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第1章 初めての旅
できるだろうか?
しおりを挟む私にフルネームがあるのは、赤ちゃんの時から記憶力が良かったわけじゃない。院長先生のおかげだ。
院長先生は愛する子供たち全員の名前を完璧に暗記していた。それで火事の後、燃えてしまった書類の代わりに新しい書類を作ることができたのだ。
私にとっては、物心ついた頃から緑の羊園が「家」だった。
だから、普通の子供が親の手伝いをするように、私は孤児院での色々な仕事を手伝い、覚えていった。
そう。最初は何もできなかった。年上の子に教えてもらったり本を読んだりして少しづつできることが増えていったのだ。
新しい仕事もそうだろうか?
一つ一つ、覚えていけば、私にもできる仕事だろうか?
「面接ってどんな事をするんだろう」
思わず口に出してつぶやく。それを聞いたタークがすぐに、
「知ってる。ジロッて見られて、歳は?って聞かれるんだ。ちゃんと15って答えるんだぜ?」
と、素晴らしいアドバイスをくれた。
「それはアンタが牛乳配達の仕事をもらおうとした時のことでしょ? 5つもサバ読むから、おじさん笑ってたじゃない」
「だって大人じゃないとダメだって言うんだもん」
ジェンクは双子の兄の失敗談で笑い転げている。
「歳は…若くても大丈夫かもしれないって言われてるの。そしつの方向が必要なんだとか言ってたと思うわ」
自分が理解してない話をアヤフヤなまま他人に説明しようとすると、どうしても意味不明になってしまう。最後は小声になってしまった。
「とにかく、面接に行けば詳しい仕事内容を説明してくれるんだって。それを聞いて、判断すればいいわ」
「いいなぁ、マホテア。俺も行きたい」
「俺も。一緒に連れてって」
「無理よ」
「行きたい行きたい」
「俺も行く。行って冒険者になるんだっ」
どうやら二人の冒険者魂に火をつけてしまったらしい。行きたい行きたいの大合唱が始まった。
私は二人に向き直り、それぞれの肩に手を置いて真剣な顔で語りかける。
「ねぇ、二人とも。ううん、冒険者ターク、冒険者ジェンク。あなた達のミッションはここにあるわ。『先生方を助け、小さい子供達を守ること』。それが君たちに課せられた使命だよ。任せても大丈夫かな?」
「できるさっ!」
「よし、引き受けた!」
任務というのは冒険者組合が発行する仕事の一種で、やや公的な色合いの強い重要なものだ。組合の加盟員は可能な限り参加が求められる。怪我や病気で動けなかったり重要な任務を遂行中だったり以外の冒険者は、基本的に全員参加だ。
魔獣が大発生して甚大な被害が予想される時の討伐とその支援など、優先順位が高い危険な仕事がほとんどなので、もらえるギルドポイントも多めとなっている。
子供に何かを頼む時には「ごっこ遊び」が有効なことを、私はこの十年で学んでいた。孤児院の先輩達によって、私も花に水をやる妖精になったり、部屋の掃除をする魔法使いになったりしたものだった。
ただし真剣にやること。それが大事。
私は自信満々に胸を張る双子の少年達をぎゅうっと抱きしめた。
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