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第4話 アンダンテで行こう★
モニターかカモのどっちか
しおりを挟む蝶のように薄い羽を持つ小さな妖精の少女と、背の高いスポーツ選手のような鬼の女性。鬼と言っても化け物じみた外見ではなく、格闘ゲームにでも出てきそうなカッコいい美女である。彼女達は、冒険者ギルドで登録の時に担当してくれた職員の2人だ。
2人もダンジョンに潜るところだったようで、水晶玉の前に立っていた。正確に言えば、立っていたのは赤鬼の女性で、妖精は宙を飛んでいたが。
「こんにちわ!……えーと、先日、冒険者の登録でお世話になった岩佐悠希です」
怪訝な顔をされてしまったので自己紹介も付け加える。
「ああ、あの時の少年。ぐるぐるは採れたか?」
覚えていてくれたようだ。
「はい。今日もぐるぐる採りです」
「どーもォ、おひとりですかァ?」
「オレ達も一緒だ」
「げ。バカ猫」
「うるせえおしゃべり虫」
妖精少女はリトと知り合いらしい。
「冒険には慣れたか?、少年」
「前回はずっと守ってもらってたので、自分の身を守れるくらいには強くなりたいと思ってギルドの講習に通いました。これから実践です」
「そうか。頑張れ」
「バーカバーカ」
「落とすぞチンクシャ」
横、うるさい。
ピップルとポップルなんか、他人の顔をして離れてる。
「アタシ達はこれからダンジョン内の見回りだ。丁度いい。途中まで君達に同行させてもらうよ」
「ええっ、アスル、コイツと行く気?ッ……ふみゃああぁぁ~……」
飛んで来た妖精をすばやくキャッチして遠くに放り投げ、話を続ける鬼のお姉さん。アスルという名前らしい。
「冒険者の利便性を確認するのもギルド職員のつとめ。普段通りの行動を観察させて欲しい。戦闘の邪魔はしない。後ろからついて行ってもいいかな?」
「俺は別に構わないけど……」
「いいんじゃない?」
「オッケー☆」
「でも、たぶん俺、戦い方、ヘタですよ?」
「そういう査定はしないから大丈夫。新人が見落としやすい危険とか、必要そうなサポートとかをチェックして報告書にまとめるだけだ。君達の名前は出さない」
なるほど、モニターチェックか。
「とは言え、もしも危険が迫ったら手を貸そう。それが報酬代わりと思って欲しい」
「それならオレも賛成だ。このパーティでの冒険は初めてだし、人数も少なめだしな」
「ありがとう。アタシは鬼族のアスル。あっちの妖精族はクシルフェイ、クシィと呼んでいい。知っての通り、2人とも冒険者ギルドの職員だ。よろしくな」
「よろしく」
俺達は握手を交わし、忘れずに水晶玉にタッチしてから奥へ進む。
後ろでは、飛んで戻って来たクシィがアスルに話しかけている。
「やるわね、アスル。これで低層階のタルい戦闘にわずらわされないで業務遂行できるわァ!」
……あの妖精、可愛らしい見た目と違って結構黒いな。
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