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第1話 踊れ★情熱★パパラチア!
レッツ・ダンス(改稿)
しおりを挟む気がつくと、俺はステージの上にいた。
公園だったはずだ。
コンビニの帰り道、公園沿いの道を歩いていたら猫の鳴き声が聞こえて。野良猫でもいるのかと思って公園に入った……はずだった。
最近は室内飼いが推奨されているから、なかなか外で猫を見かけない。だから、生猫がいるなら見たい。
そう思って公園に足を向けた瞬間——
「うわ!!」
子猫が飛んできた。
白と灰色のアメリカンショートヘアらしい子猫が、大きくジャンプして俺の顔目がけて飛んで来た。思わず受け止める。
ふに。
小さな前足の柔らかい肉球が俺のほっぺに乗っている。
ふに、ふに。
確かめるように足踏みした子猫が、はっきりとした声で言った。
「いっしょに、おどろ」
「はい。」
即答だ。
こんな状況での選択肢は、「はい」「イエス」「もちろん」「よろこんで!」の4択に決まってる。
弾けるように陽気なBGMが流れ始める。
「……え?」
音楽に驚いて周囲を確認すると、そこはステージの上だった。
周りにはたくさんの猫、猫、猫!!
「ね……こ?」
ワン、ツー、スリー、フォー!!
元気のいい掛け声と共に、猫たちは一斉に踊り始めた。
タタン、タン、タタタン、タッタ……
軽やかなステップで踊る踊る。何?このダンス猫の群れ。
訓練された演舞というより、みんなが好き勝手に踊ってる感じ。だけどそれが奇妙なバランスで一体感を保ってる。上手い。
「おどろ」
子猫はそう言って俺から飛び降りた。
こうなりゃヤケだ。
俺も一歩前に出て、猫達と一緒に踊り出す。ああ……楽しい。
ダンスは好きだ。
中学の体育で授業がダンスの日には、休み時間になってもずっと踊ってたっけ。
学年で一番ダンスが上手いとは言わないけど、二番か三番……まあ、五番目までには入るだろう。
高校生になってからは思いっきり踊る事がなかったな、そういえば。
久しぶりに体を動かすのが楽しくて、上手く踊ろうとか考えずに、ただただ音楽にノって踊りまくった。猫達も、曲に合わせて飛んだり跳ねたり。ステップ、ステップ、はいターン。
こいつら、ただの猫じゃない。まるで人間の様に後ろ脚で立ち上がり、一列に並んでボックス・ステップ。中にはムーン・ウォークするヤツまで…!!
俺、できないんだよアレ。
音の具合とみんなの動きで曲の最後が近づいたのを察し、ひと所に集まって一緒に決めポーズ!
うはっ。
立てた膝や肩の上に猫達が飛び乗って来た!
もふもふ! もっっふもふ!!!
大歓声と虹色のライトに包まれ、ステージは終わる。
「いやあ~、楽しかったナ!」
ひときわ体の大きなハチワレ猫が、目を細めながら二本足で歩いて近づいて来る。
やっぱり猫がしゃべってる。夢じゃない。
「お前さん、乱入するだけあって、ダンスがうまいんだナ!」
へえ、語尾は「ニャ」じゃないんだ……、じゃなくて!
「ええと、……ココはドコですか?」
「変なコトを聞くナ。ここはネコランドなんだナ!」
「ネコランド?」
息を整えながら辺りを見回すとステージの周りには花壇があり、その色とりどりの花の向こうには、いくつかのベンチと広い石畳の空間。遊園地の中のイベント用スペースと言ったところか。
「ネコランドは猫のランドなんだナ! 園長が言ってたから、間違いないんだナ!」
「あははは…」
知らない場所。そして何より、しゃべる猫。
これはもしかして、もしかしなくても、ウワサに聞く異世界転移か?
俺、別の世界に来ちゃったのか?
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※2023.05.15 改稿しました
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