王太子妃の座を失った悪役令嬢は夜会を去った

きららののん

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わたくしのきっぱりとした拒絶に、宰相は言葉を失っていた。彼は、わたくしが喜んで王都へ戻るものと、信じて疑っていなかったのだろう。

「……アメリア嬢は、どうなされたのですか」

ふと、気になって尋ねた。彼女が、わたくしの後任として、エドワード様の隣にいるはずだった。

宰相は、苦虫を噛み潰したような顔で、吐き捨てるように言った。

「あのような娘、話にもなりませぬ!」

彼の口から語られたアメリア様の末路は、想像に難くないものだった。

「アメリア嬢は、もはや王宮にはおりませぬ。妃となるための、あまりの重圧に耐えきれず、心を病んでしまいましてな。今は、実家の男爵領で、静養しております」

「……そうですか」

わたくしの相槌には、何の感情もこもっていなかった。同情もなければ、溜飲が下がるような喜びもない。ただ、そうなるべくしてなった、という事実があるだけだ。

「あの娘は、あなたの足元にも及ばなかった!愛らしいだけで、中身は空っぽ。国母など、到底務まる器ではなかったのです!国に必要なのは、あなた様のその聡明さと、強い精神力なのです、ニーナ様!」

宰相は、必死にわたくしを持ち上げる。

「アメリア様は、ただ、ご自分の器に合わない場所で、苦しんでしまったのでしょう。大きすぎる冠を被ろうとすれば、誰だってそうなりますわ」

わたくしは、冷静に分析した。

「それは、彼女だけの責任ではありますまい。彼女をその立場に押し上げた、エドワード様にも、そして、それを止められなかった宰相様、あなた方にも、責任の一端はあるのではなくて?」

図星を突かれた宰相は、ぐっと言葉に詰まった。

わたくしは、もう、王都の政争の駒ではない。遠い辺境の地から、物事の本質を、静かに見つめることができるようになっていた。

過去にわたくしを陥れた令嬢の末路を聞いても、心は凪いだままだった。彼女は彼女の人生を。わたくしはわたくしの人生を。

もう、二人の道が交わることは、二度とないのだ。
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