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第四章 言い掛かりを止めるには?
#10:質問攻め
しおりを挟む「俺が『過去の配信』で、と言ったら『お前の所為だ!』って連呼するように怒鳴って、すぐ殴られたんですけど。そのときピンと来たんです。リスナーと、よく揉め事を起こして裁判や警察沙汰になるから相場が灘広という配信者が一番有名で。だから俺は、灘広と間違って拉致されたと思いました」
「配信者は他にも沢山いるのに、どうして灘広さんって方と間違われたと確信持って言えるんですか?」
寺園刑事には、イマイチ納得いかないようだ。
「チャンネル名が漢字一文字である上に、俺と呼び方が少し似ているので、間違ってリスナーが配信を荒らしにくることもあるんですよ。最新の動画のアーカイブ残ってるんで調べてみてください」
少し前にやった配信で、リスナーから1ミリーの投げ銭付きで悩みを募ったときだ。〈人生狂わされたから謝罪しろ!〉と書かれた。あのコメントも灘広と揉めたリスナーかどうかは厳密には分からない。しかし俺の直感がそう感じた。
「なるほど。検討は付いていたんですね。少し話は戻りますが、運ばれたあとで気が付かれたときの状況を、もう少し詳しく教えていただけませんか?」
丁寧に志多刑事から質問が飛んできた。
「覚えていることですか。えーと、気付いたら何か薄暗い鉄筋コンクリートみたいな部屋と言うか、何もない廃墟と言うか、どっかの建物にいました」
「拉致されて移動する際、途中で気が付かれたということも本当に、なかったんですか?」
寺園刑事が、話に割って入って来た。
見知らぬ建物にいたと話したばかりなのに、俺が非力そうな女に襲われたから、途中で逃げ出せたのではないか注意深く疑っているようだ。
「ないです。全然ない!」
重大な事件に巻き込まれたから、細かい質問攻めだ。
「求宮さん。もう少し話をお聞きしたいのですが、この先は嫌なことを思い出すことになります。その前に休憩を取られますか?」
志多刑事から気遣う言葉で問われた。だが生きてるのが奇跡のように思えて、体に走る痛みはあるものの耐えられないほどじゃない。出来る限り答えられる質問には応じようと思った。
「いえ、まだ大丈夫です!」
「ありがとうございます。では続けます。全然知らない建物にいたときのことですが、自分から目が覚めるように、どこかの建物にいると気づいたのでしょうか?」
「あ、違いますね。俺、女の人に叩かれて強制的に目を覚まされたんです。頭とか顔とか叩かれたし、体中痛くて。多分、気を失ってるとき、体も叩かれたみたいです。目が覚めたとき、配管に縛り付けられてました」
「どういうもので縛っていたのか覚えてますか?」
「覚えてますよ。白い紐っていうかコードみたいなもので自分自身がグルグル巻きになってて全然解けなかった。胸と手首と両足の三か所全部」
「身動きが一切できなかった?」
「ムリっすね。背中側にあった配管に超きつく括り付けるように縛られてたから」
「立ち上がって逃げ出すことが、まったくできなかったということでしょうか?」
「できないっす。てか俺のことを拉致した女の人ですけど、起きたら殺すの一点張りでしたよ!」
「話を聞いてくれるような感じではなかった、ということですね?」
「まったく取り合ってくれませんでした。室内に角材もあって殴ってこようとして、俺は灘広じゃないって言っても全然通じなくて。灘広だと思い込んでる。だから俺は咄嗟にライブ配信で公開謝罪したいって言いました」
「あ、それでライブ配信を敢行されたんですね!」
興味深そうに志多刑事が何度か頷いた。
「はい」
「でも激昂していた相手が、なぜ公開謝罪をすぐ受け入れてライブ配信に応じたのか、少し疑問があります。角材まで手にして殺す直前に、あなたの要求に従った。そのときの経緯を、できれば細かく教えていただけますか?」
俺は事の仔細を伝えた。女を上手く誘導して、配信上で弁明するというハッタリが通じて配信ができたことだ。もちろん賭けでもあることも含めて。俺の緊急ライブ配信からの通報で運営やリスナーが警察に伝えて、俺を探し出してくれたのだろうから。
だから、ふと疑問に思う。
今度は、こちらから訊きたくなった。
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