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第十二幕 甲斐の忍びと最後の日
三 甲斐の忍びと最後の日
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「皆も俺と同じ気持ちだ」
「っ、はい!また絶対にお会いしましょうね」
仲間だと言ってもらえたことが嬉しくて、気を抜いたら涙がこぼれ落ちそうで、私はグッと涙が流れないように真っ直ぐに皆を見詰め微笑んだ。
そのあとも皆は料理を食べ、お酒が進み、広間では皆が眠ってしまっていた。
私は皆が眠ってしまったあと、風呂敷に包んだ物を抱え、ある人物を探した。
「佐助!佐助はいますか?」
いろんな場所で名を呼んでみるがなかなか姿は現れず、やっぱり幸村の言うように人前には出てきてくれないのかもしれないと肩を落とした。
仕方がないため自室へ戻ろうと踵を返したその時、背後にスッと風が吹き、振り返ると、そこには探していた人物の姿があった。
「佐助!」
「そんなに何度も呼ばなくても聞こえてるっつの。で、俺になんか用なのかよ」
「えっと、これを佐助に渡したくて」
持っていた風呂敷を佐助へと差し出すと、佐助は眉を寄せながらも風呂敷を受け取った。
「何だよこれ」
「私が作った夕餉なんですけど」
「これを誰に渡せってんだよ」
「誰かに届けてほしいのではなく、それは佐助の分なんです」
「俺の……?忍の俺にこんなん作っても意味なんてねぇってのに」
迷惑だったかなと思い佐助へと視線を向けると、頬が薄く色付いているのが見える。
その時、佐助も私へと視線を向け、二人の視線が重なると口を開いた。
「屋根から見る星空、また見たいか?」
「はい!」
「なら、また甲斐へ来い、そしたら見せてやるよ」
佐助……。
佐助はきっと、明日私が尾張へ帰るから、また甲斐に遊びに来いって言ってくれているのだとすぐにわかった。
素直に言えないのが佐助で、その中に優しさがあることを私は知っている。
佐助に夕餉を渡すことができ、自室へ戻ると窓から夜空を眺めた。
甲斐で過ごす最後の夜、甲斐から眺める夜空も、今度はいつ見ることができるのだろうか。
窓から入る風は、春とはいえまだ肌寒く感じる。
明日は秀吉さんが迎えに来てくれるため、私は窓を閉めると布団へと入り、いつもより早めに眠りへとついた。
翌日、秀吉さんが迎えに来てくれ、甲斐の皆が門の前まで見送りに来てくれた。
「皆さん、お世話になりました」
「またいつでも来るといい、貴様ならいつでも歓迎するぞ。それにしても、まさか佐助、お前まで姿を表すとはな」
「別にいいだろ」
「またお会いできる日をお待ちしております」
「お嬢さんがいなくなると寂しくなるね」
「俺も殿と同じ気持ちです!」
皆と言葉を交わしたあと、秀吉さんの馬の背に乗せられ、秀吉さんは馬を走らせた。
遠ざかる甲斐のお城が見えなくなるまで見詰め、私は視線を前へと戻すと、甲斐の皆と離れる寂しく思いながら、久しぶりに尾張の皆と会えるのを楽しみに感じた。
「よくあの甲斐の奴等に同盟を結ばせたな!」
「結んでもらえるか正直不安でしたけど、結んでもらえるまで尾張に帰らないつもりでしたから」
「やっぱりお前は変わった女だな」
ニッと笑みを浮かべる秀吉さんを久しぶりに見ると、私は何年も甲斐にいたように感じてしまう。
実際は数日しかたっていないのに、何だか尾張にいたのが遠い昔のようだ。
「安土城の皆はお元気ですか?」
「ああ。お前が甲斐へ行ってから、皆お前がいつ帰って来るのかって甲斐へ行ったばかりだってのにずっと信長様に聞いてたぞ」
私が甲斐へ行っていた間の安土城での皆の様子を聞き、ついクスッと笑みが溢れてしまう。
こうして話を聞いていると、何だか安心してしまう。
「皆も待ってる、飛ばすぞ!」
「えっ?きゃっ!!」
秀吉さんは馬のスピードを上げ、一気に安土城へと走らせていく。
馬には大分慣れてはきたものの、まだ早いスピードには慣れておらず、私の叫び声が空へと響いた。
でも、このときの私はあることを忘れていた。
武将に愛を教えた今、私がここにいる理由はなくなってしまったことに。
安土城に帰ったあと、私はある選択を迫られることなど知るよしもなく、今はただ久しぶりに会える安土城の皆のことを馬の背に揺られながら考えていた。
馬を走らせたため、お昼過ぎには安土城に帰ることができ、馬から下ろされると、私は自室へ行く前に信長様の部屋へと向かった。
「実影です」
「入れ」
久しぶりに聞く信長様の声が襖の向こうから聞こえ、私は部屋へと入ると信長様の前へと腰を下ろした。
「今帰りました」
「よく戻ったな。今日は甲斐と越後との同盟を結ぶことができた宴を開く、貴様は夜まで自室で休んでいろ。そして、俺への想いの返事を今日の宴のあとに聞かせてもらおうか」
「えっ!今日ですか!?」
「ここまで待ってやったんだ、十分な時間はやったはずだ」
「そうかもしれませんけど……」
返事もなにも、皆に告白をされたあとすぐに甲斐へと向かったため、告白の返事なんてすっかり忘れており考えていなかった。
「返事は聞かずともわかるが、夜に貴様の口から聞かせろ」
有無を言わさぬ勢いで、結局何も言えず、私は一度自室へと戻った。
今日告白の返事をすることになっちゃったけど、返事をずっと待ってもらうわけにもいかないため丁度いい機会なのかもしれない。
「久しぶりの安土城だね」
「刻!」
「やぁ!君のお陰で、この時代の重要人物の武将全てに愛を知ってもらうことができたよ。これで君を元の世界に返すことができるよ!」
「え……?」
刻に言われて思い出した、私がこの世界に連れてこられた理由は、武将達に愛を教えることで、今皆は愛を知っている。
私はもうこの時代にいる必要はないということだ。
「明日、君を元の世界に帰すよ」
元の世界に帰ることなんて考えてもいなかった。
私は皆とずっと一緒なのだと思っていたから。
でも、元の世界に帰れば二度と皆に会うことはできなくなってしまう……。
「暗い顔をしているね、もし君がこの時代に残りたいというのなら、僕は君の選択を受け入れるよ。ただその選択を選んだら、君は元の世界には二度と帰ることができなくなる」
この時代に残るか、元の世界に帰るか、今日の宴が終るまでに返事を聞かせてほしいとだけ言うと、刻の姿は再び消えてしまった。
告白の返事に、残るか帰るかの選択、考えることが増えてしまった。
結局そのあとも一人考えても答えがでないまま宴の時間となり、広間へと向かった。
皆が集まると宴が開かれ、料理やお酒を飲み始めるが、私はその間もどうしたらいいのか、私はどうしたいのかを考えていた。
「元気ないみたいだけどどうかした?」
隣に座る家康さんが私を心配し顔を覗き込んできた。
このままじゃ皆に心配をかけるだけだ、どんな答えになったとしても、私が後悔しない選択をすればいいだけなんだ。
「何でもないですよ!尾張の料理は久しぶりでとても美味しいです」
「よかった。この料理は全て信長様が女中に作らせたものなんだよ、君が帰ってくるから尾張の料理を食べさせたいって!」
「信長様が……」
「この宴は同盟を結んだ御祝いでもあるけど、君が尾張に帰ってきたのを喜んでの宴でもあるんだよ」
私のための宴でもあると言われ、私は並べられた料理に改めて目を向けた。
「あれ?これって……」
「ようやく気付いたようだな!これはお前に教えてもらったちゃーはんの調味料や具材を変えたものだ」
炒飯の入った器を手にし、一口パクリと食べると、私が教えた物より何倍もの美味しさになっていた。
「とても美味しいです!!」
「お前に味見してもらってから色々と手を加えてみたからな!」
こうして皆で夕餉を食べて笑い会える日が来るなんて、最初の頃は想像もできなかった。
私の答えはすでに出ていたのかもしれない、この時代に来たときは元の世界に帰るために頑張ろうと思ってた。
でも、今では皆とのこんな毎日が楽しいと感じてる私がいる。
私の想いはすでに決まっている、でも、この選択で私はいいのか、後悔しないのか不安だったのかも知れない。
それでも、選ばなければいけないのなら、私は私の気持ちに正直でいたいから。
私は一度広間から出て自室へと向かうと刻を呼んだ。
「刻、私の答えは決まったよ!」
刻の名を呼ぶと、スッと私の前に姿を現した。
「決まったみたいだね、君の想いも、この先どうしたいのかも。君の答えを僕に聞かせてほしい」
私の選択に、もう迷いはない。
私は刻を真っ直ぐに見詰めると口を開いた。
「っ、はい!また絶対にお会いしましょうね」
仲間だと言ってもらえたことが嬉しくて、気を抜いたら涙がこぼれ落ちそうで、私はグッと涙が流れないように真っ直ぐに皆を見詰め微笑んだ。
そのあとも皆は料理を食べ、お酒が進み、広間では皆が眠ってしまっていた。
私は皆が眠ってしまったあと、風呂敷に包んだ物を抱え、ある人物を探した。
「佐助!佐助はいますか?」
いろんな場所で名を呼んでみるがなかなか姿は現れず、やっぱり幸村の言うように人前には出てきてくれないのかもしれないと肩を落とした。
仕方がないため自室へ戻ろうと踵を返したその時、背後にスッと風が吹き、振り返ると、そこには探していた人物の姿があった。
「佐助!」
「そんなに何度も呼ばなくても聞こえてるっつの。で、俺になんか用なのかよ」
「えっと、これを佐助に渡したくて」
持っていた風呂敷を佐助へと差し出すと、佐助は眉を寄せながらも風呂敷を受け取った。
「何だよこれ」
「私が作った夕餉なんですけど」
「これを誰に渡せってんだよ」
「誰かに届けてほしいのではなく、それは佐助の分なんです」
「俺の……?忍の俺にこんなん作っても意味なんてねぇってのに」
迷惑だったかなと思い佐助へと視線を向けると、頬が薄く色付いているのが見える。
その時、佐助も私へと視線を向け、二人の視線が重なると口を開いた。
「屋根から見る星空、また見たいか?」
「はい!」
「なら、また甲斐へ来い、そしたら見せてやるよ」
佐助……。
佐助はきっと、明日私が尾張へ帰るから、また甲斐に遊びに来いって言ってくれているのだとすぐにわかった。
素直に言えないのが佐助で、その中に優しさがあることを私は知っている。
佐助に夕餉を渡すことができ、自室へ戻ると窓から夜空を眺めた。
甲斐で過ごす最後の夜、甲斐から眺める夜空も、今度はいつ見ることができるのだろうか。
窓から入る風は、春とはいえまだ肌寒く感じる。
明日は秀吉さんが迎えに来てくれるため、私は窓を閉めると布団へと入り、いつもより早めに眠りへとついた。
翌日、秀吉さんが迎えに来てくれ、甲斐の皆が門の前まで見送りに来てくれた。
「皆さん、お世話になりました」
「またいつでも来るといい、貴様ならいつでも歓迎するぞ。それにしても、まさか佐助、お前まで姿を表すとはな」
「別にいいだろ」
「またお会いできる日をお待ちしております」
「お嬢さんがいなくなると寂しくなるね」
「俺も殿と同じ気持ちです!」
皆と言葉を交わしたあと、秀吉さんの馬の背に乗せられ、秀吉さんは馬を走らせた。
遠ざかる甲斐のお城が見えなくなるまで見詰め、私は視線を前へと戻すと、甲斐の皆と離れる寂しく思いながら、久しぶりに尾張の皆と会えるのを楽しみに感じた。
「よくあの甲斐の奴等に同盟を結ばせたな!」
「結んでもらえるか正直不安でしたけど、結んでもらえるまで尾張に帰らないつもりでしたから」
「やっぱりお前は変わった女だな」
ニッと笑みを浮かべる秀吉さんを久しぶりに見ると、私は何年も甲斐にいたように感じてしまう。
実際は数日しかたっていないのに、何だか尾張にいたのが遠い昔のようだ。
「安土城の皆はお元気ですか?」
「ああ。お前が甲斐へ行ってから、皆お前がいつ帰って来るのかって甲斐へ行ったばかりだってのにずっと信長様に聞いてたぞ」
私が甲斐へ行っていた間の安土城での皆の様子を聞き、ついクスッと笑みが溢れてしまう。
こうして話を聞いていると、何だか安心してしまう。
「皆も待ってる、飛ばすぞ!」
「えっ?きゃっ!!」
秀吉さんは馬のスピードを上げ、一気に安土城へと走らせていく。
馬には大分慣れてはきたものの、まだ早いスピードには慣れておらず、私の叫び声が空へと響いた。
でも、このときの私はあることを忘れていた。
武将に愛を教えた今、私がここにいる理由はなくなってしまったことに。
安土城に帰ったあと、私はある選択を迫られることなど知るよしもなく、今はただ久しぶりに会える安土城の皆のことを馬の背に揺られながら考えていた。
馬を走らせたため、お昼過ぎには安土城に帰ることができ、馬から下ろされると、私は自室へ行く前に信長様の部屋へと向かった。
「実影です」
「入れ」
久しぶりに聞く信長様の声が襖の向こうから聞こえ、私は部屋へと入ると信長様の前へと腰を下ろした。
「今帰りました」
「よく戻ったな。今日は甲斐と越後との同盟を結ぶことができた宴を開く、貴様は夜まで自室で休んでいろ。そして、俺への想いの返事を今日の宴のあとに聞かせてもらおうか」
「えっ!今日ですか!?」
「ここまで待ってやったんだ、十分な時間はやったはずだ」
「そうかもしれませんけど……」
返事もなにも、皆に告白をされたあとすぐに甲斐へと向かったため、告白の返事なんてすっかり忘れており考えていなかった。
「返事は聞かずともわかるが、夜に貴様の口から聞かせろ」
有無を言わさぬ勢いで、結局何も言えず、私は一度自室へと戻った。
今日告白の返事をすることになっちゃったけど、返事をずっと待ってもらうわけにもいかないため丁度いい機会なのかもしれない。
「久しぶりの安土城だね」
「刻!」
「やぁ!君のお陰で、この時代の重要人物の武将全てに愛を知ってもらうことができたよ。これで君を元の世界に返すことができるよ!」
「え……?」
刻に言われて思い出した、私がこの世界に連れてこられた理由は、武将達に愛を教えることで、今皆は愛を知っている。
私はもうこの時代にいる必要はないということだ。
「明日、君を元の世界に帰すよ」
元の世界に帰ることなんて考えてもいなかった。
私は皆とずっと一緒なのだと思っていたから。
でも、元の世界に帰れば二度と皆に会うことはできなくなってしまう……。
「暗い顔をしているね、もし君がこの時代に残りたいというのなら、僕は君の選択を受け入れるよ。ただその選択を選んだら、君は元の世界には二度と帰ることができなくなる」
この時代に残るか、元の世界に帰るか、今日の宴が終るまでに返事を聞かせてほしいとだけ言うと、刻の姿は再び消えてしまった。
告白の返事に、残るか帰るかの選択、考えることが増えてしまった。
結局そのあとも一人考えても答えがでないまま宴の時間となり、広間へと向かった。
皆が集まると宴が開かれ、料理やお酒を飲み始めるが、私はその間もどうしたらいいのか、私はどうしたいのかを考えていた。
「元気ないみたいだけどどうかした?」
隣に座る家康さんが私を心配し顔を覗き込んできた。
このままじゃ皆に心配をかけるだけだ、どんな答えになったとしても、私が後悔しない選択をすればいいだけなんだ。
「何でもないですよ!尾張の料理は久しぶりでとても美味しいです」
「よかった。この料理は全て信長様が女中に作らせたものなんだよ、君が帰ってくるから尾張の料理を食べさせたいって!」
「信長様が……」
「この宴は同盟を結んだ御祝いでもあるけど、君が尾張に帰ってきたのを喜んでの宴でもあるんだよ」
私のための宴でもあると言われ、私は並べられた料理に改めて目を向けた。
「あれ?これって……」
「ようやく気付いたようだな!これはお前に教えてもらったちゃーはんの調味料や具材を変えたものだ」
炒飯の入った器を手にし、一口パクリと食べると、私が教えた物より何倍もの美味しさになっていた。
「とても美味しいです!!」
「お前に味見してもらってから色々と手を加えてみたからな!」
こうして皆で夕餉を食べて笑い会える日が来るなんて、最初の頃は想像もできなかった。
私の答えはすでに出ていたのかもしれない、この時代に来たときは元の世界に帰るために頑張ろうと思ってた。
でも、今では皆とのこんな毎日が楽しいと感じてる私がいる。
私の想いはすでに決まっている、でも、この選択で私はいいのか、後悔しないのか不安だったのかも知れない。
それでも、選ばなければいけないのなら、私は私の気持ちに正直でいたいから。
私は一度広間から出て自室へと向かうと刻を呼んだ。
「刻、私の答えは決まったよ!」
刻の名を呼ぶと、スッと私の前に姿を現した。
「決まったみたいだね、君の想いも、この先どうしたいのかも。君の答えを僕に聞かせてほしい」
私の選択に、もう迷いはない。
私は刻を真っ直ぐに見詰めると口を開いた。
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