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第1話 踊れ★情熱★パパラチア!
パパラチアキャット
しおりを挟む猫のダンスは、この遊園地の目玉なのかもしれない。
ステージ前のベンチには大勢の人達が座っている。大人気だ。まあ、可愛いからな。
子供だけでなく大人も何人も座っている。
保護者か?
それにしては衣装が……まるで、ゲームに出てくる冒険者みたいだ。革鎧だのマントだのローブだのを身につけて、剣や盾、魔法の杖らしきものを手にしている。遊園地のスタッフなんだろうか。それともどこかでコスプレ衣装を貸してるのかな。
彼らは猫のステージが終わるとおもむろに立ち上がり、「じゃあ、行ってくる」と猫達に挨拶をしてどこかへ向かう。
常連さんなのか、猫たちも「行ってらっしゃーい」「がんばってナー」と手を振っている。
「よう、新入り」
二本足で歩く黒猫に声をかけられた。瞳が燃える夕日のようなピンクオレンジ色をしている。
「お前、アレだろ? イセカイジンだろ?」
「え? あ……う、……」
発音がおかしくて最初は分からなかったが「異世界人」か。
他の世界から見れば、俺がいた世界が異世界だもんな。
「そう……なのかな?」
「そうさ。だろうよ。たぶんな。オレ達パパラチアキャットのステージに上がれるんだから、邪悪な存在ではない」
パパラ……何?
「そうだナー。園長も言ってたナー。このステージには浄化のチカラがあるってナー」
「おまえ、ダンス、うまい。ナカマ。トモダチ、なれ!」
白地にグレーの模様が入ったアメショー風の小さな猫が、肩の上からのぞき込むようにして言う。体が大きくて目の細いハチワレ猫もうなずく。
「ダンスはみんなをハッピーにするナ。ダンスを踊れるナカマ、ほしい。ダンスは世界を救うんだナー」
「あ、ありがとう」
ダンス猫達のイベントを邪魔してしまったんじゃないかと気にしていたが、そうでもないらしい。むしろ喜んでくれている。
「おいらはパパラチアキャット舞踏団の団長、マッツオ。よろしくなんだナ」
「俺は悠希。岩佐悠希。」
周りには次々と二本足で歩く猫、パパラチアキャット達が近寄って来た。
パパラチアキャットはただの猫ではなく、幸運をもたらすと言われる獣人の一種族らしい。みんな瞳は同じピンクオレンジ色をしてるが、体の模様や色は様々だ。
黒猫のリト、アメショー柄の子猫チビスケ、青っぽい縞猫や全体がピンクや黄色の猫もいる。
「今日の分のダンスは終わりだナ。これから打ち上げナ。お前さんも来るといいナ」
「ありがとう。行く行く!」
猫達は毎日3回、この場所でダンスを披露しているそうだ。
何それ天国かよ。元の世界にもあるといいのに。
って、元の世界に帰る方法を探さなきゃと思うんだけど、今はチビスケをもふるのに忙しくてそれどころではない。
チビスケは俺の肩から腕の中に移動し、苦しゅうないと言わんばかりに後頭部をを差し出した。
よいではないか、よいではないか。可愛い子猫がなで放題とか!
やっぱりここは天国に違いない。
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