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第2章1部【中央大陸編】
第39話【サラマンダー〜どうやら変異種みたいです〜】
しおりを挟む「じょ、上級上位だ、と……?」
「ん?なんだ?知らなかったのか?」
「有名なぁ、はずよぉ?」
俺のリアクションに、スザクとミラボレアは不思議そうに首を傾げる。
いや、正直そうかもしれないとはずっと思っていたさ。
アンテズ村の村人が言っていた事が正しければ、レザリオはこの街の中でも最強と謳われる冒険者だからな。
だが――こうやっていざ真実を知ると、昨日からのレザリオの態度や言動を近くで見ていたからこそやはり驚きはとんでもなく大きかった。
だって上級の上位だぜ?
少し前にエスタリと話した時、『等級が上級の冒険者は本当に稀だ。昇級の難易度もとてつもなく高いからな。』
アイツはそう言っていた。
なのに、ただでさえ上級に上がる事も難しいってのに、更に上位だなんて……ほんとにすげぇ。それ以外の言葉は見当たらねぇよ。
「いつか私たちも、そんな冒険者になれたら良いわね」
「バカ、んなもんに俺たちがなれるかよ」
俺はみさとのセリフにツッコミを入れる。
――でも、もしそうなれるんなら、世界中の人達を救える様な、そんな冒険者になりたいな――なんて、やっぱりムリか。
「ま、将来の事を考えるのはまた後にしといて――とりあえず受ける依頼を決めたらどうだ?」
「だよな、よし!選ぶとしますかね」
「そうね」「だな!」「うん!」
---
そこから俺たちは、壁いっぱいに掲示された中級上位の依頼を見て、その中に良さげな依頼が無いかどうかを探し始めた。――のだが……
「う~ん、いまいち記載されてるモンスターの強さが分からないわね……」
「だよな」
今みさとが言った様に、依頼に書かれたモンスター名はラペルでは見たことも無いものばかりで、何が何だか分からなかった。
実際、俺たちは中級上位ではあるが、倒したモンスターの種類はたかが知れてるしな。
するとそこで、俺の横に並んで依頼を眺めていたスザクが、いきなり声を出した。
「おっ、こいつぁ久しぶりに見たぜ。おいミラボレア、見てみろよ。」
「なぁにぃ?――――あらぁ、普通は冬に出てくるモンスターのはずだけどぉ、珍しいわねぇ」
「ん?なんだ?」
珍しいモンスター、要するにレアモンスターって訳だろ?そんなロマンのある単語に俺が反応しないわけがない。
スザクの方に身体を寄せ、2人が注目している依頼を見た。
=========================
中級上位クエスト
・内容:サラマンダーを討伐する。
・報酬:金貨3枚
・場所:チュロント森
・期限:出来るだけ早め
・依頼主:冒険者ギルド
・備考:恐らく変異種です。警戒心を強めて下さい。
=========================
サラマンダーか、なんか聞いた事ある名前だな。――と、それは良いんだが、なんだ?変異種って?この世界にもそんなモ○ハンみたいなモンスターが居るのか?
「なぁ、変異種ってなんなんだ?」
「……」
「おい、聞いてるのか?」
「あ?あぁ!すまんすまん、いや、妙だと思ってな。」
スザクは腕を組み、神妙な面持ちでそう呟く。それはまるで、こんな依頼見たこと無いぞと言わんばかりに。
次いでミラボレアが口を開いた。
「まずぅ、サラマンダーは普通森などには生息していないのぉ、主な食事が鉱山等の中にある岩や鉱石だからぁ。」
「なのに、そんなモンスターが森に――しかもチュロント森ってのは普通、キノコ狩りや山菜を集める人たちで賑わう安全な森のはずなんだがな。」
そこから更に話を聞くと、どうやらこの世界にも日本と同じく春夏秋冬があるらしく、今は夏だと言うのに、暑さが苦手で冬にしか主な生息地である洞窟から出てこないというサラマンダーが夏に、しかも森の中に生息しているというのは聞いた事が無かったんだと。
「それに、変異種ってのも聞いた事が無い。まぁそれはこれだけ異常な条件で現れたサラマンダーに対するとりあえずの名称なんだろうが。」
「今までサラマンダー以外にも、こんな事は無かったの?」
「まぁ、主な生息地が森のスライムが水辺に居るとか、ワーウルフが洞窟内に現れたとか――そんな事は何度かあったが。」
「それらは全てぇ、一応説明が付くのよねぇ。その年の気温が特に高くてぇ、涼しい水辺に移動していたとかぁ、オーガの出現で森から避難したワーウルフが洞窟をとりあえずの住処にしていた、とかぁ。」
「だが、今回のは正直レベルが違うな。これは早めに解決しておいた方が良いだろう。」
「――だよな。」
正直、変異種ってのはよく分からんが、現れたのが普段は安全な森って事はその分、そこに行っていた一般の人たちが危険に晒されるって事だ。
他の冒険者たちも恐らく不気味がって選んでないんだろうし、俺たちがやるしか無いだろう。
金貨3枚――報酬もラペルとは段違いの破格だしな。
「よし、じゃあこの依頼、受けるか」
俺はそう呟くと、左側に居るパーティーメンバー3人の顔を見る。
本当に受けるかどうかは、ちゃんと仲間全員で決めねぇとな。――ま、こいつらがなんて言うかはもう分かっちゃいるが。
「どうする?お前ら?」
「それ確認する必要あるかしら?もちろんオッケーよ!だって凄く冒険者っぽいじゃない!」
「だな!」「うん!」
3人にそう聞くと、やはり想像通りの答えが返ってきた。
全く、こいつらに恐怖心ってもんは無いのかね。俺は結構怖いぞ?
「よし、じゃあ決まりだな。」
「お前ら、本当にこれにするのか?正直、これは今までに例の無い依頼だ。代わりに俺たちが行ってやってもいいんだぜ?」
「ん?なんだ?上級冒険者さんが後輩の心配か?――その気持ちは嬉しいけどよ、大丈夫だ。」
待ってろよサラマンダー!そしてそれをぶっ倒してエスタリを仰天させてやるよ!
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