63 / 82
トップ魔道士は転生オジサンのパーティーに加わりました/テーマ:旅は道連れ
2 トップ魔道士は転生オジサンのパーティーに加わりました
しおりを挟む
その日は宿に泊まり、翌日はまたも私の転移魔法を使用しました。
この国に来る際も転移魔法を使いましたが、このオジサンは私をこき使い過ぎじゃないですか。
そんなホイホイと魔法は安売りできないというのに。
テレマが「それくらいなら私が」と言ってくれましたが、やはり魔道士のトップである私がやらねばかっこがつきませんからね。
こうしてやってきた最後の国。
私はオジサンをリーレの元へ案内しました。
「おー、珍しい客だな!」
「リーレ、少し話があります。テレマも」
オジサンを一人残し、私は全てを二人に話しました。
「なるほどな。そういうことなら私もパーティーに加わろうじゃねーか」
「そうとは知らずに申し訳ありません。あの男性の力にも気づけないなんて……」
「気にしないでください。私もあのオジサンに捕まって偶然知ったようなものですから」
一通りの話を済ませ待たせていたオジサンの元へ戻ると、リーレもパーティーに加わることを伝えました。
ですが問題はこの後です。
一体今度は何をするつもりなのか。
三国全て回ってしまい、そのトップ魔道士を三人パーティーに加えた今、次にこのオジサンがすることなど見当がつきません。
また面倒な事を言い出さなければいいのですが。
なんて思っていた私の願いは打ち砕かれました。
事もあろうに魔王を倒すなんて言い出すんですから。
確かに数百年前に魔王はいましたが、私達魔道士が封印したので今は深い眠りについてます。
もしその魔王を眠りから覚ますなんてことになれば、数百年前の悲劇がまた起きてしまう。
封印される前の魔王は、三国全ての国を滅ぼしかけたのですから。
ギリギリのところでようやく封印でき、数百年の間平和が続いているというのに、これは流石に私達国のトップの魔道士は黙って入られません。
「そんなこと許されると――」
「面白そうだな! もう何百年と退屈してたしやろうぜ」
リーレの性格をすっかり忘れていました。
私の言葉を遮り賛成するリーレを見ればわかる通り、彼女は戦うことを生き甲斐のように感じています。
そんな彼女の口癖は「おもしれーことないかな」です。
きっとオジサンの提案はリーレには魅力的な話のはず。
この方とは数百年前もずっと相性が悪かったのですよね。
勝手な行動はするわ、国を守るどころか戦いで街を破壊してましたから。
「レフリ様、大丈夫ですか?」
「ええ、少し頭が痛いだけですので」
テレマは魔王との戦いのとき、国の民を避難させたり怪我人を魔法で癒やしていたのよね。
だからリーレの所業は知らないはず。
避難場所は私達が戦っていた場所からかなり離れていましたから。
兎に角このままリーレとオジサンを放っておくわけにはいかない。
何としてでも魔王の復活だけは阻止しなければ。
このオジサンはこの世界にとっての害と判断いたしました。
もう、手加減は不要ですね。
「魔王ってどこにいるんだ?」
「それならこの水晶の中に封印してるぜ」
「何故それを持ってるんですか!?」
ヒョイッと取り出したのはまさしく魔王を封印した水晶。
今は地下の奥深くに封印されているはずなのに。
「どうすれば封印が解けるんだ?」
「それなら叩き割れば――」
「ダメーッ!!」
私の制止の声も虚しく、オジサンは水晶を床へと叩きつける。
簡単に割れない水晶ですが、オジサンのレベルは測定不可。
そんな方が叩きつけた水晶はまるで普通のガラス玉のように砕ける。
砕けた水晶から黒い煙と共にシルエットが浮かび上がり、私は攻撃態勢に入る。
まったく、魔王を倒すもなにも封印を自分で解いていては迷惑というもの。
何よりこの世界を守る筈の魔道士であるリーレがそれに加担してしまうなんて。
数百年前の悲劇をまた繰り返すわけにはいかない。
「って、え……?」
「うわー! レフリ様、とっても可愛いのが出てきましたよ」
身構えていたのに、姿を現したのは小さな魔王。
一体どういうことか考えていると、何やら魔王が私とリーレを見て怒っているようです。
自分を封印した相手なのだから当然ですが。
「これが魔王なのか?」
「わははは! 何だかそれ、いつから魔王は可愛さを求めたんだ」
リーレは腹を抱えて笑っていますが、見た目はこれでも魔王は魔王。
そのように挑発したら怒り出してしまう。
なんて思っていたら案の定、魔王の肩はフルフルと怒りで揺れる。
「よくも我の姿を見て笑いおったな!! 貴様等に封印されたせいで魔力を失いかけているというのに許せん。くらえ!!」
そういい魔法を使う魔王に今度こそまたあの時の惨劇が、なんて思っていたが、魔王が放った炎魔法はとても小さな火の玉。
どうやら数百年封印されていたことで魔力はほとんど無くなり、身体も小さくなったんでしょう。
そんな魔王が放つ魔法は昔とは比べ物にならないほど弱く、ハッキリ言ってスライム以下。
「まあよくわからんが、前世ではゲームで何人もの魔王を倒したからな。こんな小さいのを倒したところで面白くもない」
「なんかガッカリだよなー」
「お前ら、好き勝手言いおって。我の魔力が戻った暁には貴様等から先に始末してくれるわ」
発言は魔王そのものなのに可愛い見た目から、テレマが両手で掴んで頬をすり寄せています。
嫌がる魔王にお構いなしのテレマ。
いくらあの戦いを見てなかったとはいえ、魔王にこのようなことが出来るのはテレマくらいじゃないでしょうか。
「それにしてもちいせーな。私等が封印したときは普通の人よりデカかったのに」
「おのれ、足を掴むでない!! 我を誰だと――」
魔王はリーレに足を掴まれ逆様にされた状態で文句を言うが、今の姿だと全く恐れる対象にはならない。
でも、これでこのオジサンの冒険も終わり私達も解放される。
まあ、魔王もオジサンもこのまま放置するには危険すぎるので、各国の国王に報告をする必要はあるなど考えていると、私の身体は突然引きずられる。
「ちょ、何するんですか!」
「魔王があんなじゃつまんねーから新たな悪を見つけに行くんだよ。テレマ、リーレ、行くぞ」
こうして私達のパーティーに魔王が加わり、まだ知らぬ悪を探す旅が始まろうとしていた。
転生者は基本厄介ではありますが、一番厄介なのが転生してきたようです。
私はまたズルズルと引きずられながら、このおかしなパーティーと冒険の旅に出るのでした。
《完》
この国に来る際も転移魔法を使いましたが、このオジサンは私をこき使い過ぎじゃないですか。
そんなホイホイと魔法は安売りできないというのに。
テレマが「それくらいなら私が」と言ってくれましたが、やはり魔道士のトップである私がやらねばかっこがつきませんからね。
こうしてやってきた最後の国。
私はオジサンをリーレの元へ案内しました。
「おー、珍しい客だな!」
「リーレ、少し話があります。テレマも」
オジサンを一人残し、私は全てを二人に話しました。
「なるほどな。そういうことなら私もパーティーに加わろうじゃねーか」
「そうとは知らずに申し訳ありません。あの男性の力にも気づけないなんて……」
「気にしないでください。私もあのオジサンに捕まって偶然知ったようなものですから」
一通りの話を済ませ待たせていたオジサンの元へ戻ると、リーレもパーティーに加わることを伝えました。
ですが問題はこの後です。
一体今度は何をするつもりなのか。
三国全て回ってしまい、そのトップ魔道士を三人パーティーに加えた今、次にこのオジサンがすることなど見当がつきません。
また面倒な事を言い出さなければいいのですが。
なんて思っていた私の願いは打ち砕かれました。
事もあろうに魔王を倒すなんて言い出すんですから。
確かに数百年前に魔王はいましたが、私達魔道士が封印したので今は深い眠りについてます。
もしその魔王を眠りから覚ますなんてことになれば、数百年前の悲劇がまた起きてしまう。
封印される前の魔王は、三国全ての国を滅ぼしかけたのですから。
ギリギリのところでようやく封印でき、数百年の間平和が続いているというのに、これは流石に私達国のトップの魔道士は黙って入られません。
「そんなこと許されると――」
「面白そうだな! もう何百年と退屈してたしやろうぜ」
リーレの性格をすっかり忘れていました。
私の言葉を遮り賛成するリーレを見ればわかる通り、彼女は戦うことを生き甲斐のように感じています。
そんな彼女の口癖は「おもしれーことないかな」です。
きっとオジサンの提案はリーレには魅力的な話のはず。
この方とは数百年前もずっと相性が悪かったのですよね。
勝手な行動はするわ、国を守るどころか戦いで街を破壊してましたから。
「レフリ様、大丈夫ですか?」
「ええ、少し頭が痛いだけですので」
テレマは魔王との戦いのとき、国の民を避難させたり怪我人を魔法で癒やしていたのよね。
だからリーレの所業は知らないはず。
避難場所は私達が戦っていた場所からかなり離れていましたから。
兎に角このままリーレとオジサンを放っておくわけにはいかない。
何としてでも魔王の復活だけは阻止しなければ。
このオジサンはこの世界にとっての害と判断いたしました。
もう、手加減は不要ですね。
「魔王ってどこにいるんだ?」
「それならこの水晶の中に封印してるぜ」
「何故それを持ってるんですか!?」
ヒョイッと取り出したのはまさしく魔王を封印した水晶。
今は地下の奥深くに封印されているはずなのに。
「どうすれば封印が解けるんだ?」
「それなら叩き割れば――」
「ダメーッ!!」
私の制止の声も虚しく、オジサンは水晶を床へと叩きつける。
簡単に割れない水晶ですが、オジサンのレベルは測定不可。
そんな方が叩きつけた水晶はまるで普通のガラス玉のように砕ける。
砕けた水晶から黒い煙と共にシルエットが浮かび上がり、私は攻撃態勢に入る。
まったく、魔王を倒すもなにも封印を自分で解いていては迷惑というもの。
何よりこの世界を守る筈の魔道士であるリーレがそれに加担してしまうなんて。
数百年前の悲劇をまた繰り返すわけにはいかない。
「って、え……?」
「うわー! レフリ様、とっても可愛いのが出てきましたよ」
身構えていたのに、姿を現したのは小さな魔王。
一体どういうことか考えていると、何やら魔王が私とリーレを見て怒っているようです。
自分を封印した相手なのだから当然ですが。
「これが魔王なのか?」
「わははは! 何だかそれ、いつから魔王は可愛さを求めたんだ」
リーレは腹を抱えて笑っていますが、見た目はこれでも魔王は魔王。
そのように挑発したら怒り出してしまう。
なんて思っていたら案の定、魔王の肩はフルフルと怒りで揺れる。
「よくも我の姿を見て笑いおったな!! 貴様等に封印されたせいで魔力を失いかけているというのに許せん。くらえ!!」
そういい魔法を使う魔王に今度こそまたあの時の惨劇が、なんて思っていたが、魔王が放った炎魔法はとても小さな火の玉。
どうやら数百年封印されていたことで魔力はほとんど無くなり、身体も小さくなったんでしょう。
そんな魔王が放つ魔法は昔とは比べ物にならないほど弱く、ハッキリ言ってスライム以下。
「まあよくわからんが、前世ではゲームで何人もの魔王を倒したからな。こんな小さいのを倒したところで面白くもない」
「なんかガッカリだよなー」
「お前ら、好き勝手言いおって。我の魔力が戻った暁には貴様等から先に始末してくれるわ」
発言は魔王そのものなのに可愛い見た目から、テレマが両手で掴んで頬をすり寄せています。
嫌がる魔王にお構いなしのテレマ。
いくらあの戦いを見てなかったとはいえ、魔王にこのようなことが出来るのはテレマくらいじゃないでしょうか。
「それにしてもちいせーな。私等が封印したときは普通の人よりデカかったのに」
「おのれ、足を掴むでない!! 我を誰だと――」
魔王はリーレに足を掴まれ逆様にされた状態で文句を言うが、今の姿だと全く恐れる対象にはならない。
でも、これでこのオジサンの冒険も終わり私達も解放される。
まあ、魔王もオジサンもこのまま放置するには危険すぎるので、各国の国王に報告をする必要はあるなど考えていると、私の身体は突然引きずられる。
「ちょ、何するんですか!」
「魔王があんなじゃつまんねーから新たな悪を見つけに行くんだよ。テレマ、リーレ、行くぞ」
こうして私達のパーティーに魔王が加わり、まだ知らぬ悪を探す旅が始まろうとしていた。
転生者は基本厄介ではありますが、一番厄介なのが転生してきたようです。
私はまたズルズルと引きずられながら、このおかしなパーティーと冒険の旅に出るのでした。
《完》
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる