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はじめまして
親切な態度
しおりを挟む「あ、そう、なんですか……」
「ええ。詳しくは述べられませんが、昨日は事務所、あ、探偵事務所の仕事帰りで駅前のカフェに立ち寄っていたんです。寛いでいるときに、御堂さんがカフェに入られるのが見えました。本当は声を掛けることなく、素知らぬふりして店を出ようと思っていたんですが、どうしてもいてもたってもいられず」
深刻そうに説明するので、疑問が湧いた。彼女は、私と彼のことに気付きながらも当初はスルーを決め込んでいたのだ。何故、声を掛ける態度に変わったのか。
「あの、いてもたってもいられず、というのは?」
先を言わず話しにくそうだったので、思わず聞いた。
「正直、申し上げるには非常に言い難いのですが、途中でトイレに行かれたあと、向かい合っていた男性の方が手に何かを持っていました」
「何かを?」
「それを、あなたの手元にあった水に入れて混ぜていました。御堂さんが戻られたあとに、水を飲みましたよね?」
水に何を混入させていた。そんな言葉を聞いて、ハッとした。店先で、急に頭が重たく感じたのだ。物凄い眠気に襲われて。
私は思わず口に手を当てた。
「私が言うのも何ですが、自分が関わる副業での仕事柄、十中八九よからぬ薬を入れたのではないかと勘が働きました。差し出がましいことではありましたが、何か嫌な予感がしたんです。だから、あなたを男性から引き離すことができればと思い切って声を掛けました。申し訳ありません」
彼女は深々と頭を下げた。
「いえ、良いんです。謝らないでください。なんかおかしいなと感じたんです。でも店を出た途端に頭が急に働かなくなって、体全体が凄く重くて動けなくなったから。あの、助けてくださり本当にありがとうございました!」
ようやく受付嬢が顔を上げた。頬が赤い。少し目に涙が溜まっているようだった。本気で心配してくれるような表情だ。
「そう言っていただけて、こちらこそ気が楽になりました」
「私を運ぶとき重かったと思います。それなのに部屋まで運んでくださり感謝しきれないです。朝、起きたときどうして部屋に帰ってきたのか理解が追い付かなかったので」
「ああ。そうですよね。ビックリしますよね。御堂さんを運ぶ前に、ちょっと鞄の中を物色しました。定期券入れに、運転免許証が入っていたのでマンションや部屋番号が分かりましたから」
なるほど。そういうことだったのだ。この人は、本当に親切な態度で私を助けてくれたのだ。
「そうだったんですね。ようやく納得できました。探偵事務所で副業していると聞きましたから、何か既に調べられているのかと思いました」
彼女は笑った。
「いえ。誤解を受けることもしばしばありますから」
「だけど小田原さんが助けてくれなかったら、どうなることか分かりませんでしたから」
「そういえば彼氏ではないと言ってましたもんね?」
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