【完結】想いは時を越え

月夜

文字の大きさ
上 下
15 / 30
第弐武将 騒がしさは終わりの近づき

3 騒がしさは終わりの近づき

しおりを挟む
「よく気づいたな」

「ああ。人が多く絞り込めなかったが、その女からは何らかの気配を感じていたからな」



 話しは淡々と進んでいくが、私の頭は追い付かない。

 つまり話を整理すると、佐助は美海を疑っていた。
 でもその根拠がなく、私に人気のない場所に連れ出すように言った。

 佐助の思った通り、美海は才蔵と繋がっていたということらしいが、つまり美海は信長とも繋がっているわけで、私のことを騙していたということになる。

 美海は全てを知り、私を心配する振りをして才蔵と共に監視をしていた。

 こんな話信じられるはずがない。
 そもそも美海がそんなことをする理由はないはず。



「美海、嘘……だよね?」



 少しの沈黙の後、美海は悲しげな笑みを浮かべごめんねと言うと、風と共に才蔵と姿を消してしまった。

 教室に戻った後も、美海は姿を現すことはなく、私は未だに現実を受け入れられないまま帰路を歩く。

 友達だと思っていたのは私だけだったのか。
 美海はずっと私を騙していたのか。

 聞きたいことはあるのに、それを聞くのが怖くてできない。
 そもそも私は美海の家を知らないため、聞くことすら叶わないのだ。



「奈流、現実を受け入れろ」

「わかってるッ!! わかってるけど……」



 佐助の言ってることはわかるが、そう簡単に受け入れられるような事ではない。

 戦国時代なら、騙し騙されなんてこともあったかもしれない。
 現代だってそういったことはある。
 でも、騙された方の傷は簡単には消えてくれない。

 今だって信じられない。
 美海が私を騙していたなんて。

 そんなことを考えながら家へ帰ると、制服のままベッドに倒れ込む。

 ミニ武将達は佐助から話を聞いたらしく声をかけてきたが、今は誰とも話す気分になれず放っておいてと言う。
 するとミニ武将達は静になり、私は一人現実を受け入れようと考えるが、肝心の美海本人からは何も聞いていない。

 騙されていたなんて思いたくないだけなのかもしれない。
 それでも、美海がどうして才蔵といたのかなどの理由を聞きたい。



「私、明日美海と話そうと思う」

「危険だ」



 佐助が止めるのも無理はない。
 相手は佐助と同じ忍びであり、私では気配すら気づけない相手だ。

 それでも美海と話さなければならない。
 話したところでもっと傷つくことになるかもしれないが、この胸の苦しみを残し続けるよりはいい。

 そんな私の覚悟を感じた信玄は、お主のしたいようにしてみよ、と許可を出した。

 私だけでは危険なため、護衛として佐助もいつも通り同伴。

 こうして平日は波乱の幕開けとなった。
しおりを挟む

処理中です...