【完結】今後の鉈枠は、

ほわとじゅら

文字の大きさ
99 / 114
最終章 想いを告げるにはどうすれば?

#06:最悪な電話

しおりを挟む


「あ、それより忘れ物はないよな?」

 列が進んで、先輩はカバンからパスポートを取り出した。

「ないよ先輩。大丈夫。えっとそうだ、預けるのはスーツケースだけだったよね?」

「ああ。スマホとかノートパソコンとかは手荷物だからな?」

「分かってるよ!」

「それと液体類は100ML以上あるのは手荷物にできないからな?」

「荷物まとめてるときに百回は聞いた!」

「あと常備薬。腹とか頭痛くなったりしたら、いつも飲んでるやつとかは持ってきたか?」

「一応ね。持ってきた。パスポートは入れたし、財布も鍵もあるし完璧だって!」

 あと一人だ。まもなく自分らの番である。

 もうすぐだってのに、ポケットに入れていた俺のスマホが震えた。

「げ。マジかよ…」

 取り出して表示された名前を見る。何故、今このタイミングなのだろうか。急に気分が悪くなってきた。

「宗武、電話来てるぞ。出ないのか?」

 怪訝けげんな顔で先輩が指摘する。

 俺はスマホを近江先輩に見せた。

「灘広から。出なくて良い?」

 目の前にいた人がいなくなり、先輩は自分と俺の分のスーツケースを引いてくれた。

「俺たちが利用するのは、有人じゃなくて無人のセルフチェックインの方だから。ほら、パスポート貸せよ。タグプリントしてスーツケースを預けるだけだし。ちゃちゃっと、やっておくから」

 どうやら電話には出ろという意味らしい。

「はーい。じゃあ、パスポートこれなんで」

 手渡してから、俺はスマホの通話に出た。

「はい」

『おお。ようやく出たか!』

 前回、会ったのは病室だった。俺の見舞いとして病室に来た灘広に、ある意味起こされて最悪な目覚めとなった。

 連絡くれとは言われたが、関わらないことがベストだと思ったから、あれ以来、会ってもいないし会話もしていない。配信を挟んで連絡を取り合ったこともない。

「なんだよ灘広?」

 俺は、こいつがしたことを許していない。3年前にオフで記念写真に応じた俺の顔を無断で配信に載せたからだ。他にも自分の配信で匂わせ発言をしたり、チャンネルページの動画の画像を俺のチャンネルに寄せて真似たりなど。

 キモすぎる行動すべてが憎い。

『いやいやいや。日本を発つっていうからさ、その前に言いたいことがあって!』

「言いたいこと?」

『そうだよ。なんか、あらゆる誤解が生じてるみたいだからさぁ、オレの配信に鉈リスの奴らが〈鉈ちゃんを巻き込まないでよ!〉ていうコメを未だに書き込んでくるからよう。ちょっと言っておこうと思って!』

 事件以降、俺の配信は以前よりも数字の伸びは高くなった。本名も顔も、ついでに家バレもしたわけで、隠すものがなくなって、心配した鉈リスや、最近登録してくれた新しいリスナーたちから同情的な言葉や応援が多くなった。

 もちろん反対に、俺が灘広の代わりに拉致されて暴行されたことで、怒ったリスナーたちが定期的に灘広のチャンネルを荒らしていることも知っている。止めるようにSNSでも、配信でも言ってはいるが一向に止まないから、どうしようもない。

「誤解も何もニュースや雑誌で報じられちゃいましたからね。間違われて拉致暴行。そうなるように仕向けておいて今更なんだよ?」

『いや誤解だって! 鉈ちゃんを守ろうと、オレだって手を尽くしたりとかもしたんだよ?』

 手を尽くす。自分の身を守るために手を尽くしたのでは、と逆に詰め寄りたかったが早く電話を終わらせたくて、深く突っ込むのは止めておいた。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

僕の恋人は、超イケメン!!

BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる

cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。 「付き合おうって言ったのは凪だよね」 あの流れで本気だとは思わないだろおおお。 凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

【完結】抱っこからはじまる恋

  *  ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。 ふたりの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります。 YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。 プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら! 完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

雪解けを待つ森で ―スヴェル森の鎮魂歌(レクイエム)―

なの
BL
百年に一度、森の魔物へ生贄を捧げる村。 その年の供物に選ばれたのは、誰にも必要とされなかった孤児のアシェルだった。 死を覚悟して踏み入れた森の奥で、彼は古の守護者である獣人・ヴァルと出会う。 かつて人に裏切られ、心を閉ざしたヴァル。 そして、孤独だったアシェル。 凍てつく森での暮らしは、二人の運命を少しずつ溶かしていく。 だが、古い呪いは再び動き出し、燃え盛る炎が森と二人を飲み込もうとしていた。 生贄の少年と孤独な獣が紡ぐ、絶望の果てにある再生と愛のファンタジー

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

ざこてん〜初期雑魚モンスターに転生した俺は、勇者にテイムしてもらう〜

キノア9g
BL
「俺の血を啜るとは……それほど俺を愛しているのか?」 (いえ、ただの生存戦略です!!) 【元社畜の雑魚モンスター(うさぎ)】×【勘違い独占欲勇者】 生き残るために媚びを売ったら、最強の勇者に溺愛されました。 ブラック企業で過労死した俺が転生したのは、RPGの最弱モンスター『ダーク・ラビット(黒うさぎ)』だった。 のんびり草を食んでいたある日、目の前に現れたのはゲーム最強の勇者・アレクセイ。 「経験値」として狩られる!と焦った俺は、生き残るために咄嗟の機転で彼と『従魔契約』を結ぶことに成功する。 「殺さないでくれ!」という一心で、傷口を舐めて契約しただけなのに……。 「魔物の分際で、俺にこれほど情熱的な求愛をするとは」 なぜか勇者様、俺のことを「自分に惚れ込んでいる健気な相棒」だと盛大に勘違い!? 勘違いされたまま、勇者の膝の上で可愛がられる日々。 捨てられないために必死で「有能なペット」を演じていたら、勇者の魔力を受けすぎて、なんと人間の姿に進化してしまい――!? 「もう使い魔の枠には収まらない。俺のすべてはお前のものだ」 ま、待ってください勇者様、愛が重すぎます! 元社畜の生存本能が生んだ、すれ違いと溺愛の異世界BLファンタジー!

処理中です...