴブリン。
これは完全に図星だった。
「もう貴方に用はないわ。死になさい。」
「ギャギャ!?……」
そんなゴブリンの反応を見て、更に確信を得たみさとは、地面に置いていた剣を手に取ると、ゴブリンの首を飛ばす。
そして俺の方を向くと一言、笑顔でこう言った。
「さ!夜も遅い事だし寝ましょうか!」
「ママぁ!?みさとが怖いよぉぉ!?」
「ちょ、なに走り出してんのよ!?」
「こ、殺される!?」
空に浮かぶ赤い星と相まって、完全に殺人鬼の様になったみさとから俺はダッシュで借りている家の方へ走って行く。
こうして俺とみさとは、真夜中にゴブリンの巣穴の位置を突き止めたのだった。
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