私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?

きららののん

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大聖堂の外で、国民からの熱狂的な祝福のフラワーシャワーを浴びた後、私と殿下を乗せた黄金の馬車は、披露宴の会場となる、王宮の大宴会場へと、ゆっくりと到着した。

楽団が、私たちの到着を告げる、高らかなファンファーレを奏でる。

そして、侍従の手によって、観音開きの大きな扉が開かれた瞬間。

『わあああああっ!』

という、万雷の拍手と、歓声が、私たち二人を包み込んだ。

「さあ、行こうか。俺の妃殿下」

殿下は、私の手を優しく取ると、その拍手の渦の中へと、私を導いてくれた。

目の前に広がるのは、息をのむほど、豪華絢爛な光景だった。

天井からは、数えきれないほどの宝石を散りばめた、巨大なシャンデリアが、眩いばかりの光を放っている。

壁には、この国の建国の歴史を描いた、壮麗なタペストリーが飾られ、円卓の上には、見たこともないような、山海の珍味が、芸術品のように、美しく並べられていた。

国内外から集まった、数百人もの招待客。そのすべてが、私たち二人のために、ここにいる。

私は、その、あまりの壮大さに、改めて、自分が王家に嫁いだのだという事実を、実感していた。

私たちは、会場の中央を通り、一段、高くなった場所に設けられた、主賓席へと案内される。

そこは、会場のすべてを見渡せる、私たち二人だけのための、特別な玉座だった。

席に着くと、まずは、国王陛下からの、祝辞が始まった。

国王陛下は、その威厳に満ちた声で、私たちの結婚を、高らかに祝福し、この国の新しい時代の幕開けを、力強く宣言された。

そして、途中からは、少しだけ、父親としての顔を覗かせる。

「それにしても、あの、女というものには、とんと興味を示さなかった我が息子が、ス・クリーム公爵家のご令嬢に、ここまで夢中になるとはな。最近など、公務を放り出して、彼女に会いに行こうとするものだから、周りの者は、止めるのに、一苦労だったそうだ」

その、ユーモアを交えた暴露に、会場中から、どっと、温かい笑いが起こる。

私も、思わず、くすりと笑ってしまう。隣に座る殿下は、「父上!」と、少しだけ、照れたように、顔を赤らめていた。

その後も、友好国の王族代表からの祝辞や、宰相閣下からの乾杯の音頭が続き、披露宴は、どこまでも、和やかで、祝福に満ちた雰囲気の中、進んでいった。

美味しい料理に舌鼓を打ち、友人たちと、言葉を交わす。

「アイ、本当に綺麗よ!」

カモミールは、涙ぐみながら、私の手を握ってくれた。

やがて、宴もたけなわとなった頃。

いよいよ、新郎である、レピオド殿下からの、謝辞スピーチの時間が、やってきた。

殿下は、席から立ち上がると、私の手を取り、共に立つように、優しく促す。

彼は、まず、会場の列席者たちに向かって、深く、頭を下げた。

「皆、本日は、私たちのために、こうして集まってくれて、心から、感謝する」

その、真摯な言葉に、会場は、静まり返る。

そして、殿下は、ゆっくりと、その体を、私のいる方へと、向けた。

彼の、情熱的な赤い瞳が、まっすぐに、私だけを、見つめている。

「だが、この場で、私が、本当に、心の底から、感謝の気持ちを伝えたい相手は、ここにいる、ただ一人だけだ」

彼は、私が、はっとする間もなく、握りしめた私の手を、ご自身の唇へと、優しく、持っていった。

そして、会場のすべての人間に聞こえるように、しかし、まるで、私一人にだけ、語りかけるかのように、その、愛の言葉を、紡ぎ始めた。

「私の、愛しい妻、アイ」

その呼びかけに、私の心臓が、きゅっと、甘く締め付けられる。

「君と出会う前の、私の世界は、モノクロームだった。王太子としての責務。果たすべき、数多の義務。それだけが、私の世界の、すべてだった」

「だが、君と出会い、君を知るうちに、私の無味乾燥だった世界は、驚くほど、鮮やかな色に、満ちていった」

「君の笑顔は、何よりも明るい、希望の太陽だ。君の涙は、乾いた大地を潤す、恵みの雨だ。そして、君の、その底抜けの優しさは、荒んだ人の心を癒す、穏やかで、清らかな泉だ」

彼の、あまりにも詩的で、ロマンチックな言葉に、会場中から、うっとりとした、ため息が漏れるのが聞こえる。

「君がいたから、私は、人を、心の底から愛するということを、知った。誰かと、共に生きるという、本当の喜びを、知った。君が、俺のすべてを、変えてくれたんだ」

「だから、ありがとう、アイ」

その声は、感謝の念で、少しだけ、震えていた。

「俺を選んでくれて、ありがとう。俺の妻になることを、決意してくれて、本当に、ありがとう」

そして、彼は、もう一度、私の手の甲に、深く、深く、口づけを落とす。

「ここにいる、すべての者たちの前で、そして、天にいる神の前で、改めて、誓おう」

彼は、顔を上げると、高らかに、宣言した。

「俺は、君を、世界で一番、幸せにすると!」

その、あまりにも情熱的で、まっすぐな、愛の告白。

そのスピーチが終わった瞬間。

会場は、一瞬の静寂の後、今日一番の、割れんばかりの、熱狂的な拍手に、包まれた。

私は、もう、だめだった。

こんなにも、たくさんの人々の前で、こんなにも、ストレートに、愛の言葉を伝えてくれる人。

この人の妻になれたことが、私の人生における、最高の、最大の奇跡なのだと、心の底から、思った。

頬を伝う、幸せの涙が、止まらない。

殿下は、そんな私を見て、「ほら、また泣いている」と、優しく笑いながら、その涙を、指で、拭ってくれた。

私たちは、鳴り止まない、嵐のような拍手の中で、ただ、見つめ合い、そして、世界で一番、幸せな笑顔を、交わし合ったのだった。
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