世界樹の管理人

浅間遊歩

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第1章 初めての旅

懐かしい光

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「簡単に見分ける方法は、耳かしら。人間の耳は楕円形で渦を巻いてる。エルフの耳は尖って長い」
「あ、ほんと!」

 私はエルフのお姉さんの耳を見て叫んだ。そういえば、私に通行許可証をくれたクレヴァンシアス氏も、こんな形の耳をしていた、珍しい形だな、とは思ったけど。

「ホッパーはよく人間の子供と間違われるけど、耳は丸くて全体が大きい。その上、動かせるのよ!」

 お姉さんは両手を耳の所に当ててヒラヒラと動かした。

「ドワーフは…耳を見なくても分かると思うけど、耳の渦はもっと入り組んでいて耳たぶが大きい。でも大量のあご髭に埋もれて見えないことの方が多いわね」
「へえええぇ~~! すごいすごい! 面白い! 楽しいね!」
「でしょう? 私もそんな風に思って、世界を見て回る旅に出たの。今は人間領で冒険者をしているわ。だから魔法認証付きのエルフのカードと聞いたら懐かしくなっちゃって」

 エルフのお姉さんは、もうバックパックの背負いヒモを押さえてはいなかった。私は中から薄緑色の通行許可証を取り出し、お姉さんに差し出した。

「はい。コレ」
「指をこの枠の中に置いてみて。こんな風に指でつまんで持つのよ」

 お姉さんは自分のカードでやって見せてくれた。それを真似して、親指の腹が右下の枠の中に収まる様にカードの端をつまんで持つ。
 するとお姉さんは自分の人差し指を私の親指の上に重ねた。
 じわっと、暖かい気配が指を通り抜けてカードに染み込むと同時に、カードが緑色に光り出す。みずみずしい若葉の色だ。

「うわぁ、キレイ!」
「これが『承認』の色。登録したのとは別の人が使おうとすると赤く光るし、記載に不備があると黄色に光るの」
「すげー! エルフの国だと魔法器具を使わずに調べられるって聞いてたけど本当なんだ!」
「魔力を流し込むだけだから、慣れれば簡単よ」

 お姉さんはしばらく光に見入っていたが、やがて満足したらしく指を離した。

「でも人間領では誰もが気軽に確認できるわけじゃないから、見た目だけで通用しちゃう場所もあるのかも。門番の衛兵があれだけ警戒してた位だから。もしかしたら、狙われたのは現金じゃなくてこのカードかもしれないわ」
「悪党に高く売れるんだろうな。嫌な話だが、盗品ばっかり扱う店や市場もあるんだ」
「そんな…これからも狙われる?」
「ミリアナ、少なくとも現金はいつだって狙われる。お前みたいに見るからにトロそうな奴は特にな」
「むうう~」

 困る。それは困る。

「ミリアナ、懐かしい光を見せてくれてありがとう。私は、ルルーシエンラシェン・ホルトラハ・ル・ト・ターニク。冒険ギルドにはルルーシェ・ホルトで登録してあるわ」
「どういたしまして。私は、ミリアナ・グレウス・ユウレンド。こちらこそ、色々と教えていただき、ありがとうございます。大変、勉強になりました」
「俺は、マグリー・ルーベン。ミリアナの兄貴みたいなもんだ。ミリアナを助けてくれてありがとう。俺も勉強になった」

 それから3人で雑貨屋に移動し、細々こまごまと考えていた物ではなく、ベルトとベルトポーチを買った。
 ベルトポーチは革でできた小さな物入れで、ベルトに通して固定する。通行許可証と現金は、そこに入れておくことにした。

「刃物でポーチを切り裂いて中身を抜き取るスリもいるから油断はできないけど、背中に背負ったバックパックに入れておくよりは安全なはずよ」

 ルルーシェさんが私を安心させるように言いながら、ポーチの位置を調整してくれる。

「それじゃあ、道中、気をつけてね、ミリアナ。今の仕事が終わったら一度マホテアに帰るから、また会えるわね」
「ルルーシェさんはマホテアに住んでるんですか?」
「そう。マホテアの冒険者ギルド所属なのよ。仕事が完了したら報告に戻るの」
「でもマホテアってものすごく大きな街なんでしょう?」
「アゼッサより全然でかいぜ? ウモグル村と違って他人に関心が薄いから、誰がどこに住んでるか、聞いても分からないと思うけど…」
「分かるわ。その通行許可証に行く先が書いてあるから。マホテアでは誰でも知ってる場所よ」

 私は薄緑色のカードを取り出し記載されている情報を見た。見慣れない文字。エルフ文字だ。さすがに読めない。
 ルルーシェが1つの項目を指差し、声に出して読み上げた。

「ユグドール……世界樹。あなたは世界樹の元へ行くのよ、ミリアナ」
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