84 / 114
第四章 言い掛かりを止めるには?
#17:過去の油断
しおりを挟む咳払いが聞こえた。直ぐ傍には志多刑事がいるのに、近江先輩は俺の居場所を特定していたと発言したのだ。
「あっ! 今のは先輩の言葉のあやっていうか!」
慌てて弁解したが、女刑事は小さく噴き出すように笑った。
「ええ。知ってます」
そんなことは把握済みだという顔だ。口角を上げて微笑む刑事は、俺の予想しないことを先に口走った。
「警察に一度来ていただいて相談されましたから」
「相談!」
すぐ振り返り視線が合うと、先輩は罰が悪そうに頭を掻いた。
「オフ会に参加したとき知り合った人たちと、警察にも行って相談したんだ。参加メンバーは女子高生、主婦、サラリーマン、それと大学生だった。バカ正直にいろいろと警察で話しちまったんだけどな。ちなみに住所を突き止めたのはアプリじゃない。メンバーの一人が宗武と同じマンションに住んでる」
「え…まじ!?」
先輩は深く頷いた。
「ああ。毎日お前のことを見かけてるから住んでる部屋番号まで知ってた。一緒に、智景くんという男の子と同居してることも知ってた。あと紫煙さんのことも」
「じゃ、じゃあ先輩は元々全部知ってたんですか!」
「俺が全部を把握できてるかは分からないけど、再会する前から、いろいろと聞いてはいた。それにシェアキッチンで時々ランチやディナー用にテイクアウトもしてたよな?」
「え。まぁ、してたけど」
「カレーとかパスタとか取りに行くときに、鍵を掛けずに家を出たことも覚えているか?」
俺は自分の行動を常に意識してるわけじゃない。いちいち覚えてなどいない。だが、うたた寝をして注文していた弁当を取りに行くのに、ウッカリ遅れたことは何度かある。
「えっと…いや、わかんない。なんで?」
「鍵を掛けずに慌てて部屋から飛び出すことが何度かあったんだろ? その隙を狙って部屋が近い鉈リスが忍び込んだんだよ。スマホも置きっぱなしで。位置情報のアプリを短時間で仕込むのは簡単だと言ってた」
「うわぁ。先輩、俺それ聞きたくなかったっす」
「気持ち悪いよな。でも犯人が捕まったらキチンと綺麗にするって言ってた。結局、押収されちまったけど」
ハッとして俺は刑事を見た。
「すみません。あなたが救急車で運ばれる際、鑑識に押収させました。暫くは返却できません」
申し訳ない表情で志多刑事は謝罪した。
「そ、そうですか。そういや何か忘れてるなって思ってました。俺、拉致されてから何も呟いてないんだよな…」
今更だが起きたばかりなのだ。一週間近く目覚めなかったということは、SNSも更新していないことになる。
「あ、てか俺が一緒に同行してないのに、先に警察に相談したって意味ないじゃないですか! 俺の部屋まで知ってたんなら、リスナーの誰かが伝えに来てもらえれば、俺だって何がしか対応はしたぞ!」
「リアル凸ができれば、とっくのとうにしてるさ。でも厄介なリスナーだって絶対に思われる。皆んな本人には直接面と向き合って言えないんだってさ。住んでるマンションに推しがいるとか、部屋番号まで把握してるとか。普通にヤバいだろ?」
確かに。
「勿論。厳密には被害が何も起きてないときから、警察に相談したところで動けないと言われたよ。粘って鉈リスたちが窓口をかなり占拠してたから、奥から志多刑事が応対に出てくれた。何かあったら直ぐ駆けつけるから連絡してって言われて、みんな渋々帰った。だけど位置情報のことを、俺はこっそり伝えた。鉈リスの暴走で宗武に凸る可能性もゼロじゃない。揉めて怪我でもしたら嫌だったし」
19
あなたにおすすめの小説
僕の恋人は、超イケメン!!
刃
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?
ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる
cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。
「付き合おうって言ったのは凪だよね」
あの流れで本気だとは思わないだろおおお。
凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
【完結】抱っこからはじまる恋
* ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
雪解けを待つ森で ―スヴェル森の鎮魂歌(レクイエム)―
なの
BL
百年に一度、森の魔物へ生贄を捧げる村。
その年の供物に選ばれたのは、誰にも必要とされなかった孤児のアシェルだった。
死を覚悟して踏み入れた森の奥で、彼は古の守護者である獣人・ヴァルと出会う。
かつて人に裏切られ、心を閉ざしたヴァル。
そして、孤独だったアシェル。
凍てつく森での暮らしは、二人の運命を少しずつ溶かしていく。
だが、古い呪いは再び動き出し、燃え盛る炎が森と二人を飲み込もうとしていた。
生贄の少年と孤独な獣が紡ぐ、絶望の果てにある再生と愛のファンタジー
イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした
天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです!
元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。
持ち主は、顔面国宝の一年生。
なんで俺の写真? なんでロック画?
問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。
頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ!
☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
ざこてん〜初期雑魚モンスターに転生した俺は、勇者にテイムしてもらう〜
キノア9g
BL
「俺の血を啜るとは……それほど俺を愛しているのか?」
(いえ、ただの生存戦略です!!)
【元社畜の雑魚モンスター(うさぎ)】×【勘違い独占欲勇者】
生き残るために媚びを売ったら、最強の勇者に溺愛されました。
ブラック企業で過労死した俺が転生したのは、RPGの最弱モンスター『ダーク・ラビット(黒うさぎ)』だった。
のんびり草を食んでいたある日、目の前に現れたのはゲーム最強の勇者・アレクセイ。
「経験値」として狩られる!と焦った俺は、生き残るために咄嗟の機転で彼と『従魔契約』を結ぶことに成功する。
「殺さないでくれ!」という一心で、傷口を舐めて契約しただけなのに……。
「魔物の分際で、俺にこれほど情熱的な求愛をするとは」
なぜか勇者様、俺のことを「自分に惚れ込んでいる健気な相棒」だと盛大に勘違い!?
勘違いされたまま、勇者の膝の上で可愛がられる日々。
捨てられないために必死で「有能なペット」を演じていたら、勇者の魔力を受けすぎて、なんと人間の姿に進化してしまい――!?
「もう使い魔の枠には収まらない。俺のすべてはお前のものだ」
ま、待ってください勇者様、愛が重すぎます!
元社畜の生存本能が生んだ、すれ違いと溺愛の異世界BLファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる