【完結】今後の鉈枠は、

ほわとじゅら

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第四章 言い掛かりを止めるには?

#17:過去の油断

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 咳払いが聞こえた。直ぐ傍には志多刑事がいるのに、近江先輩は俺の居場所を特定していたと発言したのだ。

「あっ! 今のは先輩の言葉のあやっていうか!」

 慌てて弁解したが、女刑事は小さく噴き出すように笑った。

「ええ。知ってます」

 そんなことは把握済みだという顔だ。口角を上げて微笑む刑事は、俺の予想しないことを先に口走った。

「警察に一度来ていただいて相談されましたから」

「相談!」

 すぐ振り返り視線が合うと、先輩は罰が悪そうに頭を掻いた。

「オフ会に参加したとき知り合った人たちと、警察にも行って相談したんだ。参加メンバーは女子高生、主婦、サラリーマン、それと大学生だった。バカ正直にいろいろと警察で話しちまったんだけどな。ちなみに住所を突き止めたのはアプリじゃない。メンバーの一人が宗武と同じマンションに住んでる」

「え…まじ!?」

 先輩は深く頷いた。

「ああ。毎日お前のことを見かけてるから住んでる部屋番号まで知ってた。一緒に、智景くんという男の子と同居してることも知ってた。あと紫煙さんのことも」

「じゃ、じゃあ先輩は元々全部知ってたんですか!」

「俺が全部を把握できてるかは分からないけど、再会する前から、いろいろと聞いてはいた。それにシェアキッチンで時々ランチやディナー用にテイクアウトもしてたよな?」

「え。まぁ、してたけど」

「カレーとかパスタとか取りに行くときに、鍵を掛けずに家を出たことも覚えているか?」

 俺は自分の行動を常に意識してるわけじゃない。いちいち覚えてなどいない。だが、うたた寝をして注文していた弁当を取りに行くのに、ウッカリ遅れたことは何度かある。

「えっと…いや、わかんない。なんで?」

「鍵を掛けずに慌てて部屋から飛び出すことが何度かあったんだろ? その隙を狙って部屋が近い鉈リスが忍び込んだんだよ。スマホも置きっぱなしで。位置情報のアプリを短時間で仕込むのは簡単だと言ってた」

「うわぁ。先輩、俺それ聞きたくなかったっす」

「気持ち悪いよな。でも犯人が捕まったらキチンと綺麗にするって言ってた。結局、押収されちまったけど」

 ハッとして俺は刑事を見た。

「すみません。あなたが救急車で運ばれる際、鑑識に押収させました。暫くは返却できません」

 申し訳ない表情で志多刑事は謝罪した。

「そ、そうですか。そういや何か忘れてるなって思ってました。俺、拉致されてから何も呟いてないんだよな…」

 今更だが起きたばかりなのだ。一週間近く目覚めなかったということは、SNSも更新していないことになる。

「あ、てか俺が一緒に同行してないのに、先に警察に相談したって意味ないじゃないですか! 俺の部屋まで知ってたんなら、リスナーの誰かが伝えに来てもらえれば、俺だって何がしか対応はしたぞ!」

「リアル凸ができれば、とっくのとうにしてるさ。でも厄介なリスナーだって絶対に思われる。皆んな本人には直接面と向き合って言えないんだってさ。住んでるマンションに推しがいるとか、部屋番号まで把握してるとか。普通にヤバいだろ?」

 確かに。

「勿論。厳密には被害が何も起きてないときから、警察に相談したところで動けないと言われたよ。粘って鉈リスたちが窓口をかなり占拠してたから、奥から志多刑事が応対に出てくれた。何かあったら直ぐ駆けつけるから連絡してって言われて、みんな渋々帰った。だけど位置情報のことを、俺はこっそり伝えた。鉈リスの暴走で宗武に凸る可能性もゼロじゃない。揉めて怪我でもしたら嫌だったし」

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