世界樹の管理人

浅間遊歩

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第1章 初めての旅

旅立ちの日

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「それでは、お願いしますね、ルーベンさん」
「任せてください、ロレン院長。ちゃんとマホテアまで送り届けますよ」

 人の良さそうな赤ら顔に短めの黒い髪。地方の村々を巡回する行商人のルーベンさんは、自分の胸をポンと叩いて請け負う。それから私を見て言った。

「長旅は初めてかい? 慣れれば割と楽しいものだよ。デレファンもマグリーも一緒だからね。家族旅行のつもりで気楽にするといい」
「はい。ありがとうございます。よろしくお願いします!」

 デレファンとマグリーはルーベンさんの養子で、ルーベン商会の従業員。その前はここ、「緑の羊園」にいた。
 つまり、二人とも孤児院の先輩。だから確かに家族みたいなものね。

 孤児院の前にはルーベンさんのほろ馬車が停まっていて、積んできた荷物の一部を降ろしている。
 孤児院が買い入れる物資だ。

 いつでも貧乏な孤児院にとって、ルーベンさんは本当にありがたい人だった。贅沢を言わずに使う分には全く問題のない商品を安くたくさん売ってくれる。そして時には、思いもかけないような物を安く仕入れて来ては、みんなを驚かせるのだった。

 私とルーベンさんが馬車に近づくと、荷下ろしを仕切っているデレファンの声が聞こえてきた。

「列に並んでマグリーから荷物を受け取れ! 食料庫へ持って行って、先生の言う通りに棚に入れるんだ! 急がなくていい! 丁寧に運べ!」

 荷運びを手伝っているのは緑の羊園の子供達。持てる重さの荷物は担いで、重い穀物の袋は手押し車を使って運んでいる。この納品のお手伝いをすると、終わった後に賃金として銅貨が二枚ももらえるの!

 デレファンは10歳も年の離れた「大きな兄ちゃん」で、物心ついた頃にはもう既に「ルーベンさんの息子」だったけど、マグリーは一緒に育った時期もある「よく知ってる兄ちゃん」ね。
 ルーベンさんと一緒に近づくと、二人の兄貴達が私に気づいた。

「ミリアナ!」

 マグリーが駆け寄ってきた。
 薄茶色の髪にはしばみ色の目。元気なソバカスもいつも通り。

「マホテアで仕事をするんだって?」
「仕事の面接よ。採用されるかは、まだ決まってないの」
「そうか、きっといい旅に…ああっ、ダメダメ! それじゃない! 今行くからそれを引っ張るんじゃない! じゃ、また後でな」

 ほろ馬車の荷台に積み上がった荷物を見境なく引っ張ろうとしている子供を見つけ、マグリーはあわてて持ち場に戻って行った。
 馬車の前では、ルーベンさんとデレファンが仕事の打ち合わせをしている。
 デレファンの髪はげ茶で、瞳は青。

「じゃあ、集荷の方も終わったのかい?」
「今月は畑仕事で忙しかったそうだ。だから毛織物も細工物も少ししかないと、直接ここまで持って来たんだ。検品して、いつもの値段で買っておいたよ。カブならたくさんあるって言ってたけど、どうする?」
「空荷で移動するのももったいないから少しばかり仕入れて行くか」
「良かった。広場に持ってくるように頼んである」

 この辺りの特産品は毛織物だ。羊をたくさん飼っていて、取れた毛を紡いで布に織る。
 昔は羊毛のまま出荷していたそうだが、ルーベンさんのアドバイスで製品化してから売るようにしたら、手間はかかるものの収入が何倍にも増えたんだって。
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