41 / 50
41
店のカウンターで、薬草を調合する。窓の外では、子供たちが元気に走り回り、村人たちが穏やかに挨拶を交わす。すっかり見慣れた、愛おしい日常の風景。
その穏やかな空気を切り裂くように、不釣り合いな音が村に響き渡った。馬蹄の音と、車輪のきしむ音。それも、一頭や二頭ではない。
村人たちが、何事かと家の外へ顔を出す。わたくしも、手を止めて、店の窓から通りの方を見た。
そして、目を疑った。
村の入り口に止まったのは、金色の鷲の紋章が輝く、壮麗な王家の馬車だった。護衛の近衛騎士たちも、見覚えのある者たちだ。
馬車から降りてきた人物を見て、わたくしは息をのんだ。
白髪の混じった髪をきっちりと撫でつけ、高価な礼服に身を包んだ、痩身の老人。この国の政治を、何十年にもわたって動かしてきた、宰相その人だった。
彼は、辺りの寂れた風景を見渡し、わずかに眉をひそめた後、わたくしの店を見つけると、まっすぐにこちらへ向かってきた。
村人たちが、緊張した面持ちで、遠巻きに道を開ける。
やがて、店の前で立ち止まった宰相は、信じられないものを見るかのように、わたくしをじっと見つめた。
「……ニーナ、様……。本当に、あなた様でございますか」
その声は、驚きと、安堵と、そしてわずかな憐憫で震えていた。
「このような、場所に……おいででしたか」
「ご無沙汰しております、宰相様」
わたくしは、静かに頭を下げた。エプロン姿のまま、落ち着き払っているわたくしの態度が、かえって彼を動揺させたようだった。
彼は、はっと我に返ると、威厳のある声で言った。
「お話がございます。さあ、ニーナ様、王都へお戻りください!エドワード殿下が、国が、あなた様を必要としております!」
その声は、村中に響き渡った。
村人たちの間に、動揺が走るのがわかった。王都へ?ニーナを?
辺りを、一瞬にして、張り詰めた空気が支配した。穏やかだった村の昼下がりは、この王都からの使者によって、終わりを告げたのだった。
その穏やかな空気を切り裂くように、不釣り合いな音が村に響き渡った。馬蹄の音と、車輪のきしむ音。それも、一頭や二頭ではない。
村人たちが、何事かと家の外へ顔を出す。わたくしも、手を止めて、店の窓から通りの方を見た。
そして、目を疑った。
村の入り口に止まったのは、金色の鷲の紋章が輝く、壮麗な王家の馬車だった。護衛の近衛騎士たちも、見覚えのある者たちだ。
馬車から降りてきた人物を見て、わたくしは息をのんだ。
白髪の混じった髪をきっちりと撫でつけ、高価な礼服に身を包んだ、痩身の老人。この国の政治を、何十年にもわたって動かしてきた、宰相その人だった。
彼は、辺りの寂れた風景を見渡し、わずかに眉をひそめた後、わたくしの店を見つけると、まっすぐにこちらへ向かってきた。
村人たちが、緊張した面持ちで、遠巻きに道を開ける。
やがて、店の前で立ち止まった宰相は、信じられないものを見るかのように、わたくしをじっと見つめた。
「……ニーナ、様……。本当に、あなた様でございますか」
その声は、驚きと、安堵と、そしてわずかな憐憫で震えていた。
「このような、場所に……おいででしたか」
「ご無沙汰しております、宰相様」
わたくしは、静かに頭を下げた。エプロン姿のまま、落ち着き払っているわたくしの態度が、かえって彼を動揺させたようだった。
彼は、はっと我に返ると、威厳のある声で言った。
「お話がございます。さあ、ニーナ様、王都へお戻りください!エドワード殿下が、国が、あなた様を必要としております!」
その声は、村中に響き渡った。
村人たちの間に、動揺が走るのがわかった。王都へ?ニーナを?
辺りを、一瞬にして、張り詰めた空気が支配した。穏やかだった村の昼下がりは、この王都からの使者によって、終わりを告げたのだった。
あなたにおすすめの小説
蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
公爵令嬢の辿る道
ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。
家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。
それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。
これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。
※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。
追記
六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。
願いの代償
らがまふぃん
恋愛
誰も彼もが軽視する。婚約者に家族までも。
公爵家に生まれ、王太子の婚約者となっても、誰からも認められることのないメルナーゼ・カーマイン。
唐突に思う。
どうして頑張っているのか。
どうして生きていたいのか。
もう、いいのではないだろうか。
メルナーゼが生を諦めたとき、世界の運命が決まった。
*ご都合主義です。わかりづらいなどありましたらすみません。笑って読んでくださいませ。本編15話で完結です。番外編を数話、気まぐれに投稿します。よろしくお願いいたします。
※ありがたいことにHOTランキング入りいたしました。たくさんの方の目に触れる機会に感謝です。本編は終了しましたが、番外編も投稿予定ですので、気長にお付き合いくださると嬉しいです。たくさんのお気に入り登録、しおり、エール、いいねをありがとうございます。R7.1/31
*らがまふぃん活動三周年周年記念として、R7.11/4に一話お届けいたします。楽しく活動させていただき、ありがとうございます。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
ソウシソウアイ?
野草こたつ/ロクヨミノ
恋愛
政略結婚をすることになったオデット。
その相手は初恋の人であり、同時にオデットの姉アンネリースに想いを寄せる騎士団の上司、ランヴァルド・アーノルト伯爵。
拒否に拒否を重ねたが強制的に結婚が決まり、
諦めにも似た気持ちで嫁いだオデットだが……。
旦那様には愛人がいますが気にしません。
りつ
恋愛
イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。