【悲報】魔王の我、日本に転移し数日目、一目惚れの女に『我の女になれ命令』するもあっさり振られる。ここから始まった生まれて初めての恋愛奮闘記。

カツラノエース

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第22話だぞ【当日】

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 そして一週間後、予定通り長期休暇に入った1日目の早朝に我はカバンに色々と物を詰めていた。

「リオンで買った水着にお金。着替えと、サンドイッチは――今食べるとするか」

 いや、日帰りでは無いこの様なイベントは我にとっては今回で初めて。だから何を持って行けば良いのかがイマイチよく分かっていないのだがこれで大丈夫だろうか?

 (まぁだが、昨日の夜にゆうりからメッセージで持ち物はそこまでいらないと言われているし、なんとかなるだろう。)

 すると、そこで扉の外から、

「おい、起きてるか?迎えに来たぞ。」

 悠介さんの声が聞こえた。
 お、もうそんな時間か。

「起きているぞ。今出るから少し待ってくれ。」

 そこで我はカバンを閉めると、それを持って口に咥えていたサンドイッチを中へ押し込みながら立ち上がり、扉の方へ歩いて行く。

 そう、今日はいつものゆうり、えな、我ともうひとり――悠介さんも参加するのだ。(ゆうり曰く運転手要員だそうだが)

 ガチャ

「おはよう、悠介さん」
「あぁ。ではゆうりとえなふたりを迎えに行くぞ」

 こうして我と悠介さんはアパートのすぐ前に停めてある車の方へ、錆びた鉄の音を早朝の街に響かせながら歩いて行った。

 ♦♦♦♦♦

 そしてそれからふたりとの合流場所だった会社前で車に乗せ、合計4人になってから数時間走り続けると――

「こ、これがこの世界の海か……!!」

 遂に窓から、真っ青な海が見えて来た。
 これは素晴らしいぞ……!快晴の空の光を見事に映しだしているな……!
 
「なに?魔王って海見るの初めてなの?」
「いや、元居た世界も合わせると初めてでは無い。」

 だが、だからと言って森の奥に城を持っていた我はそこまで海にも行かなかったし、この世界の今見た海の方が断然、綺麗なのだ。(我の海のイメージは巨大な海モンスターがうじゃうじゃ居るイメージだから余計)

「それに、今日行くビーチは実は波が若干強く、そしてすぐ近くにもっと有名なビーチがあるという理由で人が少ない。存分に遊べるぞ。」
「そうなのか、詳しいな。悠介さんは。」
「まぁ、下調べくらいは軽くする。それにもう聞いているだろうが今回泊まるビーチのすぐ横にある旅館は俺たちの親戚がやっていてな、小さな頃から何度も来ている。」

 あぁ、そう言えばそんな事も言っていた気がするぞ。

「とにかく!!楽しみですね!魔王さんっ!」
「あぁ……!」

 よし、今日は楽しむとするぞ……!!


 そして、それから海に着いた我たち一行は早速水着に着替える事になった。――のだが、

「お、おい悠介さん……本当にこの世界の人間はこの様な格好で外を出歩くのか……?」
「なにを言っている。水着なのだから当たり前だろ。」

 我は実際に着てみて、改めてこの姿に恥ずかしくなって来た。
 だ、だってこんなのほとんど下着のみと変わらんではないか。

「でも、恥ずかしがっている割には結局筋肉あるんじゃないか?」
「ま、まぁ我は魔王だ。それに魔族は全員こんな感じだぞ?」
「俺はその魔族を見た事がないんだが――まぁ良い。ほら、荷物はこのロッカーに入れろ。おそらくもう女子は外で待っているぞ。」
「ちょ!?引っ張るのではない!?」

 こうして水着に着替え終わった我て悠介さんは更衣室を出る。
 すると、外に出るとそこには、

「お!やっと来たわね。遅いわよ~!」
「あ!悠介さんに魔王さんっ!」

 前リオンで買った純白のワンピースタイプの水着を着たえなと、真っ赤な肌の露出が凄く多い水着を着たゆうりの姿があった。
 
「あ、あが……!?」

 や、やばい……!?なんだあのゆうりの姿は……!?
 あいつ……恥ずかしくないのか……?やはり頭のネジが外れているのか……(いや、でも他に居る女子たちも皆同じ感じだな……)

 それに――え、えなの水着……ッ!!
 ただ水着を見ただけだと着た姿をイメージ出来ていなかったがまさか……!ここまで可愛いとは……!!

 雲ひとつ無い快晴の空から差し込む光が純白な水着とえなの絹の様な肌を照らして――最高だぞ……!!

「ん?なにぃ?アンタぁ、そんなジロジロえなの事見て、どうしたのかしらぁ?」
「あッ!?み、見ていない!!見ていないぞ!?――」

 途端に頬が赤く染まり、顔を我から背けるえな。
 く……ゆうりめ……!!

「と、とにかく!!今日は遊ぶのだろ?ほら!早く行くぞ!!」
「ふふっ、あいつ、魔王の癖に女子の耐性ゼロなんだから」
「な、何か言ったか!?」
「いや、なんでもないわよ。ほらえな、兄貴。いきましょ」
「あ――はいっ!」「あぁ」


 そしてそれから我たちは海に入り、泳ぎ始めた。

「ぷはぁ!最初は海なんてそこまで良いイメージは無かったが、これは良いぞ!熱い身体を水が冷やしてくれる!」

 それに、泳ぐというのも中々に楽しいではないか!!
 すると、そこで後ろを泳いでいたゆうりが、

「ちょ!アンタ早いわよ!」

 必死に両手両足を動かしながらこちらへ向かって来た。

「ん?早いか?我、泳ぐの初めてだぞ?」
「はぁ?ホントに言ってんの?」
「あぁ」

 ん?なんだ?ゆうりのやつあからさまに引いているぞ。

「良いわね魔王は元々の身体能力が高くてッ!!」
「な、なに怒っているのだ……?」
「あたし、これでも子供の頃はずっと水泳習ってたのよ?」
「?」
「あ、あぁ。アンタ水泳知らないわよね。まぁ良いわ。そろそろ上がって、別の事をしましょう。それなら絶対負けないわ。」
「了解だ。」

 そう言えばえなや悠介さんも泳ぎが苦手なのか、全然海に入らないしな(えなはずっと砂で山を作って遊んでいて、悠介さんはひたすら食べ物を食べてる)
 よし、他の遊びとやらにも付き合ってやろう。

 そして、その後もさまざまな遊びをし、気付けば夕方――

「はぁ!沢山遊びましたね魔王さんっ!」
「あぁ、あのビーチバレーというのは中々に楽しかったぞ。――って、な、なに黙っているのだ?ゆうり。」
「はぁ……いや、アンタいくらなんでも運動神経良すぎでしょ……スポーツでコテンパンに負かしてやろうなんて考えたあたしがバカだったわ」

 そう、実はあの後も我は全ての遊びで一番ダントツに活躍していたのだ。
 ま!我は魔王!当然だな!

 だが、そんな結果にゆうりは悔しいらしく、それを見た兄である悠介さんは、

「おい、少しは手加減をしろ。給料を減らすぞ!」
「な、なんでだ!?ゆ、ゆうりだって本気で来いと――」
「だからってビーチバレーで5メートルくらい飛ぶのは反則でしょ!?」
「う、うぅ……す、すまない……」
「あれ、魔王さん本当に凄かったですよねっ!」
「そ、そうか?ま、まぁ我は魔王!カッコいいのは当然――」
 ゴツンッ!
「痛!?」

 はぁ……全く理不尽だ……はは、だがこの様な時間も幸せだ。
 
 そんなこんなで我たちは夕日を背に更衣室へ歩いて行った。
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