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プロローグ
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「ーーー最後だけど君、この世界でなにを望むの?」
「・・・・・・天下に轟く最高の武を所望する」
その一言にどれだけの思いを込めたのか、獰猛な笑みを浮かべながら男はその場から消え去る。
「・・・・・・まあ、知ってたけどね。全属性魔法習得可能に魔法付与習得可能、限界突破可能。可能ってだけの下位スキルだけど、どうなることやら」
男と向かい合っていた者は嘆息しながら虚空に告げる。未だ見ぬ、転生させた男の将来を案じながら。
どうもわたくし、アランと申します。この世界で言うとドラム村のエリフォードの息子、アランと申します。三十歳に成りました。この世界ではそろそろ成人に向けて準備を始める年齢です。見てくれは日本人で言うところの十五歳位です。
「どうして説明文みたいな事言ってるの?後、丁寧口調キモイ」
そう言って木漏れ日の下で寝ころんでいる俺の顔を覗き込んでいるのは俺の許嫁のエリスフィー。渾名はエリーだ。あっちの世界の上さんだったのが先ほど知らされた。
と言うのも、先ほどあっちの世界の事を伝えてカミさんもこっちに来ていると神様に教えられたから嫁にしてやれないと告げたら自分がそうだと言うじゃないか。俺の記憶にある子供の数や二人で最後に暮らしてた住所、プロポーズの言葉や他言出来ないようなことまで俺の記憶通りの事が、彼女の口から淀みなく紡がれたときには仰天して仰向けに倒れてしまった程だ。
「おぉ、ジーザス」
「それ、良くない事が起こったときの言葉だよね?それってひどくない!?」
そう言ってぷくーっと頬を膨らませるエリー。これが可愛いからやってしまうとも言う。
「さて、懸案が無くなったのは良い事だがこれからどうするかが先行き不透明になったぞ」
「ん?どうして?」
「俺の予定じゃ旅の儀からカミさんを探しつつ武者修行をするって感じで進める予定だったの!そのために今まで料理の技能取ったり、狩りに必要な技能取ったりしてたのに・・・・・・」
「良いじゃん良いじゃん。必要なかったとしてもあれば便利よ?そう言う技能」
「む、むぅ・・・・・・そうか」
快活に笑うエリーを見て、まぁいいかと思ってしまうのはどうしようもないのかもしれない。
次の日。朝の日課を終えた後、昼頃になってエリーを連れていつも訓練に使っている広場に来た。ここでエリーの使えるものの確認と、俺が使えるものの確認をする事にしたのだ。これは相手がなにが使えるかで動き方がまるっきり変わるのと、これからどのように高めていけば良いかをエリーにも考えて欲しいからだ。
「まずは生活魔法から。『火よ』」
「『火よ』」
俺のかけ声に続いてエリーも着火の魔法を無言詠唱で発動させる。詠唱はこの世界では自転車の補助輪の様な扱いで、威力の増大などはない。まぁ、ファイヤ程度の魔法は『彼の物に火を灯せ』とだけ詠唱すればいいから有っても無くてもと感じる。
「次、『水よ』」
「『水よ』」
飲み水用の魔法だがこれも難なく発動させるエリー。これの詠唱は『我が手に生きる滴を』。滴をと言っているのに小鍋に並々と水が注がれるのは何故かと神様に問い詰めたくなるのは魔法を使った事のある者が必ず通る疑問なんだとか。
「次、『風よ』」
「『風よ』」
次は暑いときや洗濯物を乾かすときなどに使うそよ風魔法。エリーも難なく発動させる。詠唱は『我が意に応えて舞え』。指先から発動させると指した方へ風が飛び、全身から発動させると追い風か向かい風か選択できる面白い魔法。
「最後、『地よ』」
「『地よ』」
最後は農民くらいしか使い道のなさそうな地面を耕してふかふかにする魔法。地面の堅さや面積で魔力消費が増える。詠唱は『我が意に応えて蠢動せよ』。エリーもしっかり発動出来ている。
「まぁ、心配はしてなかったがここまでは大丈夫そうだ。後はなにが出来る?」
結果を見て満足したからそう言うと、エリーは嬉しそうに微笑んだ後、
「魔法は応急処置レベルの治癒魔法と自分向けの強化魔法、それから自分以外への強化魔法かな?まだ習得して日が浅いからそんなに上乗せできないけど」
と言いつつ軽々と俺の背丈を超える程に跳躍して見せる。無言詠唱の上の無詠唱とはやりおる。
「俺も大体同じだな。まだ無詠唱は出来ないが。それから、初歩レベルの付与魔法。『火炎・付与』」
無言詠唱で持って来ていた木の棒に火属性を付与して一振り。棒の軌跡に従って陽炎が立ち上った。
「後は清浄化魔法と空調魔法、範囲は狭いが結界魔法」
言いつつ次々と俺が魔法を発動させるが、エリーも付与魔法以外を発動させる。さらに俺の覚えていない洗浄魔法まで発動させて俺を丸洗いして来た。ゾワゾワするが気持ちいいのが悔しい。
粗方使える魔法を使った後はその他に使える技能の確認だ。料理技能は昼は俺、夜はエリーと毎日確認し合っているから良いとして、ここからは自己申告。
「私は料理繋がりで調薬技能と製菓技能、花嫁修業で裁縫技能と皮革加工技能かな?後、使えそうだから道具整備技能。先天技能で拳法家、槍術士、剣闘士も持ってるよ。どれも初期レベルだけどね」
「ずいぶん取ったんだな。俺は医療技能、薬草鑑定技能、鉱物鑑定技能、索敵技能、罠【設置・解除】技能、解錠技能。先天的に剣闘士、槍術士、拳法家、弓術士を持ってる。先天技能は前世でやってた武道がそのまま反映されたんだろうな」
「武道馬鹿だったもんねぇ」
俺の言に、遠い目をしながらエリーがしみじみと呟く。・・・・・・何も言い返せない。
「どうせ、この世界で武の頂点に立つとか思ってるんでしょ?」
「・・・・・・・・・・・・」
何も言い返せん・・・・・・。
「・・・・・・天下に轟く最高の武を所望する」
その一言にどれだけの思いを込めたのか、獰猛な笑みを浮かべながら男はその場から消え去る。
「・・・・・・まあ、知ってたけどね。全属性魔法習得可能に魔法付与習得可能、限界突破可能。可能ってだけの下位スキルだけど、どうなることやら」
男と向かい合っていた者は嘆息しながら虚空に告げる。未だ見ぬ、転生させた男の将来を案じながら。
どうもわたくし、アランと申します。この世界で言うとドラム村のエリフォードの息子、アランと申します。三十歳に成りました。この世界ではそろそろ成人に向けて準備を始める年齢です。見てくれは日本人で言うところの十五歳位です。
「どうして説明文みたいな事言ってるの?後、丁寧口調キモイ」
そう言って木漏れ日の下で寝ころんでいる俺の顔を覗き込んでいるのは俺の許嫁のエリスフィー。渾名はエリーだ。あっちの世界の上さんだったのが先ほど知らされた。
と言うのも、先ほどあっちの世界の事を伝えてカミさんもこっちに来ていると神様に教えられたから嫁にしてやれないと告げたら自分がそうだと言うじゃないか。俺の記憶にある子供の数や二人で最後に暮らしてた住所、プロポーズの言葉や他言出来ないようなことまで俺の記憶通りの事が、彼女の口から淀みなく紡がれたときには仰天して仰向けに倒れてしまった程だ。
「おぉ、ジーザス」
「それ、良くない事が起こったときの言葉だよね?それってひどくない!?」
そう言ってぷくーっと頬を膨らませるエリー。これが可愛いからやってしまうとも言う。
「さて、懸案が無くなったのは良い事だがこれからどうするかが先行き不透明になったぞ」
「ん?どうして?」
「俺の予定じゃ旅の儀からカミさんを探しつつ武者修行をするって感じで進める予定だったの!そのために今まで料理の技能取ったり、狩りに必要な技能取ったりしてたのに・・・・・・」
「良いじゃん良いじゃん。必要なかったとしてもあれば便利よ?そう言う技能」
「む、むぅ・・・・・・そうか」
快活に笑うエリーを見て、まぁいいかと思ってしまうのはどうしようもないのかもしれない。
次の日。朝の日課を終えた後、昼頃になってエリーを連れていつも訓練に使っている広場に来た。ここでエリーの使えるものの確認と、俺が使えるものの確認をする事にしたのだ。これは相手がなにが使えるかで動き方がまるっきり変わるのと、これからどのように高めていけば良いかをエリーにも考えて欲しいからだ。
「まずは生活魔法から。『火よ』」
「『火よ』」
俺のかけ声に続いてエリーも着火の魔法を無言詠唱で発動させる。詠唱はこの世界では自転車の補助輪の様な扱いで、威力の増大などはない。まぁ、ファイヤ程度の魔法は『彼の物に火を灯せ』とだけ詠唱すればいいから有っても無くてもと感じる。
「次、『水よ』」
「『水よ』」
飲み水用の魔法だがこれも難なく発動させるエリー。これの詠唱は『我が手に生きる滴を』。滴をと言っているのに小鍋に並々と水が注がれるのは何故かと神様に問い詰めたくなるのは魔法を使った事のある者が必ず通る疑問なんだとか。
「次、『風よ』」
「『風よ』」
次は暑いときや洗濯物を乾かすときなどに使うそよ風魔法。エリーも難なく発動させる。詠唱は『我が意に応えて舞え』。指先から発動させると指した方へ風が飛び、全身から発動させると追い風か向かい風か選択できる面白い魔法。
「最後、『地よ』」
「『地よ』」
最後は農民くらいしか使い道のなさそうな地面を耕してふかふかにする魔法。地面の堅さや面積で魔力消費が増える。詠唱は『我が意に応えて蠢動せよ』。エリーもしっかり発動出来ている。
「まぁ、心配はしてなかったがここまでは大丈夫そうだ。後はなにが出来る?」
結果を見て満足したからそう言うと、エリーは嬉しそうに微笑んだ後、
「魔法は応急処置レベルの治癒魔法と自分向けの強化魔法、それから自分以外への強化魔法かな?まだ習得して日が浅いからそんなに上乗せできないけど」
と言いつつ軽々と俺の背丈を超える程に跳躍して見せる。無言詠唱の上の無詠唱とはやりおる。
「俺も大体同じだな。まだ無詠唱は出来ないが。それから、初歩レベルの付与魔法。『火炎・付与』」
無言詠唱で持って来ていた木の棒に火属性を付与して一振り。棒の軌跡に従って陽炎が立ち上った。
「後は清浄化魔法と空調魔法、範囲は狭いが結界魔法」
言いつつ次々と俺が魔法を発動させるが、エリーも付与魔法以外を発動させる。さらに俺の覚えていない洗浄魔法まで発動させて俺を丸洗いして来た。ゾワゾワするが気持ちいいのが悔しい。
粗方使える魔法を使った後はその他に使える技能の確認だ。料理技能は昼は俺、夜はエリーと毎日確認し合っているから良いとして、ここからは自己申告。
「私は料理繋がりで調薬技能と製菓技能、花嫁修業で裁縫技能と皮革加工技能かな?後、使えそうだから道具整備技能。先天技能で拳法家、槍術士、剣闘士も持ってるよ。どれも初期レベルだけどね」
「ずいぶん取ったんだな。俺は医療技能、薬草鑑定技能、鉱物鑑定技能、索敵技能、罠【設置・解除】技能、解錠技能。先天的に剣闘士、槍術士、拳法家、弓術士を持ってる。先天技能は前世でやってた武道がそのまま反映されたんだろうな」
「武道馬鹿だったもんねぇ」
俺の言に、遠い目をしながらエリーがしみじみと呟く。・・・・・・何も言い返せない。
「どうせ、この世界で武の頂点に立つとか思ってるんでしょ?」
「・・・・・・・・・・・・」
何も言い返せん・・・・・・。
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