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第三章
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次の日。
昨晩のメニューは香草を擦り込んだ鶏肉を多めの油で焼いた物だった。アスタロスさんは揚げてみたかったそうだが、最後に尻込みして中途半端な油の量になったらしい。・・・・・・それはそれで旨かったが。
その時に聞いたのだが、この世界では何かのレシピを使ったレシピは権利者かレシピ使用と制作の権利を購入した者が基本的に作るらしい。実験中にかかる使用料と制作料が馬鹿にならないからだとか。・・・・・・なるほど、なるほど。
さて、話を戻すと朝からアスタロスさんは揚げパンを開発し、美咲から砂糖を要求され、砂糖がないと分かると美咲は持参したメイプルシロップをかけていた。
そんなこんなで賑やかにも穏やかに過ぎていた朝食の時間だったが、邪魔をしてきた一団が一つ。
「警備隊だ。ここにコガラシ ハジメと名乗る者とそれが連れる者達が泊まっている筈だ。引き渡してもらおう!」
その言葉を聞いた瞬間、アスタロスさんは飛び上がるように驚きオロオロと右往左往し始めた。
それを見て俺は食べかけの揚げパンと手の付いていない物を二、三個皿に取り分けて席を立った。
アスタロスさんに落ち着くよう促してから警備隊の前に赴く。
「出てきたか。いい心がけだ」
「・・・・・・・・・・・・」
下卑た笑みを浮かべる兵士たちを尻目に、俺は宿の出入り口の前にドカッと腰を下ろした。
「おい、他の者達はどうした?」
「・・・・・・・・・・・・」
兵士たちの問いかけを無視して俺は食べかけの揚げパンを咀嚼し始める。周りには遠巻きではあるが住人たちが集まってきている。
「答えろ!」
「俺達はこの街で犯罪を犯した積もりはないし、騒ぎを起こしてもいない。俺達を連れて行くならば任意同行の筈だ。しかも、今は朝食時だ。これは横暴ではないのか?」
それなりに人が集まっていたので俺は周りの人々に聞かせるように自分の主張をする。
「ふん、そんな事はやってみなければ分からないだろう?こちらは警備隊だ。犯罪の一つや二つ、でっち上げれば良いことだ。それよりも他の者達はどうした?代行官様がお待ちである。早々に呼んでこい」
「あ、言っちゃった」
「ん?これぐらいは当たり前だ。我らはこの街の治安を守る者。これぐらいの権力はーー」
『犯罪の一つや二つ、でっち上げれば良いことだ』
俺は懐に仕舞っていた小石に魔法を付与した魔道具を起動し、必要な部分を再生させる。所謂音声記録再生装置だ。この魔道具はギルドに登録済みだが内容は非公開な上に制作者および使用者に改造、若しくはそれに類する行為を行った場合に文字通り天罰が下り、行った者の死亡、更には改造を施した物の徹底的な破壊が約束された代物だ。
レシピはこの国の国王にいたく気に入られ、その場でこの魔道具の改良版である映像音声記録再生装置と共に裁判における重要な証拠物として証拠隠滅を意図に破壊した者には重罰が課されることとなった。
ただの手見上げに持って行っただけにそうなるとは夢にも思っていなかった俺達は、登録してなかったこれらを天罰ありの非公開レシピ・・・・・・それはもうとんでもない程の特殊レシピとして登録することになった。
しかし、使うのはやはり人の子。国王が一番始めに被写体として捉えたのは王妃との仲むつまじいお茶会だったとか。・・・・・・まぁ、そう言う利用方法を考えていただけに最初の利用方法を聞いたときにはホッとしたな。
さて、そんな代物だと知ってか知らずか、声を上げていた兵士は怯んだように一瞬だけ身を竦ませるが、何を思い直したのか口元に酷薄の笑みを貼り付けると抜剣し、斬りかかって来た。
突然だがここで俺の成長をお見せしよう。魔力を操ると自分という領域を広げることができるのを発見した。これは武器に魔力を通すのと原理は大体同じだ。ただ、武器に通す以上に魔力が霧散し易いために魔力を留めておくのがとてもとても難しい。
この中で行うのは遠隔による付与魔法。兵士の武器に魔力を侵入させ、念じる。硬く、鋭く。
そう。これが成長した証だ。遠隔付与魔法に二重付与。今までできなかったが最近できるようになった。・・・・・・美咲にやり方を教えたら一日かそこらでできてしまったもんだからちょっと凹んだ。美咲が開発した過剰付与を一日でマスターして見返してやったが。
音もなく音声記録再生装置が両断される。その前に手を引っ込めた俺は無傷だ。
「あー、壊しちゃった」
「壊したんじゃない。処分したんだ。何の悪戯か知らないがやって良いことと悪い事がある。それを身を持って解らせてやろう!」
ニヤリと笑みを深めた兵士はそんな事を言い、それに応じるように周りの兵士たちが抜剣する。その光景に静観していた住民たちが悲鳴を上げた。
「あんたらさ、王国法273条知ってる?『騎士及び兵士は抵抗する意志のない国民及び冒険者に対し無闇に武力をちらつかせてはならない』って言うの」
「その法は知っている。そして、その法には但し書きがあり犯罪者は含まないのだ!」
「犯罪なんて犯してないんだけどなぁ」
最後の揚げパンを口に放り込んでから立ち上がる。
相手が先に抜剣したため、兵士を叩きのめしても正当防衛が成り立ち俺の罪は問われないことになる。目撃者は沢山。ついでに懐に隠している映像音声記録再生装置にもバッチリ今までのやりとりが記録されているので証拠も十分だ。
昨晩のメニューは香草を擦り込んだ鶏肉を多めの油で焼いた物だった。アスタロスさんは揚げてみたかったそうだが、最後に尻込みして中途半端な油の量になったらしい。・・・・・・それはそれで旨かったが。
その時に聞いたのだが、この世界では何かのレシピを使ったレシピは権利者かレシピ使用と制作の権利を購入した者が基本的に作るらしい。実験中にかかる使用料と制作料が馬鹿にならないからだとか。・・・・・・なるほど、なるほど。
さて、話を戻すと朝からアスタロスさんは揚げパンを開発し、美咲から砂糖を要求され、砂糖がないと分かると美咲は持参したメイプルシロップをかけていた。
そんなこんなで賑やかにも穏やかに過ぎていた朝食の時間だったが、邪魔をしてきた一団が一つ。
「警備隊だ。ここにコガラシ ハジメと名乗る者とそれが連れる者達が泊まっている筈だ。引き渡してもらおう!」
その言葉を聞いた瞬間、アスタロスさんは飛び上がるように驚きオロオロと右往左往し始めた。
それを見て俺は食べかけの揚げパンと手の付いていない物を二、三個皿に取り分けて席を立った。
アスタロスさんに落ち着くよう促してから警備隊の前に赴く。
「出てきたか。いい心がけだ」
「・・・・・・・・・・・・」
下卑た笑みを浮かべる兵士たちを尻目に、俺は宿の出入り口の前にドカッと腰を下ろした。
「おい、他の者達はどうした?」
「・・・・・・・・・・・・」
兵士たちの問いかけを無視して俺は食べかけの揚げパンを咀嚼し始める。周りには遠巻きではあるが住人たちが集まってきている。
「答えろ!」
「俺達はこの街で犯罪を犯した積もりはないし、騒ぎを起こしてもいない。俺達を連れて行くならば任意同行の筈だ。しかも、今は朝食時だ。これは横暴ではないのか?」
それなりに人が集まっていたので俺は周りの人々に聞かせるように自分の主張をする。
「ふん、そんな事はやってみなければ分からないだろう?こちらは警備隊だ。犯罪の一つや二つ、でっち上げれば良いことだ。それよりも他の者達はどうした?代行官様がお待ちである。早々に呼んでこい」
「あ、言っちゃった」
「ん?これぐらいは当たり前だ。我らはこの街の治安を守る者。これぐらいの権力はーー」
『犯罪の一つや二つ、でっち上げれば良いことだ』
俺は懐に仕舞っていた小石に魔法を付与した魔道具を起動し、必要な部分を再生させる。所謂音声記録再生装置だ。この魔道具はギルドに登録済みだが内容は非公開な上に制作者および使用者に改造、若しくはそれに類する行為を行った場合に文字通り天罰が下り、行った者の死亡、更には改造を施した物の徹底的な破壊が約束された代物だ。
レシピはこの国の国王にいたく気に入られ、その場でこの魔道具の改良版である映像音声記録再生装置と共に裁判における重要な証拠物として証拠隠滅を意図に破壊した者には重罰が課されることとなった。
ただの手見上げに持って行っただけにそうなるとは夢にも思っていなかった俺達は、登録してなかったこれらを天罰ありの非公開レシピ・・・・・・それはもうとんでもない程の特殊レシピとして登録することになった。
しかし、使うのはやはり人の子。国王が一番始めに被写体として捉えたのは王妃との仲むつまじいお茶会だったとか。・・・・・・まぁ、そう言う利用方法を考えていただけに最初の利用方法を聞いたときにはホッとしたな。
さて、そんな代物だと知ってか知らずか、声を上げていた兵士は怯んだように一瞬だけ身を竦ませるが、何を思い直したのか口元に酷薄の笑みを貼り付けると抜剣し、斬りかかって来た。
突然だがここで俺の成長をお見せしよう。魔力を操ると自分という領域を広げることができるのを発見した。これは武器に魔力を通すのと原理は大体同じだ。ただ、武器に通す以上に魔力が霧散し易いために魔力を留めておくのがとてもとても難しい。
この中で行うのは遠隔による付与魔法。兵士の武器に魔力を侵入させ、念じる。硬く、鋭く。
そう。これが成長した証だ。遠隔付与魔法に二重付与。今までできなかったが最近できるようになった。・・・・・・美咲にやり方を教えたら一日かそこらでできてしまったもんだからちょっと凹んだ。美咲が開発した過剰付与を一日でマスターして見返してやったが。
音もなく音声記録再生装置が両断される。その前に手を引っ込めた俺は無傷だ。
「あー、壊しちゃった」
「壊したんじゃない。処分したんだ。何の悪戯か知らないがやって良いことと悪い事がある。それを身を持って解らせてやろう!」
ニヤリと笑みを深めた兵士はそんな事を言い、それに応じるように周りの兵士たちが抜剣する。その光景に静観していた住民たちが悲鳴を上げた。
「あんたらさ、王国法273条知ってる?『騎士及び兵士は抵抗する意志のない国民及び冒険者に対し無闇に武力をちらつかせてはならない』って言うの」
「その法は知っている。そして、その法には但し書きがあり犯罪者は含まないのだ!」
「犯罪なんて犯してないんだけどなぁ」
最後の揚げパンを口に放り込んでから立ち上がる。
相手が先に抜剣したため、兵士を叩きのめしても正当防衛が成り立ち俺の罪は問われないことになる。目撃者は沢山。ついでに懐に隠している映像音声記録再生装置にもバッチリ今までのやりとりが記録されているので証拠も十分だ。
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