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第一幕 可笑しな戦国時代
三 可笑しな戦国時代
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「お前の名前、実影って言うんだな」
「て、何で連れてきた本人が知らねぇんだよ!」
「仕方ねぇだろ、この女をここに置くって言い出したのは信長様なんだからよ」
「へぇ~、信長様がねぇ……」
政宗さんは口角を上げ、ニヤニヤとしながら私を見詰める。
一体ここにいる方達は何者何だろうと思っていると、背後から声をかけらた。
「お前達、何をしている」
その声に振り返ると、そこにはいつの間にいたのか信長様の姿がある。
「女、お前は俺の横に来い」
「え?」
突然腕を掴まれ引っ張っていかれると、信長様が座る横へと私も座らされ、他の人の視線が信長様と私に注がれる。
「今日はよく集まってくれたな。しばらくは皆、安土城で生活を共にすることになる。今日は宴だ、皆、存分に楽しめ!」
信長様の言葉でさっき刻が話していたことを思い出し、ここにいるのはその武将達なのだと気づく。
「それと皆にも紹介しておこう。この女は、俺が今日拾った女だ」
皆の視線が信長様から私へと注がれ、その視線に耐えかねた私は視線を逸らすと、政宗さんと目が合ってしまった。
政宗さんは口角を上げ私を見詰めており、その視線に目を逸らしたくなった。
だが、私はここにいる武将達に愛を教えると決めたのだから目を逸らしてはいけないと自分に言い聞かせ、顔を上げ真っ直ぐに武将達を見る。
その後宴が始まると、並べられた食事やお酒を武将達は飲み始め、部屋は騒がしくなっていった。
「女、お前も今日の宴を存分に楽しむがいい!」
「はい」
信長様に言われ、今日はまだ何も食べていないことを思いだし、私も料理へと箸を伸ばす。
それからしばらくすると何故か私の視界が霞始め、どうやらお酒を飲んでいないにも関わらず香りだけで酔ってしまったらしい。
「おい女、顔が赤いぞ?」
私の様子が可笑しいことに気づいた信長様が声をかけたのと同時に、私は信長様へと倒れてしまった。
「…………ッ!?す、すみません!」
ハッとし慌てて離れようとすると、突然私の体が宙へと浮く。
ふわふわとした感覚を不思議に感じていると、私の目の前に信長様の顔があることに気づく。
視界が悪く状況がよくわからずにいると、次に瞼を開けたときは自分の部屋にいた。
「酒の香りだけで酔うとはな」
まだくらくらとする頭で上体を起こすと、部屋の中で声が聞こえ視線を向ける。
すると、横には信長様が座っており、どうやら信長様が私を部屋まで運んでくれたようだ。
「私、お酒弱いんです……。お部屋まで運んでくださりありがとうございました」
「俺は、自分の物を部屋へと片付けたまでだ。あそこで倒れられては面倒だからな」
それだけ言うと信長様は、私に背を向け部屋を出ていってしまう。
信長様が行ってしまった後、私は布団を敷こうと足を一歩前へ出すと、体がふらつき前へと傾く。
だが、突然横から伸ばされた腕に体は抱き留められ、倒れずにすんだ。
一体この腕は、と考ええていると、心配する声が耳に届き顔を上げる。
「おいッ!大丈夫か!?」
「…………秀吉さん……?」
お酒がまだ抜けず歪む視界に、腕で私の体を支える秀吉さんの姿が瞳に映る。
秀吉さんはそのまま私を抱き上げると、窓際まで連れていき、私の背を壁へともたれさせ座らせてくれる。
「お前はそこで少し大人しくしてろ」
そう言うと、秀吉さんは押し入れにあった布団を畳へと敷、再び私の方へと歩み寄ると、私を抱上げ布団へと寝かせてくれた。
「お前、どんだけ酒よぇんだよ。こりゃ酒になれる訓練が必要だな」
「え、訓練……。お酒に慣れないといけないんですか……?」
お酒は嫌いではないのだが、直ぐ酔ってしまうため普段は避けている。
だが、やはりお酒を飲む機会というのは元の世界でも何度かあり、私は飲まずにいたのだが、結局香りで酔ってしまい、なんとか家までは帰れていたのだが、家に着いたあとは直ぐに眠ってしまっていた。
そんな香りだけでこんな状態になってしまう私が、訓練自体出来るのかさえ怪しいものだ。
「当たり前だ!酒を呑む機会なんてのはいくらでもある、その度に倒れられるわけにはいかねぇからな」
「うッ……が、頑張ります」
「そんじゃ、俺は戻るが、お前はゆっくり休めよ」
柔らかい笑みを浮かべながら言われた言葉には、優しさが含まれており、その声音に安心するのが自分でわかる。
その後秀吉さんは立ち上がると、部屋を出ていってしまい、御礼を言い損ねてしまったことに気づく。
明日、二人に改めて御礼を伝えようと瞼を閉じると、脳裏に先程のことが思い出された。
〈俺は、自分の物を部屋へと片付けたまでだ。あそこで倒れられては面倒だからな〉
あんな風に信長様は言っていたけど、私はあの時、大切に扱ってもらえた気がして嬉しかった。
信長様にとっては、本当に物を片付ける感覚だったのかもしれないけど、いつか、人を愛する気持ちをわかってくれる日が来るのかもしれないと思えた。
秀吉さんも、私を抱き留めてくれたとき、本当に心配な顔を私へと向けていた。
そのときのことを思い出すと何だか嬉しくて、つい口許が緩んでしまっていたその時、突然声が聞こえ、閉じていた瞼を開けた。
すると、またいつの間にか現れていた刻が、心配そうに私の顔を覗き込んでいる。
「大丈夫?」
「ええ。大分酔いも覚めてきたみたい」
「ならよかった!それにしても、信長に秀吉だけど、君がここへ来たことによって少しずつだけど変化してきてるみたいだね」
「うん、何となくだけど、私もそう感じた。いつか……愛を知ってもらえると……い……いな…………」
私は刻と話ながらゆっくりと眠りへとつき、目を覚まし時には部屋に日差しが差していた。
私、いつの間にか眠っちゃってたんだ。
すっかり酔いも覚めたらしく、体のふらつきはなくなっている。
どうやら昨日は色々なことがありすぎて、いつのまにか疲れて眠ってしまったようだ。
部屋を見渡すが、刻の姿はすでになくなっており、私はゆっくりと起き上がると布団を押し入れへとしまい、秀吉さんと信長様へ御礼を伝えに行こうと廊下へと出る。
そういえば私、二人の部屋がどこにあるのか知らないんだった……。
歩き回っていれば辿りつけるだろうと、しばらく城内を歩き回ってみることにしたのだが。
どうしよう、自分の部屋もわからなくなっちゃった……。
どうしようかとキョロキョロとしていると、声をかけられ振り返る。
「お嬢さん、こんなところでなにをしてるんだい?」
するとそこには、何だかおっとりとした男性の姿があった。
この人、昨日の宴の時にいた人だ……。
だが、名前を聞いていなかったため反応に困ってしまう。
「あ、えっと……」
「まだ名乗ってなかったね。僕の名は徳川家康。君は実影ちゃんだよね」
「何故私の名前を?」
「昨夜、君が自室へ運ばれた後、宴では君の話で盛り上がっていたからね。その時に政宗殿が教えてくれたんだよ」
「私の話、ですか?」
「うん。信長様が拾ってきた女人だからね、皆興味があるんだよ。勿論僕もね」
そう言いながら家康さんは私に微笑んでくれ、その柔らかな笑みに何だか安心してしまう。
この世界の武将は、皆冷たい目をしてると思ってたけど、こんな優しい笑みを向けてくれる人もいるんだと初めて感じた瞬間だった。
「ところで、実影ちゃんはこんなところで何をしていたんだい?」
家康さんに尋ねられ、信長様と秀吉さんに御礼を伝えに行く最中だったことを思いだす。
「それが……信長様と秀吉さんに昨夜の御礼を伝えに行こうとしていたんですが、部屋がわからなくて……」
「そうだったんだね。信長様は天守閣、秀吉なら、この廊下を真っ直ぐに行った突き当たりの右の部屋だよ」
「ありがとうございます!助かりました」
「いいえ。今度僕の部屋にも遊びに来てね」
「はい!」
私は家康さんに一礼すると、ここから近い秀吉さんの部屋へと先に向かう。
家康さん、好い人だったな。
何だかここに来て一番まともな人に会えたかもしれない、そんなことを考えながら家康さんに教えてもらった通りに歩いていき、廊下の突き当たりまで来た。
「加賀です、秀吉さんいらっしゃいますか?」
「ああ、入っていいぞ」
襖越しに声をかけると中から秀吉さんの声が聞こえ、私はゆっくりと襖を開け部屋の中へと入る。
「て、何で連れてきた本人が知らねぇんだよ!」
「仕方ねぇだろ、この女をここに置くって言い出したのは信長様なんだからよ」
「へぇ~、信長様がねぇ……」
政宗さんは口角を上げ、ニヤニヤとしながら私を見詰める。
一体ここにいる方達は何者何だろうと思っていると、背後から声をかけらた。
「お前達、何をしている」
その声に振り返ると、そこにはいつの間にいたのか信長様の姿がある。
「女、お前は俺の横に来い」
「え?」
突然腕を掴まれ引っ張っていかれると、信長様が座る横へと私も座らされ、他の人の視線が信長様と私に注がれる。
「今日はよく集まってくれたな。しばらくは皆、安土城で生活を共にすることになる。今日は宴だ、皆、存分に楽しめ!」
信長様の言葉でさっき刻が話していたことを思い出し、ここにいるのはその武将達なのだと気づく。
「それと皆にも紹介しておこう。この女は、俺が今日拾った女だ」
皆の視線が信長様から私へと注がれ、その視線に耐えかねた私は視線を逸らすと、政宗さんと目が合ってしまった。
政宗さんは口角を上げ私を見詰めており、その視線に目を逸らしたくなった。
だが、私はここにいる武将達に愛を教えると決めたのだから目を逸らしてはいけないと自分に言い聞かせ、顔を上げ真っ直ぐに武将達を見る。
その後宴が始まると、並べられた食事やお酒を武将達は飲み始め、部屋は騒がしくなっていった。
「女、お前も今日の宴を存分に楽しむがいい!」
「はい」
信長様に言われ、今日はまだ何も食べていないことを思いだし、私も料理へと箸を伸ばす。
それからしばらくすると何故か私の視界が霞始め、どうやらお酒を飲んでいないにも関わらず香りだけで酔ってしまったらしい。
「おい女、顔が赤いぞ?」
私の様子が可笑しいことに気づいた信長様が声をかけたのと同時に、私は信長様へと倒れてしまった。
「…………ッ!?す、すみません!」
ハッとし慌てて離れようとすると、突然私の体が宙へと浮く。
ふわふわとした感覚を不思議に感じていると、私の目の前に信長様の顔があることに気づく。
視界が悪く状況がよくわからずにいると、次に瞼を開けたときは自分の部屋にいた。
「酒の香りだけで酔うとはな」
まだくらくらとする頭で上体を起こすと、部屋の中で声が聞こえ視線を向ける。
すると、横には信長様が座っており、どうやら信長様が私を部屋まで運んでくれたようだ。
「私、お酒弱いんです……。お部屋まで運んでくださりありがとうございました」
「俺は、自分の物を部屋へと片付けたまでだ。あそこで倒れられては面倒だからな」
それだけ言うと信長様は、私に背を向け部屋を出ていってしまう。
信長様が行ってしまった後、私は布団を敷こうと足を一歩前へ出すと、体がふらつき前へと傾く。
だが、突然横から伸ばされた腕に体は抱き留められ、倒れずにすんだ。
一体この腕は、と考ええていると、心配する声が耳に届き顔を上げる。
「おいッ!大丈夫か!?」
「…………秀吉さん……?」
お酒がまだ抜けず歪む視界に、腕で私の体を支える秀吉さんの姿が瞳に映る。
秀吉さんはそのまま私を抱き上げると、窓際まで連れていき、私の背を壁へともたれさせ座らせてくれる。
「お前はそこで少し大人しくしてろ」
そう言うと、秀吉さんは押し入れにあった布団を畳へと敷、再び私の方へと歩み寄ると、私を抱上げ布団へと寝かせてくれた。
「お前、どんだけ酒よぇんだよ。こりゃ酒になれる訓練が必要だな」
「え、訓練……。お酒に慣れないといけないんですか……?」
お酒は嫌いではないのだが、直ぐ酔ってしまうため普段は避けている。
だが、やはりお酒を飲む機会というのは元の世界でも何度かあり、私は飲まずにいたのだが、結局香りで酔ってしまい、なんとか家までは帰れていたのだが、家に着いたあとは直ぐに眠ってしまっていた。
そんな香りだけでこんな状態になってしまう私が、訓練自体出来るのかさえ怪しいものだ。
「当たり前だ!酒を呑む機会なんてのはいくらでもある、その度に倒れられるわけにはいかねぇからな」
「うッ……が、頑張ります」
「そんじゃ、俺は戻るが、お前はゆっくり休めよ」
柔らかい笑みを浮かべながら言われた言葉には、優しさが含まれており、その声音に安心するのが自分でわかる。
その後秀吉さんは立ち上がると、部屋を出ていってしまい、御礼を言い損ねてしまったことに気づく。
明日、二人に改めて御礼を伝えようと瞼を閉じると、脳裏に先程のことが思い出された。
〈俺は、自分の物を部屋へと片付けたまでだ。あそこで倒れられては面倒だからな〉
あんな風に信長様は言っていたけど、私はあの時、大切に扱ってもらえた気がして嬉しかった。
信長様にとっては、本当に物を片付ける感覚だったのかもしれないけど、いつか、人を愛する気持ちをわかってくれる日が来るのかもしれないと思えた。
秀吉さんも、私を抱き留めてくれたとき、本当に心配な顔を私へと向けていた。
そのときのことを思い出すと何だか嬉しくて、つい口許が緩んでしまっていたその時、突然声が聞こえ、閉じていた瞼を開けた。
すると、またいつの間にか現れていた刻が、心配そうに私の顔を覗き込んでいる。
「大丈夫?」
「ええ。大分酔いも覚めてきたみたい」
「ならよかった!それにしても、信長に秀吉だけど、君がここへ来たことによって少しずつだけど変化してきてるみたいだね」
「うん、何となくだけど、私もそう感じた。いつか……愛を知ってもらえると……い……いな…………」
私は刻と話ながらゆっくりと眠りへとつき、目を覚まし時には部屋に日差しが差していた。
私、いつの間にか眠っちゃってたんだ。
すっかり酔いも覚めたらしく、体のふらつきはなくなっている。
どうやら昨日は色々なことがありすぎて、いつのまにか疲れて眠ってしまったようだ。
部屋を見渡すが、刻の姿はすでになくなっており、私はゆっくりと起き上がると布団を押し入れへとしまい、秀吉さんと信長様へ御礼を伝えに行こうと廊下へと出る。
そういえば私、二人の部屋がどこにあるのか知らないんだった……。
歩き回っていれば辿りつけるだろうと、しばらく城内を歩き回ってみることにしたのだが。
どうしよう、自分の部屋もわからなくなっちゃった……。
どうしようかとキョロキョロとしていると、声をかけられ振り返る。
「お嬢さん、こんなところでなにをしてるんだい?」
するとそこには、何だかおっとりとした男性の姿があった。
この人、昨日の宴の時にいた人だ……。
だが、名前を聞いていなかったため反応に困ってしまう。
「あ、えっと……」
「まだ名乗ってなかったね。僕の名は徳川家康。君は実影ちゃんだよね」
「何故私の名前を?」
「昨夜、君が自室へ運ばれた後、宴では君の話で盛り上がっていたからね。その時に政宗殿が教えてくれたんだよ」
「私の話、ですか?」
「うん。信長様が拾ってきた女人だからね、皆興味があるんだよ。勿論僕もね」
そう言いながら家康さんは私に微笑んでくれ、その柔らかな笑みに何だか安心してしまう。
この世界の武将は、皆冷たい目をしてると思ってたけど、こんな優しい笑みを向けてくれる人もいるんだと初めて感じた瞬間だった。
「ところで、実影ちゃんはこんなところで何をしていたんだい?」
家康さんに尋ねられ、信長様と秀吉さんに御礼を伝えに行く最中だったことを思いだす。
「それが……信長様と秀吉さんに昨夜の御礼を伝えに行こうとしていたんですが、部屋がわからなくて……」
「そうだったんだね。信長様は天守閣、秀吉なら、この廊下を真っ直ぐに行った突き当たりの右の部屋だよ」
「ありがとうございます!助かりました」
「いいえ。今度僕の部屋にも遊びに来てね」
「はい!」
私は家康さんに一礼すると、ここから近い秀吉さんの部屋へと先に向かう。
家康さん、好い人だったな。
何だかここに来て一番まともな人に会えたかもしれない、そんなことを考えながら家康さんに教えてもらった通りに歩いていき、廊下の突き当たりまで来た。
「加賀です、秀吉さんいらっしゃいますか?」
「ああ、入っていいぞ」
襖越しに声をかけると中から秀吉さんの声が聞こえ、私はゆっくりと襖を開け部屋の中へと入る。
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