配信の果て

ほわとじゅら

文字の大きさ
274 / 354
白と黒

江藤光姫

しおりを挟む


 フシは両手を合わせた。

「ごめん。御堂さん! このことはフギにも本間さんにも、あと他の人にも黙ってて欲しい。お願い!」

 必死にお願いをされてしまった。フシの隣にいる女性は困惑する表情を浮かべていた。

「えっと、もしかして、こちらの方は、そのー」

「あ、あ、すみません。私は」

「こ、こちらの方は俺の彼女です。ミキさんです。光る姫と書いて、光姫みきさん!」

「どうも、御堂です。企画部の御堂紗由です」

「あ、どうも。江藤えとう光姫です」

 互いに自己紹介をしたが沈黙が降りた。会話が続かない。気まずい空気が流れて先に破ったのはフシだった。

「えっと、えっと、このあと用事あるんで、ま、また連絡しますね!」

 焦ったようにフシは手を上げて振ると、私に「ではサヨナラ!」と言葉を投げて彼女の手を握り走り去った。あっという間に二人は改札口を抜けて行き見えなくなった。

「あっ、しまった!」

 突然の出来事だったから菓子袋を渡しそびれた。仕方なくオフィスに戻ると華田から「え。会えませんでした?」と聞かれた。

「う、うん。会議室に行ったら駅に向かったって聞いて急いで走ったんだけど結局追いつかなくて」

「そうですか。じゃあ僕が手渡しておきますよ」

 菓子袋を華田に手渡したが、駅で会ったフシの彼女という存在が気になった。

 今日は、突然の来社であった。

 瞬時、私はピンと来てしまった。

 もしかしたらフシは彼女と会う約束をしていたため、ついでに職場見学と称して家から出る目的にしたのだろうか。

「御堂さん、どうしました?」

 私が、じっと菓子袋を見つめていたせいか華田は不思議そうな顔を浮かべた。

「あ、美味しそうだなって。そうだ。もう、お昼だね。今日は外で食べてくるね?」

「僕も行きます。ちょうど直した台本を寿々丘さんにメールで送ったところなんで」

「そうなんだ。お疲れさま。仕事が早いね!」

「いえいえ。いろいろと仕事を教えてくれる優秀な先輩がいるんで助かります」

 そんなことない。華田は思っていたよりも、仕事の飲み込みが早いのだ。資料のチェックも作成もスピーディーで文字の打ち間違いもない。

「華田君が優秀だからだよ。私なんか会社の共有フォルダの中から該当の資料を引き出すのに未だ時間が掛かるもの」

「あー、階層が深いと迷いますよね」

「何で華田君は資料を探すのに時間が掛からないのか凄く不思議で」

「慣れかな。ここに来て日は浅いけど、昔からパソコンのファイル整理とかは好きだったし、ファイル名の命名とか良くやってたんで。フシの配信初期なんかは、よくパソコンの整理を僕がやってたんですよ」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています

猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。 しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。 本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。 盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

処理中です...