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はじめまして
副業
しおりを挟む「体調は良くなりました。昨日は送っていただきありがとうございました」
キッチンのテーブルを挟んで彼女に紅茶を出した。小田原しずかは、御礼を口にするとカップを持ち上げて湯気の立つ紅茶に息を吹きかけながら一口飲んだ。
「体調が戻られて良かったです。今日は姿が見えませんでしたので、どうしたんだろうと思いました」
受付嬢だからこそ出勤しない社員のことは、やはり顔で覚えているようだ。普段から受付嬢のことは見ていなかったから、まったく気にしたことがなかった。
差し入れで、苺のフルーツを貰った。華田守には見舞いは不要だと伝えたが、風邪で休んだことを言い訳にしてズル休みをした。少し後ろめたさも感じて、私は彼女に向き直った。
「今日は、朝からちょっと熱っぽかったというのもあって会社には結局休みを取りました」
「あらら。そうなんですか!」
「はい。でも薬も飲んで気分も大分、楽になりましたから明日には出勤できると思います」
受付嬢はこくこくと頷いた。納得してもらえたようである。
熱もないので、薬など飲んではいない。嘘ではあるけれど、やはり私は思い直した。
紅茶を飲んだら帰ってもらいたい。店先で拾って貰い、どうやって家まで付いたのか詳細を聞きたい気もしたが、やはり思い直して訊ねるのはやめることにした。
岸光牙が、パンファミのリーダーだと知られていたら、また厄介なのだ。何かの拍子で元妻だと分かれば根掘り葉掘り聞かれるかもしれないからだ。それを考えると厄介だと感じた。
聞きたい気持ちをぐっと堪えて、彼女が紅茶を飲み終わるのを待った。
「御堂さん。今日は、あなたのことが心配なのでお見舞いとして訪ねましたが、やはり聞きたいことがありますのでよろしいでしょうか?」
「え?」
カップの中の紅茶が半分になったところで、小田原しずかが急に真剣な表情で私を真っすぐにみた。
「聞きたいこと、ですか?」
まさか昨日カフェにいた岸光牙のことだろうか。少し緊張が走るのを感じた。
「あ、すみません。そんなに警戒なさらないでください。えっと、先にこちらをお渡ししておきます」
彼女は持参して来た小さな黒い鞄の中から何かを取り出した。名刺ケースのようだ。
手渡された名刺を受け取り目を通してみた。
「あおやま探偵事務所、調査員?」
「副業で、そちらの仕事もしております。改めまして、はじめまして。私、石川しずかと申します。石川は旧姓で、昨年に結婚して小田原となりました。受付嬢は結婚後に採用されたので」
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