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第三章
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教会へ赴いてシミュリストルへ隣町に着いたことを報告し、ついでなんでこの街の現状をガンジュールさんに伝えてもらうようお願いしておく。
ここまでやるのに昼から夕方までかかったので宿に戻る。すると、この宿の女将さんである恰幅のいい壮年の女性、ユーリさんが食料を分けて欲しいと訪ねてきた。
「持っているものなら構いませんよ」
そう言いながらリュックサックから出すふりをしながらファルムットで買っておいた食材を一つずつ出していくと、それを見たユーリさんは飛び上がるように驚いていた。何でもこの鮮度の食材はここら辺では久しく見ていなかったらしい。・・・・・・領地経営が杜撰すぎじゃないか。
「半年前ぐらいに代行官様が替わったからこの街も救われると思ったんだけどねぇ、替わったぐらいから冒険者も居なくなるし、商いギルドと商工会の取り立てで家計は火の車・・・・・・って、あなた達に愚痴っても仕方ないわね。ごめんなさい?」
「いえ、お気遣いなく。俺達も商いギルドに所属してるんで他人事じゃないですよ」
「あら?あなた達、商いギルドにも所属しているの?・・・・・・あらやだごめんなさい?私ってば商品をタダで貰おうとしてただなんて。今お金持ってくるわね」
「今渡した分のお代は要らないですよ。おいしい料理をお願いします」
「でもーー」
「どうしてもと言うなら今渡した食料の倍を提供します。それで鋼貨二枚。後、鋼貨一枚で自分等が持っているレシピの使用権と制作権一組を差し上げましょう」
「あら?あなた達、そんなに若いのに権利売人(ライセンサー)だったのね?しかも料理の。ちょっと待ってて。お金と旦那を連れてくるわ」
そう言ってユーリさんは早足で部屋を出ていった。
いい情報を得られたと思いながら食材と料理のレシピを準備しているとユーリさんとその旦那さん、アスタロスさんが顔を出した。
アスタロスさんはガタイはいいが背が低く、お饅頭のような鼻を持ち、ユーリさんとは正反対に目が大きく鋭い眼光の持ち主だ。立派な口髭も蓄えている。
最初にユーリさんが鋼貨を二枚渡してきたので食材を渡すとすぐに出て行った。
「さて、料理のレシピを売ってくれるとユーリに言ったようだが、どんな物がある?」
「今あるのはこれだけですね」
30組以上ある紙束を見せるとアスタロスさんはポカンと口を開けて固まった。
「使用権の内訳を見てみると、一番利用されているのは”揚げる”という熱した油で茹でる料理法方。こちらは薄くスライスしたじゃがいもを揚げたポテトチップのレシピと一緒に販売しましょう」
「・・・・・・は?」
目が点になっている。
「次点で使用されてるのは調味料のマヨネーズとケチャップーー」
「待て待て待て!そのレシピはファルムットの神の子のレシピじゃねぇか!」
アスタロスさんが叫ぶように言い募ってきた。
「神の子?その呼び名は知りませんがこのレシピは確かに俺と、こっちの美咲が登録した物ですよ?商いギルドで聞きましたが本人と共同開発者、それから商いギルド以外はレシピの使用権と制作権の売却は出来ないらしいじゃないですか」
「ぐぬぬ・・・・・・」
ぐぬぬ、じゃないが。
「信じないのなら証明してあげましょう。誰か気付くと思って申請しなかったレシピ、二つお教えします。厨房を借りても?」
「・・・・・・いいだろう」
厨房を借りてインベントリからじゃがいもを取り出し、ついでに鍋に油を注いで熱しておく。油が温まるまでに取り出したじゃがいもを見慣れた形に切りそろえる。
終わったら油がしっかり温まるまで待ってからじゃがいもを投入。木串で芯が無くなったのを確認してから蔓で編んだ編み目の粗い籠(レシピ登録済み)に上げ、熱い内に塩をふる。そう、フライドポテト(皮付き)だ。
それだけだとすぐ飽きるのでケチャップとマヨネーズをそれぞれのお皿に出し、もう一枚に一対一の割合でケチャップとマヨネーズを合わせ、良く混ぜる。オーロラソースだ。
「フライドポテトとこれがオーロラソースです」
出回っていないレシピ二つをアスタロスさんに説明し、八人でつつく。・・・・・・うん、いつもの味だ。
難しい顔でフライドポテトを摘まんだアスタロスさんは、一口口へ入れた途端にカッと目を見開いた。
「これは・・・・・・っ!!」
「どうでしょう?」
「君達を信用しよう。ポテトチップのレシピと揚げるレシピ、ケチャップとマヨネーズ、登録したらぜひフライドポテトとオーロラソースのレシピも買いたい」
「わかりました。揚げるレシピは先程言ったとおりポテトチップと一緒に売りましょう。鋼貨五枚になります」
「それは助かる。・・・・・・鋼貨五枚だ。受け取ってくれ」
「・・・・・・確かに。こちらがレシピです」
「ありがとう」
ここまでやるのに昼から夕方までかかったので宿に戻る。すると、この宿の女将さんである恰幅のいい壮年の女性、ユーリさんが食料を分けて欲しいと訪ねてきた。
「持っているものなら構いませんよ」
そう言いながらリュックサックから出すふりをしながらファルムットで買っておいた食材を一つずつ出していくと、それを見たユーリさんは飛び上がるように驚いていた。何でもこの鮮度の食材はここら辺では久しく見ていなかったらしい。・・・・・・領地経営が杜撰すぎじゃないか。
「半年前ぐらいに代行官様が替わったからこの街も救われると思ったんだけどねぇ、替わったぐらいから冒険者も居なくなるし、商いギルドと商工会の取り立てで家計は火の車・・・・・・って、あなた達に愚痴っても仕方ないわね。ごめんなさい?」
「いえ、お気遣いなく。俺達も商いギルドに所属してるんで他人事じゃないですよ」
「あら?あなた達、商いギルドにも所属しているの?・・・・・・あらやだごめんなさい?私ってば商品をタダで貰おうとしてただなんて。今お金持ってくるわね」
「今渡した分のお代は要らないですよ。おいしい料理をお願いします」
「でもーー」
「どうしてもと言うなら今渡した食料の倍を提供します。それで鋼貨二枚。後、鋼貨一枚で自分等が持っているレシピの使用権と制作権一組を差し上げましょう」
「あら?あなた達、そんなに若いのに権利売人(ライセンサー)だったのね?しかも料理の。ちょっと待ってて。お金と旦那を連れてくるわ」
そう言ってユーリさんは早足で部屋を出ていった。
いい情報を得られたと思いながら食材と料理のレシピを準備しているとユーリさんとその旦那さん、アスタロスさんが顔を出した。
アスタロスさんはガタイはいいが背が低く、お饅頭のような鼻を持ち、ユーリさんとは正反対に目が大きく鋭い眼光の持ち主だ。立派な口髭も蓄えている。
最初にユーリさんが鋼貨を二枚渡してきたので食材を渡すとすぐに出て行った。
「さて、料理のレシピを売ってくれるとユーリに言ったようだが、どんな物がある?」
「今あるのはこれだけですね」
30組以上ある紙束を見せるとアスタロスさんはポカンと口を開けて固まった。
「使用権の内訳を見てみると、一番利用されているのは”揚げる”という熱した油で茹でる料理法方。こちらは薄くスライスしたじゃがいもを揚げたポテトチップのレシピと一緒に販売しましょう」
「・・・・・・は?」
目が点になっている。
「次点で使用されてるのは調味料のマヨネーズとケチャップーー」
「待て待て待て!そのレシピはファルムットの神の子のレシピじゃねぇか!」
アスタロスさんが叫ぶように言い募ってきた。
「神の子?その呼び名は知りませんがこのレシピは確かに俺と、こっちの美咲が登録した物ですよ?商いギルドで聞きましたが本人と共同開発者、それから商いギルド以外はレシピの使用権と制作権の売却は出来ないらしいじゃないですか」
「ぐぬぬ・・・・・・」
ぐぬぬ、じゃないが。
「信じないのなら証明してあげましょう。誰か気付くと思って申請しなかったレシピ、二つお教えします。厨房を借りても?」
「・・・・・・いいだろう」
厨房を借りてインベントリからじゃがいもを取り出し、ついでに鍋に油を注いで熱しておく。油が温まるまでに取り出したじゃがいもを見慣れた形に切りそろえる。
終わったら油がしっかり温まるまで待ってからじゃがいもを投入。木串で芯が無くなったのを確認してから蔓で編んだ編み目の粗い籠(レシピ登録済み)に上げ、熱い内に塩をふる。そう、フライドポテト(皮付き)だ。
それだけだとすぐ飽きるのでケチャップとマヨネーズをそれぞれのお皿に出し、もう一枚に一対一の割合でケチャップとマヨネーズを合わせ、良く混ぜる。オーロラソースだ。
「フライドポテトとこれがオーロラソースです」
出回っていないレシピ二つをアスタロスさんに説明し、八人でつつく。・・・・・・うん、いつもの味だ。
難しい顔でフライドポテトを摘まんだアスタロスさんは、一口口へ入れた途端にカッと目を見開いた。
「これは・・・・・・っ!!」
「どうでしょう?」
「君達を信用しよう。ポテトチップのレシピと揚げるレシピ、ケチャップとマヨネーズ、登録したらぜひフライドポテトとオーロラソースのレシピも買いたい」
「わかりました。揚げるレシピは先程言ったとおりポテトチップと一緒に売りましょう。鋼貨五枚になります」
「それは助かる。・・・・・・鋼貨五枚だ。受け取ってくれ」
「・・・・・・確かに。こちらがレシピです」
「ありがとう」
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