【完結】今後の鉈枠は、

ほわとじゅら

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第四章 言い掛かりを止めるには?

#11:訊きたいこと

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「あの、俺からも訊きたいことがあるんですけど、良いですか?」

「構いません。何でしょうか?」

 志多刑事が、ハキハキと対応してくれる。親身に細かく聞いてくれるから、俺からの質問にも答えてくれそうに感じた。

「俺。何で助かったのか全く覚えてないんです」

 ライブ配信中に、俺は鉈リスにハッキリと呼びかけた。全力で通報してくれ、と。

 そのあと激昂した女は俺の首を絞め上げようとした。だが致命傷にはならなかった。俺は左右に首を曲げて締め上げてくる女の力に、むちゃくちゃに抵抗したから。

 だから女は俺に殴る蹴るの暴行に直ぐ切り替えた、ところまでは記憶にある。そのあたりから、プツリと途切れているのだ。

 刑事は一旦、口を開きかけた。だが視線を俺から外して、チラッと別の方向に移動した。

 目の動きからして、俺の真横にいる方向は近江先輩が立っている――。

「何も聞いてないんですか?」

 志多刑事は俺と先輩を交互に見る。どうして先輩をチラチラ見るのだろうか。

「あなたの居場所を通報したのは彼です。近江さんが第一発見者だからです」

 は? 何だって?

 刑事の言ってる意味が分からなかった。

 *

 小さな振動が聞こえた。寺園刑事はジャケットの内側からスマホを取り出すと小声で志多刑事の耳元で何事かを囁いて、大股で歩いて病室から出て行った。

 何か重要な電話が掛かってきたようだった。

「あの、第一発見者って…」

 俺は志多刑事から近江先輩に視線を変えた。目が一瞬合ったが、先輩は直ぐに俺から女刑事に視線を移した。

「話していないんですか?」

 志多刑事は不思議そうな顔を浮かべて、俺ではなく先輩に質問を投げた。

「あ、まだ…えっと、どっから話せばいいのか」

 “どっから”―――というのは、どういう意味だろうか。

「え。待って。何。どういうこと?」

 謎のアイコンタクトを感じたからだ。先輩は、しきりに刑事と俺を交互に見るように視線が泳いでいる。

「先輩?」

 近江大らしくない。いつもの堂々とした佇まいで店のキッチンに立つパティシエとして頼もしい先輩には見えなかった。少し緊張しているのか、どこか落ち着きのない態度が気になった。

「先輩が俺を発見してくれたって本当ですか?」

 見つけてくれたのなら、先輩は命の恩人だ。助けてくれたのなら、おどおどする必要はない。

「えっと、まぁ…その、なんだ…あー、見つけたのは俺だけど、でも正確に言えば、宗武を発見できたのは俺じゃないんだ」

「どういうことっすか?」

 先輩は一度大きく息を吸い込んで吐いた。

「宗武を見つけられたのは追跡したからだよ」

「追跡?」

 先輩は深く頷いた。

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