16 / 39
第六幕 右目と伊達政宗
一 右目と伊達政宗
しおりを挟む
翌日になるとすっかり体調も回復し、三成さんにお礼を伝えに怪我人のいる部屋へと向かったのだが、何故か三成さんは私と目を合わせようとしてくれない。
「あの三成さん、どうかされましたか?」
「何でもない」
「でも……」
「俺は怪我人の薬を作らなければいけないので失礼する」
まるで私から逃げるように三成さんは行ってしまい、不思議に思いながらも私は自室へと戻ることにした。
何だか三成さんの顔が赤いように見えたけど、もしかして風邪をうつしちゃったのかな……。
そんなことを考えながら廊下を歩いていると声をかけられ、振り返るとそこには政宗さんが立っていた。
「今暇か?」
「今日は手伝いはまだ頼まれていないので大丈夫ですよ」
「ならついてこい!お前に頼みたいことがある」
私は政宗さんに腕を引っ張っていかれると、向かった先は厨だった。
こんなところに来て私に頼みたいことってなんだろう?
「この前お前が作ったちゃーはん?とか言うやつを作ってみたんだが、味見してくんねぇか?」
「はい!」
そういえば私が初めに来た頃、夕餉を作ったことを思い出した。
あの時、政宗さんが料理を作るって聞いて驚いたのを覚えている。
私は政宗さんが作った炒飯を掬い、ゆっくりと口へ運び食べると、あまりの美味しさにほっぺが落ちそうと言う表現がピッタリだと思った。
「美味しいです!!本当に初めて作られたんですか?」
「ああ。お前に聞いた通りに作ってみたんだが、美味く出来たみたいだな!」
「私の作った炒飯の何倍も美味しくて正直へこみました!」
初めて作ってこんなに美味しいなんて、政宗さん、やっぱり料理をしているだけあって凄い。
「俺は実影が作ったのが一番だけどな」
私へと視線を向け、ニカッと笑みを見せる政宗さんを見ると、嬉しくて私まで笑みが溢れてしまう。
「そう言ってもらえると嬉しいです!また作りますね」
「今度は俺だけのために頼むぜ!」
「考えておきます」
二人で笑い合い、こんな楽しい時間は久し振りで、何だか政宗さんは不思議な人だなと感じた。
最初に会った時もそうだったけど、何だか明るくて、とても話しやすい雰囲気を纏った人だと感じていた。
そんな政宗さんにも、愛はないのかな……?
「あの、政宗さんって好きな人っていますか?」
「唐突だな。俺のことが気になんのか?」
突然政宗さんは私へと近付き尋ねたため、近い距離に私の鼓動が小さく音を立てた。
「はい。私、皆さんのことをもっと知りたいんです!」
「いいぜ、教えてやるよ俺のこと」
政宗さんは私から離れると、別の場所で話そうと、政宗さんの自室へと二人で向かった。
部屋の中へと入ると、御互い向かい合う形で畳の上へと座り、話の続きを始めた。
「で、俺の好きな奴だったか?そんなん聞いてどうすんだ」
「愛について知りたいんです」
その時、私が愛という言葉を口にした瞬間、一瞬にして部屋の空気が冷たくなり、政宗さんへと視線を向けると、いつもの明るさはなく、とても冷たくて鋭い視線が私へと向けられていた。
「俺に愛を聞いても無駄だ」
「何故、ですか……?」
低く、冷たい声音で言われた言葉に、それ以上触れてはいけないないかがあるように感じた。
私は震えそうになる声でようやく言葉を発すると、政宗さんはゆっくりと口を開いた。
「俺は、父上をこの手で殺したんだ」
え……?
私はこのとき自分の耳を疑った。
政宗さんが父親を殺したなんて私には信じられなかった。
私へと向けられる政宗さんの冷たい瞳には光はなく、まるで暗闇の中にいるように見える。
「悪いが、今日は自室へ戻ってくれねぇか」
「はい……」
これ以上この事について触れてほしくないのだと感じ、私は政宗さんの部屋を出た。
自室へと向かう廊下で、私はさっきの政宗さんの瞳が脳裏に浮かんでいた。
政宗さんが父親を殺したなんて信じられないよ……。
「暗い顔してどうしたんだ?」
前から声が聞こえ、立ち止まり俯いていた顔を上げると、前から秀吉さんが歩いてきた。
私は秀吉さんに私の自室へと来てもらうと、さっき政宗さんから聞いたことを秀吉さんへと話した。
本当はこんなこと聞いちゃいけないんだろうけど、あんな政宗さんの瞳を見たらほっておけない。
それに、政宗さんに聞いても話してくれるとは思えないから……。
「その話なら昔聞いたことあるな。政宗さんから聞いたわけじゃねぇから詳しくはわからねぇけど」
秀吉さんの話によると、政宗さんの父親が、敵の人質にされ、相手は奥州を自分の領地にしようとしたらしい。
でも、政宗さんはその要求をのまず、敵の城へ攻め込んで、敵の大将と自分の父親を殺したというものだった。
「なんで父親を殺したんでしょうか……」
「政宗さんは父親と仲が良くなかったらしいからな、邪魔で殺したんじゃないかって言うのが俺が聞いた噂だ。実際のところは本人に聞かねぇとわからねぇけどな」
秀吉さんが部屋を出ていったあと、私は一人考えていた。
やっぱり私には、政宗さんが父親を殺したなんて信じられない。
武将が愛を知らなくても、父親を思わない人なんていないはずだよ……。
私は立ち上がると、再び政宗さんの部屋へと向かった。
やっぱり本人に聞かないとわからないよ!
私は政宗さんの部屋へと入れてもらうと、畳へと腰を下ろし、真っ直ぐに政宗さんを見詰めた。
「さっきの話なんですけど」
「その話について話すことはねぇ」
「知りたいんです、本当のことを!政宗さんのお父様は人質にされたんですよね」
「っ……!?なんで知ってやがる」
「すみません……秀吉さんに聞いてしまいました。でも、私には政宗さんが父親を殺したなんて信じられないんです!!」
私は真実が知りたい、その冷たい瞳になってしまったのはきっとその事が原因なんだと思うから。
そんな瞳になってしまった理由が私は知りたい……!
「そんなの聞いてどうすんだよ」
「私には何もできません……。でも、政宗さんが父親を殺したなんて信じたくないんです!」
私に向けられる瞳をみればわかる。
政宗さんの瞳に宿るのは冷たさだけじゃなく、悲しみと後悔を含んでいるように見えた。
「そんなに知りたきゃ教えてやるよ、俺が父上を殺した事実をな……」
政宗さんは口を開くと、父親を殺した日の真相を私に話しだした。
「あの三成さん、どうかされましたか?」
「何でもない」
「でも……」
「俺は怪我人の薬を作らなければいけないので失礼する」
まるで私から逃げるように三成さんは行ってしまい、不思議に思いながらも私は自室へと戻ることにした。
何だか三成さんの顔が赤いように見えたけど、もしかして風邪をうつしちゃったのかな……。
そんなことを考えながら廊下を歩いていると声をかけられ、振り返るとそこには政宗さんが立っていた。
「今暇か?」
「今日は手伝いはまだ頼まれていないので大丈夫ですよ」
「ならついてこい!お前に頼みたいことがある」
私は政宗さんに腕を引っ張っていかれると、向かった先は厨だった。
こんなところに来て私に頼みたいことってなんだろう?
「この前お前が作ったちゃーはん?とか言うやつを作ってみたんだが、味見してくんねぇか?」
「はい!」
そういえば私が初めに来た頃、夕餉を作ったことを思い出した。
あの時、政宗さんが料理を作るって聞いて驚いたのを覚えている。
私は政宗さんが作った炒飯を掬い、ゆっくりと口へ運び食べると、あまりの美味しさにほっぺが落ちそうと言う表現がピッタリだと思った。
「美味しいです!!本当に初めて作られたんですか?」
「ああ。お前に聞いた通りに作ってみたんだが、美味く出来たみたいだな!」
「私の作った炒飯の何倍も美味しくて正直へこみました!」
初めて作ってこんなに美味しいなんて、政宗さん、やっぱり料理をしているだけあって凄い。
「俺は実影が作ったのが一番だけどな」
私へと視線を向け、ニカッと笑みを見せる政宗さんを見ると、嬉しくて私まで笑みが溢れてしまう。
「そう言ってもらえると嬉しいです!また作りますね」
「今度は俺だけのために頼むぜ!」
「考えておきます」
二人で笑い合い、こんな楽しい時間は久し振りで、何だか政宗さんは不思議な人だなと感じた。
最初に会った時もそうだったけど、何だか明るくて、とても話しやすい雰囲気を纏った人だと感じていた。
そんな政宗さんにも、愛はないのかな……?
「あの、政宗さんって好きな人っていますか?」
「唐突だな。俺のことが気になんのか?」
突然政宗さんは私へと近付き尋ねたため、近い距離に私の鼓動が小さく音を立てた。
「はい。私、皆さんのことをもっと知りたいんです!」
「いいぜ、教えてやるよ俺のこと」
政宗さんは私から離れると、別の場所で話そうと、政宗さんの自室へと二人で向かった。
部屋の中へと入ると、御互い向かい合う形で畳の上へと座り、話の続きを始めた。
「で、俺の好きな奴だったか?そんなん聞いてどうすんだ」
「愛について知りたいんです」
その時、私が愛という言葉を口にした瞬間、一瞬にして部屋の空気が冷たくなり、政宗さんへと視線を向けると、いつもの明るさはなく、とても冷たくて鋭い視線が私へと向けられていた。
「俺に愛を聞いても無駄だ」
「何故、ですか……?」
低く、冷たい声音で言われた言葉に、それ以上触れてはいけないないかがあるように感じた。
私は震えそうになる声でようやく言葉を発すると、政宗さんはゆっくりと口を開いた。
「俺は、父上をこの手で殺したんだ」
え……?
私はこのとき自分の耳を疑った。
政宗さんが父親を殺したなんて私には信じられなかった。
私へと向けられる政宗さんの冷たい瞳には光はなく、まるで暗闇の中にいるように見える。
「悪いが、今日は自室へ戻ってくれねぇか」
「はい……」
これ以上この事について触れてほしくないのだと感じ、私は政宗さんの部屋を出た。
自室へと向かう廊下で、私はさっきの政宗さんの瞳が脳裏に浮かんでいた。
政宗さんが父親を殺したなんて信じられないよ……。
「暗い顔してどうしたんだ?」
前から声が聞こえ、立ち止まり俯いていた顔を上げると、前から秀吉さんが歩いてきた。
私は秀吉さんに私の自室へと来てもらうと、さっき政宗さんから聞いたことを秀吉さんへと話した。
本当はこんなこと聞いちゃいけないんだろうけど、あんな政宗さんの瞳を見たらほっておけない。
それに、政宗さんに聞いても話してくれるとは思えないから……。
「その話なら昔聞いたことあるな。政宗さんから聞いたわけじゃねぇから詳しくはわからねぇけど」
秀吉さんの話によると、政宗さんの父親が、敵の人質にされ、相手は奥州を自分の領地にしようとしたらしい。
でも、政宗さんはその要求をのまず、敵の城へ攻め込んで、敵の大将と自分の父親を殺したというものだった。
「なんで父親を殺したんでしょうか……」
「政宗さんは父親と仲が良くなかったらしいからな、邪魔で殺したんじゃないかって言うのが俺が聞いた噂だ。実際のところは本人に聞かねぇとわからねぇけどな」
秀吉さんが部屋を出ていったあと、私は一人考えていた。
やっぱり私には、政宗さんが父親を殺したなんて信じられない。
武将が愛を知らなくても、父親を思わない人なんていないはずだよ……。
私は立ち上がると、再び政宗さんの部屋へと向かった。
やっぱり本人に聞かないとわからないよ!
私は政宗さんの部屋へと入れてもらうと、畳へと腰を下ろし、真っ直ぐに政宗さんを見詰めた。
「さっきの話なんですけど」
「その話について話すことはねぇ」
「知りたいんです、本当のことを!政宗さんのお父様は人質にされたんですよね」
「っ……!?なんで知ってやがる」
「すみません……秀吉さんに聞いてしまいました。でも、私には政宗さんが父親を殺したなんて信じられないんです!!」
私は真実が知りたい、その冷たい瞳になってしまったのはきっとその事が原因なんだと思うから。
そんな瞳になってしまった理由が私は知りたい……!
「そんなの聞いてどうすんだよ」
「私には何もできません……。でも、政宗さんが父親を殺したなんて信じたくないんです!」
私に向けられる瞳をみればわかる。
政宗さんの瞳に宿るのは冷たさだけじゃなく、悲しみと後悔を含んでいるように見えた。
「そんなに知りたきゃ教えてやるよ、俺が父上を殺した事実をな……」
政宗さんは口を開くと、父親を殺した日の真相を私に話しだした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる