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最終章 想いを告げるにはどうすれば?
#16:届かなかったメッセージ
しおりを挟む「わかんねぇよ? もしかしたら相談に来るかもしれない」
望みのない未来を先輩が口走る。もし本当に来たら真剣に取り合うけれど、ゲーム配信を既に諦めた俺ができる助言など限られるだろう。
「まさか! 盤さんが…あ、さっきのデカい背の配信者の名前ですけど、そんな人が俺のところに来るわけないですよ。来たって、俺ができることは悩みを聞くことだけしかできないし」
「そんなことないだろ。もう50万人もいるじゃないか。少なくとも、お前のために集まった予約客の鉈リスたちは過去のアーカイブを何回も見直してる。集まった皆んなで視聴会やって親睦を深めるのが常なんだって」
「まじすか。俺のこと何度も見てくれているのか。てか、100人くらいでしたっけ。俺が拉致されたとき誰も見てなかったのか、今でも不思議なんですけど!」
入院中、ぼんやりと事件のことを頭の中で、ゆっくり振り返ってみた。街中の防犯カメラに映っていた俺を載せた台車を女が押している姿を守る会の鉈リスたちは誰も目撃していないなんて。
「そりゃムリがあるさ。100人といっても宗武のいる住まい周辺、近辺には住んでいないんだから」
「え。そうなんですか?」
「顧客情報だから、ここだけの話。ざっくり言うと、殆ど8割くらいは地方住まい。残りが都内。すぐ近くにいた鉈リスは、お前が住んでたマンションに一人だけ。そいつだって普通に生活がある。四六時中、見張ってるわけじゃない」
「あ、なるほど!」
「それより俺は鉈リスの女の子たちに責められたよ『SNSのDMは開放されているのに、まったくコンタクトが取れないんですか?』って」
「DMにって、先輩、メッセージを送ってくれていたんすか?」
何度か浅く頷かれた。俺は先輩からのメッセージを過去に受け取っていたらしい――。
「帰国前に一度。帰国した直後にも送った」
「あ! もしかして灘広に関するワードでメッセージを送ってきたりしてません?」
「まさかDMもか!」
直ぐに先輩は察したようだ。
「俺。DMでも灘広のワードがメッセージを開く前に見えたら、読まずに消してるんですよね。厄介な嫌味とか送ってくる奴もいるから、目にしたくなくて」
お悩みフォームからのメッセージだけではなく、もちろんSNSのDMも同じである。
「なるほどね。俺は、宗武が今や人気配信者になったからDMが殺到して読めてないんだろうなって勝手に思ってた」
互いに色々とすれ違いが起きていたようだ。一歩間違えれば、俺は死んでたかもしれなくて、もう先輩には会えなかったかもしれない。暴行を受け意識が飛んで遠くから俺のことを呼ぶ先輩の声が聞こえたような気もしたが、夢の中で聞こえた声は間違いなく今横に並んで歩いてる彼だと思う。
本当かどうか、もう確かめようがないけど、これから心配掛けた分は返していきたい。
「そうだ、先輩。俺、前に聞きましたよね?」
「何を?」
「何か悩みがあるなら教えてくださいって。お悩みフォームに投げてくれるのも良いけど、俺に直接言ってくれても良いんですよ?」
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