15 / 29
第15話だぞ【もう絶対に乗らん......】
しおりを挟む「魔王さんっ!あのアトラクション楽しそうですよ~!」
「あぁ、そうだな……!」
「あ!でもあのメリーゴーランドも乗ってみたい!」
「良いではないか……!ふはは……!」
えなにいきなり抱きつかれてから数分後……今は春丘テーマパークの中心――乗り物が多くあるメインエリアに居るのだが……さっきの事があったせいか、先程から笑みが止まっていなかった。
この気持ちの高まり、そして心の奥から底無しで湧いてくる自信――まるでこの世界に来たばかりの頃の、じぶが最強で1番偉いんだと信じて止めなかった時の様だ。
まぁもちろん、今は悠介さんより全てが上だなんて事は思っていないが、それでもこの気持ちの高鳴りはその頃を思い出すな。
「?どうしたんですか魔王さん?さっきからずっと笑ってますけど。」
すると、そこでそんな我のテンションを不思議に思ったのか、えながそう質問してきた。
――どうする、我。
正直、ここで「そんなの決まっているだろう……ッ!!えな、お前に抱きつかれたからだッ!!」と言っても我らしくて良いのかもしれないが……それでは、それを聞いて我に抱きついた事を思い出して頬を真っ赤に染め、暴れる可能性がある。
ふっ……!!我は今までのバカで世間知らずな我では無い――世界の真理をマスターした最強の魔王なのだッ!!
だからここは……
「あ、あぁ。すまない。昨日パンフレットで見たアトラクションがあまりにも面白そうで、楽しみで仕方無かったのだ。」
「へぇ……!魔王さんもこういうの、好きなんですね!――実は私、この話を聞いた時に思ったんです。「魔王さん、遊園地とか好きかな?楽しめるかな?」って、」
「でも、楽しみなら良かったです!安心しました!」
「あ、あぁ」
うぅ……少し騙している様な気分だ。だ、だがえな。お前と一緒に居られるだけで我は十分楽しいぞ。
(こう考えると我、どっぷりえなの事が大好きなんだなと思う。)
しかし、するとそこでえなが、
「――で、どのアトラクションなんですか?魔王さんが昨日パンフレットで見て楽しそうだと思ったのは!」
「――へ?」
「あれ?あるんですよね?」
そこで、上目遣いで少し申し訳なさそうな表情になるえな。
お、おいやめろその表情……!?
で、でもいきなりそんな事聞かれても実際乗りたいアトラクションなんて――
だが、そこで我の頭の中に数日前、昼休み中に悠介さんとおもむろに交わした会話を思い出した。
『――そう言えば、前ゆうりと買い物に行ったんだが服屋でどちらの服が似合うかと聞かれたんだ。』
「あぁ」
『だが、俺からしたらどちらもものすごく似合っていた。だから、こう言ったのだ。「どちらも似合っているぞ」と。』
「あぁ」
『すると、それを聞いたゆうりは急に怒り口調でこう言ってきた。「どちらか選んでよ、決められない男はだめなんだよ」――』
『だから魔王、お前が女性からなにかを尋ねられた時、絶対に「どれでも」や「なんでも」は使うな。男ならビシッと何かを選ぶんだぞ』
『あ、あぁ……』
くそ……!まさかあの時、(悠介さんは熱く語りだしたらめんどくさいぞ)なんて思っていた会話の内容を実行する時が来るとは……!!
だから、そこで我はすぐに周りを見渡すと――
「あ、あれだ!!あのアトラクションに乗りたかったのだッ!!」
勢い任せに指をひとつのアトラクションに指した。
「あぁ、あのカップに乗って回るやつですね!魔王さんってそういうの好きなんですね」
「お、おかしいか?」
「いえ、ただその、「可愛いな」って思っただけです」
「……ッ!?」
「まぁ私も好きなんで、乗りましょう」
「あ、あぁ」
こうして我とえなは、カップに乗って回るという、よく分からないアトラクションに乗る事になった。
ま、まぁ見た目は可愛いし、おそらくは大丈夫だろう。
♦♦♦♦♦
それから、我とえなはカップのアトラクションを待つ列に並び、数分後遂に乗れる番が回って来た。
このアトラクションは他のと比べて並んでいる人数が少なかったな。まぁ、早く乗れるならそれで良いが。
「ここに、我とえなが座るのか?」
「はいっ!あぁ、久しぶりだなぁ~……!」
アトラクション内に入ると、そこを仕切っていた人間が我とえなをひとつの巨大なカップの中へと誘導する。
中は、周りが全て座れる様になっており、真ん中に円形のハンドル(何に使用するから謎)があるという作りだ。
ま、まさか、ただここに座ってえなと話すだけのアトラクションとか、そんなのではないだろうな……?
だとしたら周りに比べて人が少ないのにも納得が行くし、なによりもこれに付き合ってくれているえなに申し訳ないぞ。
しかし、そんな我の考えは良くも悪くも裏切られる事になる。
「ほら!始まりますよ!」
「始まる?なにがだ?――って、うぉ!?」
なんとその瞬間、軽快な音楽と共に我とえなの乗っているカップが回り、動き始めたのだ。――って、なんなのだこれは!?!?
「お、おいちょっとなんだこ――」
「ほらほら!もっと回しますよっ!!」
しかし、そんな我の問いに答えようともせず、えなは中心のハンドルを握ると――
お、おい……まさかそれを回したら――
「う、うぉぉぉぉぉぉぉ!?!?」
そこでカップは先程とは比べ物にならない速度で回転を始めた。
「ふぅ!!楽しいっ!!」
「と、止めるのだえなッ!?だ、誰か助けてくれぇッ!?」
この後も数分間悪夢を見る我であった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる