世界樹の管理人

浅間遊歩

文字の大きさ
11 / 77
第1章 初めての旅

売って買って運んで売って

しおりを挟む
 疲れたせいか、ワインのおかげか、夜はぐっすり眠れた。
 いや眠り過ぎたらしい。
 翌朝、目を覚ますと、ルーベンさん達はもう出発準備を始めていた。
 あわてて毛布から飛び出す。ううっ、寒いっ!

「ごめんなさいっ、寝過ごしちゃった!」
「いやいや、いいんだ。今日は出発が早いんだよ」

 空を見上げると、まだ夜が明けたばかりのようだ。うっすらと朝焼けの色が残っている。

「立ち寄る場所の関係で、今朝は早く立たないとならなくてね。これは私達の仕事だから気にせずに。もう少し寝てて大丈夫だよ」

 そう言われても、一度起きてしまった以上、みんなが働いてるのに一人だけ寝直すってのは無理!

 ヨロヨロと村の井戸を借りて顔を洗い、水筒に新しい水を詰めて馬車に戻ると、出発の準備はもう終わっていた。
 昨日と同じように御者台に登ろうとすると、何故かデレファンが毛布を広げて近づいてくる。

「ふ・ふ・ふ…」
「な、なあに? デレファン」
「お姫様はこっちだ」
「きゃっ」

 問答無用で毛布にくるまれ、荷台に突っ込まれる。

「ぷはぁ!」

 グルグル巻きになった毛布から何とか顔を出すと、のぞき込むデレファンと目があった。

「寝不足で無理をすると気持ち悪くなる。ここで寝てろ」
「ふわぁい……」

 頭をポンポンされて、変な返事をしたのは覚えている。
 どうやらそのまま眠ってしまったらしい。

 ツーピー、ツーピー、チチチチ……

 小鳥の声に目を覚ますと、今度こそ普通の朝だった。
 すっかり明るくなっているが太陽はまだあまり高くない。
 馬車は川沿いの道をゆっくりと進んでいた。

 他の3人は御者台にいた。何か話し合っているようだ。
 サッと髪と服の乱れを直してから声をかける。

「おはようございます、ルーベンさん。デレファン、マグリー」
「おはよう!」
「やあ、おはよう」
「おはよう、ミリアナ。ねえ、川魚の塩焼きと蒸し煮と猪肉のタレ焼き、どれがいい?」
「はい??」

 状況がつかめずに目を丸くすると、みんな弾けるように笑い出した。
 マグリーが御者台の背もたれを乗り越え、荷台の方へ移って来て隣に座った。

「ごめんごめん。もうしばらく行った先で朝市をやっててさ、納品したらその後そこでメシなんだけど」

 どうやら朝食を何にするか、集まって相談していたらしい。

 ラジテ村から運んできた漬物の樽は3つとも朝市で下ろされた。
 そのままみんなで売るのかと思ったら、そうではなく、売るのはまた別の人らしい。
 世界は私が知っているより、ずっとずっと多くの人が関わってできているみたい。

 そんな風にして、ルーベンさんたちとの旅は続いた。
 時には、村とは呼べないほどの小さな集落や人里離れた工房などに寄ることもある。
 その度に物を売ったり買ったりして、荷台の中身は次々と変わってゆく。

 ウモグル村を出て4日目の午後、御者台の隣の席でマグリーが言った。

「今日はこの先のアゼッサで終わりだ。割と大きな町だよ」
「アゼッサでは何を仕入れるの?」
「アゼッサでは売るだけだ」
「食事の美味しい宿に泊まりますからね。楽しみにしていてください。それから、明日の午前中は用事があるので出発は昼です」

 後ろの馬車の中からルーベンさんの声がした。
 私達の隣で手綱を握っているデレファンはニヤッと笑い、

「ミリアナと一緒に遊んでこいよ、マグリー。馬車はいつものように商業組合ギルドに預けるから大丈夫」

 マグリーは私の方を向き、少し照れ臭そうに言った。

「父さんと兄さんが用事を済ませてる間は自由時間なんだ。町を見て歩こうぜ。串焼きか何かおごってやるよ」
「やった!」

 アゼッサでは、闇の曜日以外はいつでも屋台がたくさん出てるのだという。それに、マホテアほどではないけど、とっても多くの人がいるんだって。

「毎日が光の曜日みたいな感じ?」
「ちょっと違うけど、まあ、見てのお楽しみ」

 うん、本当に楽しみ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜

百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。 「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」 ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!? ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……? サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います! ※他サイト様にも掲載

悪役令嬢は死んで生き返ってついでに中身も入れ替えました

蒼黒せい
恋愛
侯爵令嬢ミリアはその性格の悪さと家の権威散らし、散財から学園内では大層嫌われていた。しかし、突如不治の病にかかった彼女は5年という長い年月苦しみ続け、そして治療の甲斐もなく亡くなってしまう。しかし、直後に彼女は息を吹き返す。病を克服して。 だが、その中身は全くの別人であった。かつて『日本人』として生きていた女性は、異世界という新たな世界で二度目の生を謳歌する… ※同名アカウントでなろう・カクヨムにも投稿しています

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

処理中です...