戦国武将とトリップ少女

月夜

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第六幕 右目と伊達政宗

二 右目と伊達政宗

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 政宗さんの父親が人質に取られた時、敵の大将から文が届いた。

 内容は、父親を助けたければ奥州の領地を渡せと言うものだった。

 父親がいない今、奥州を守れるのは政宗さんだけだ。

 そして政宗さんが考えた結果導きだしたのは、敵の大将を討ち取るという決断だった。

 兵を率いて敵の城へと乗り込み、勝利は政宗さんに傾いていた。

 父親を助けるため政宗さんは父親を探し見付けたのは、敵の大将が刀を抜き、父親へと向けている姿だった。



 〈伊達め!!父親も道連れにしてやる!!〉



 降り下ろした刀は父親の首を切り落とし、部屋はその血で染まっている。

 そのあとの政宗さんは、父親を殺された怒りで敵の大将へと斬りかかるが、敵の大将の刀が政宗さんの右目を刺した。

 その時の政宗さんは、怒りでそんな痛みさえも気にせずに大将を切り捨てる。

 右目からは血の涙を流しながら、城内の敵も全て切り捨てていった。

 その日から、城内ではある噂が広がり始めた。

 父親を殺したのは政宗さんで、父親と仲が悪く邪魔に思った政宗さんが殺したのではないかと。

 その噂はあっという間に広がり、他の武将の人達にもその噂は届いた。



「これがお前が知りたがった全部だ」

「そんなの、政宗さんが殺したことにならないじゃないですか!!」

「俺が殺したも同然だ……!!でもいいんだ、俺は父上のことなんて嫌いだったんだからな」



 私はそのあと自室へと戻ると、政宗さんのことを考えていた。

 きっと政宗さんは、自分が敵の城に攻め込んだから父親を死なせたんだと感じてるんだ。


 父親が嫌いだったって言ってたけど、本当にそうなんだろうか……。


 何か私にできることはないかと考えていると、部屋に秀吉さんが訪ねに来た。



「どうかされましたか?」

「政宗さんのことで伝え忘れたことがあってさ。前に政宗さんから聞いたんだが、小さい頃に父親とみたらしを食ったことがあるらしいんだ」



 秀吉さんのその言葉で、私はあることを思い付き立ち上がると、秀吉さんにお礼を伝えて部屋を後にした。

 私が向かった先は厨で、今はお餅を丸めている最中。

 私が思い付いたのは、その思い出とも言えるみたらしを政宗さんに作ろうと言うものだった。


 父親のことを、嫌なことを思い出させちゃうかもしれないけど、政宗さんは今でも自分を攻めてる……。

 このままになんてしておけないよ!


 私はみたらしを作ると、政宗さんの部屋へと向かった。

 部屋へと入ると私は政宗さんの前に団子とお茶を置いた。

 一瞬驚いた顔をしたあと、何のつもりだと政宗さんの低く冷たい声が静かな部屋の中で聞こえる。



「政宗さんが父親とお団子を食べたことがあると聞いたので作ってきました、っ!!」



 私の言葉を聞くと、突然政宗さんは私の腕を強く掴みそのまま押し倒した。

 突然のことに驚き政宗さんを見ると、苦しそうに眉を寄せる政宗さんの姿があった。



「いい加減にしろ!!お前の目的はなんだ!?」

「っ……!」



 手に力を込められ、私の腕が痛むのを感じる。



「目的ですか……。私は政宗さんにあんな辛そうな顔してほしくないんですよ」

「辛い?はっ!どう見たらそう見えんだよ!」

「今だって、こんなに辛い顔してるじゃないですか」



 政宗さんは気付いていないんだろうか、自分がどんなに辛そうで、苦しそうな顔をしているのか。



「もう、苦しまないでください。今の奥州があるのは政宗さんが決断をしたからです。きっと政宗さんのお父様も、奥州を守った政宗さんを恨んだりなんてしてませんよ。政宗さんのしたことは間違いじゃないです!」

「……!!」



 政宗さんに微笑み伝えたとき、政宗さんはあの日のことを思い出した。

 あの日、父親が殺される時、政宗さんのお父様は政宗さんに微笑み、何かを言った。

 あのとき政宗さんのお父様は



 〈奥州を頼んだぞ〉



 と、最後に言ったのだ。

 だが政宗さんはこの記憶を封じた、でなければ、自分がしたことが正しかったのだと思ってしまうから。

 父親を死なせてしまった、それなのに、何の罪もないなんて自分が許せなかった。

 でも、父親と同じように微笑み、自分のしたことは間違いじゃないという私を見て、何時までも過去を引きずる自分を情けなく感じた。


 なんでこいつは、俺をこんなにも真っ直ぐに見詰めるんだろうな……。


 政宗さんが何を考えているのか知らない私は、ただ政宗さんを真っ直ぐに見詰めていた。

 政宗さんがわかってくれることを信じて。

 すると、政宗さんの口許に笑みが浮かび、私から体を離した。

 私も起き上がり政宗さんの瞳を見ると、その瞳には、辛さも苦しさも感じられなくなっていた。



「お前の言う通りだな。団子貰うぜ」



 そう言うと、政宗さんは団子を口へと運んだ。



「美味いなこの団子!実影が作ったのか?」

「はい。お口に合ってよかったです!」

「今度作り方教えてくれな!」



 今まで政宗さんが私に向けてくれたどの笑顔より明るくて、私も自然と笑みが溢れる。

 だがその時、私の手を掴むと、政宗さんは自分の右目の眼帯へと、私の手を当てた。



「この目は、俺にとっては自分への罰なんだって思っていた。でも今は、これは罰なんかじゃないって思える。この失った目とお前に誓う、俺はこれから奥州を守るためにも生きていくってな」



 武将は愛を知らない、だから、民や国を人を大切にしない。

 そして自分の命さえも……。


 でも、今私の目の前にいる政宗さんは奥州を守ること、そして生きることを誓ってくれた。

 これが愛なのかはわからないけど、政宗さんに変化をあたえることができたのかもしれない。



「それにしても、やっぱり信長様が拾った女だけあって変わってるな。俺にこんなこと言うのはお前くらいだぜ?」



 そう言いながら笑い出す政宗さんを見て、自分は本当変わってるのかもしれないと思い始めた。


 そしてその日の夜、自室で眠っていると目が覚めてしまい、外の空気を吸おうと廊下を歩いていると、縁側に座る秀吉さんの姿を見かけ声をかけた。



「秀吉さん」

「お前か、こんな時間にどうしたんだ?」

「目が覚めてしまったので外の空気を吸おうと思ったんです」



 私はそう言いながら夜空を見上げると、綺麗なお月様へと視線を向けた。

 その時視線を感じ秀吉さんへと視線を戻すと、二人の視線が重なり、バッと秀吉さんが顔を逸らしてしまった。



「月、綺麗だな」

「そうですね」



 そのあと何故か秀吉さんは私を見ようとはしないまま、私と秀吉さんは自室へと戻り眠りへとついた。
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