配信の果て

ほわとじゅら

文字の大きさ
208 / 402
不穏なスタート

今日の夕飯

しおりを挟む


 さり気なく自社の開発環境を話題に出してきた。やはり俺にヘッドハンティングの匂わせをしているのだろうか。そうとしか思えないが。

「へぇ。そうなんですね」

「しかしですよ。それで宇多野さんがサンライブに勉強期間として加入したというのは、どういった面で勉強と言うんでしょうか?」

「ああ、別にナインズのようなゲーム開発をする部門ができたとかじゃないんですよ。単純に、宇多野自身の社会人経験が浅くて、バス会社勤務だけでは見識を広げられないから会社に所属して社会人経験を再度積むのに適しているから提携を決めたんです。ここから先は俺の勝手な想像ですけどね、身内の会社なら小さなヘマをしても許されるから。でもサンライブにも旨味がほしい。だから独占試遊を宇多野は許可したんです」

「ふーん。大事な提携なのに、その理由は、宇多野さんから二川さんに教えてくれるわけじゃないんですか?」

「まぁ、この際、ここで会いましたのも縁ですから正直な話を教えます。提携の話が、ほぼ決まってから宇多野は俺に打ちあけてくれたんです。提携の話は何も相談がなかったんで」

 目をまあるくさせた与田は、びっくりしたような表情に変わった。

「なんと。もう決まってた話だったんですか!」

 ワザとらしいほどに俺は何度も深く大きく頷いた。

「そうなんです。だからサンライブでの配信経験を積んだあとで、多分ですけど、業界系あるいは仕事系とか、社会人の暮らしあるなるなゲームを開発する予定なのかもしれません。脳みそは宇多野ですから」

「ひゃああ。そんな次のゲーム開発の案まで教えてくれちゃうんですか!」

 与田が自分の口元を抑えるようにしながら、耳を傾けるように若干身を乗り出してきた。

「俺のただの想像に過ぎません。何度も与田さんからメールで、お声を掛けていただいているのに石頭の宇多野が無下に断りを入れて本当にすみません。一度お話を彼も聞けば何か変わるかもしれなかったのに」

 身を乗り出してきた与田は元の姿勢に戻った。少しもじもじとして苦笑を浮かべた。

「いやいや謝らないでください。なんか二川さんとは凄く話が合うなぁと感じます。いずれどこかで仕事がご一緒できたらと思います。あ、いけない。私、会社に戻らないと」

 与田は伝票をさっと持ち上げて席を立った。

「急なお声がけをして申し訳ありません。宇多野さんによろしくお伝えください。それではまた、どこかで!」

 椅子に掛けていたジャケットを腕に掛け直して、腰を曲げるようにお辞儀をした与田はレジに向かい清算すると店を出て行った。

 俺から、あらかた聞き出してもう用はないと踏んだのか。突然の奇襲きしゅうを受けたが、トータルでみれば宇多野が何故サンライブに加入したのか把握するために声を掛けてきたのだろうか。せないが。

「はぁ。今日の夕飯、どうっすかなぁ」

 地下のコンコース内の寂びれた喫茶店で冷めたコーヒーを持ち上げて飲んだ。まずい味。

 すっかり乗っていた気分は、どこかに吹き飛んでしまい、何しに最寄り駅ではない新宿三丁目まで来たのか。

 結局、俺はデパ地下には行かず地元駅に真っすぐ帰り、いつものカップ麺をすすることにした。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

剣客居酒屋草間 江戸本所料理人始末

松風勇水(松 勇)
歴史・時代
旧題:剣客居酒屋 草間の陰 第9回歴史・時代小説大賞「読めばお腹がすく江戸グルメ賞」受賞作。 本作は『剣客居酒屋 草間の陰』から『剣客居酒屋草間 江戸本所料理人始末』と改題いたしました。 2025年11月28書籍刊行。 なお、レンタル部分は修正した書籍と同様のものとなっておりますが、一部の描写が割愛されたため、後続の話とは繋がりが悪くなっております。ご了承ください。 酒と肴と剣と闇 江戸情緒を添えて 江戸は本所にある居酒屋『草間』。 美味い肴が食えるということで有名なこの店の主人は、絶世の色男にして、無双の剣客でもある。 自分のことをほとんど話さないこの男、冬吉には実は隠された壮絶な過去があった。 多くの江戸の人々と関わり、その舌を満足させながら、剣の腕でも人々を救う。 その慌し日々の中で、己の過去と江戸の闇に巣食う者たちとの浅からぬ因縁に気付いていく。 店の奉公人や常連客と共に江戸を救う、包丁人にして剣客、冬吉の物語。

​『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』

月神世一
SF
​【あらすじ】 ​「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」 ​ 坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。  かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。  背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。 ​ 目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。  鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。 ​ しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。  部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。 ​ (……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?) ​ 現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。  すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。  精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。 ​ これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。

アズやっこ
恋愛
私は旦那様を愛していました。 今日は三年目の結婚記念日。帰らない旦那様をそれでも待ち続けました。 私は旦那様を愛していました。それでも旦那様は私を愛してくれないのですね。 これはお別れではありません。役目が終わったので交代するだけです。役立たずの妻で申し訳ありませんでした。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

処理中です...